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外来語の「カタカナ」表示について

2007.2.18

数年前、米国でロジスティックス・サポート・システムに関するセミナーに参加した。約30-40名の受講生は、約3分の1が米軍やNASAのロジ・システム担当者、3分の1が米国以外の主にヨーロッパ諸国軍のロジ担当者、のこりは欧米企業のシステム担当者達であった。日本からは私一人であった。主催者の話では、日本にも呼びかけているが、誰も参加したことがないとのことであった。主題は当時ポピュラーであったロジスティックス支援ツールについてであった。

この時は、4日間にわたる「効果的な航空機用装置や部品の配備計画」の基礎理論であったが、私が興味を持ったのは、当時米国でさえも航空機等装置や部品の「最適」補充・配備計画は、従来からの
慣習や感覚に頼ったものであったが、当時CALSやLCC(ライフサイクル・コスト)理論が脚光を浴び始めてきていただけに注目したわけである。
ところで、このような新しい考え方や理論を日本で普及させるためには、まず「日本語化をする」問題がつきまとうことを講師たちと話し合ったことがある。結局はお互いの共通理念は「英語は英語による理解」でしかないということになったが、ドイツやスウェーデン、カナダといった国々から来ていた参加者は、英語を受容れる素養や風土があるので「意識の上での順応性」があると言っていたのが印象的であった。
日本では古くから、あらゆるものを海外から引き入れる際に「日本に順応させるために苦労して「和訳化」することが伝統であった。だから今思えば、同じ言葉でも目的が違うと違った言葉として土着してしまい、機械はマシンと言うくせに、特定な機械をミシンと今でも使っており、笑ってしまうような外来語も珍しくない。しかし明治以降アメリカを中心に諸外国から大量の言葉が入りこむことで、このような和訳化の伝統は原語のカタカナ表示に切り替わっていったと思われる。
そこで私は、ひそかに日本人の順応性は「カタカナ表示」ではなかったかと思うわけであるが、これは「暫定的な外来語の処置」としては大変素晴らしい方法である。しかし、原語に対する共通理念無くしてカタカナ表示をすることは、大きな危険性がある。ちなみにLOGISTICSという単語は、日本では某外資系のコンサルティング会社の戦略に乗った運輸業界が「ロジスティックス」とカタカナ表現を使ってしまった。(もともとLOGISTICSは物流とも訳されている。)
一方MILスペックはこのLOGISTICSとは密接な関係にあるが、残念ながら日本では「後方支援」や「後たん」などと言って、意味がスッキリしていない。多くの外来語がそうであるように、この言葉の意味を理解した上でカタカナ語で表現すべきではないかとおもう。いずれにせよ、こういった言葉は「暫定使用」として「カタカナ語」表示されることは、良いことであるがその定義付けをして意味の統一性を図ることが大切なことではないかと思う。MILスペックにまつわる多くの言葉を今後どのように仕分けていくかが問われることになろう。
ところでMILスペックという米国の標準化文書には統一された形式や表現が使用されていて、ある意味では「自動翻訳化」には向いている土壌であると思われる。そういった形式や表現のルールといったものをプログラムに読み込ませて、一語一句を決められた単語やフレーズに置き換えることで、経験を積ませていけば必ず翻訳版として使い物になるはずだと思われる。翻訳版はあくまでも翻訳版で、契約上原文に取って代わることはできないが、理解スピードを速めるツールとしては大変有効で、弊社では引き続き研究を続けている。