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MIL-A-7021(アスベスト)が廃止されない理由

2007.6.15

MIL-A-7021はアスベストに関するMILスペックである。1996年10月10日付けでInactive(無効)になったが廃止(Cnacel)にはなっていない。そこで日本では全面製造禁止となったが、MIL-A-7021が廃止されない理由をDODに調査した。

DODからの回答
MIL-A-7021が廃止されない理由は新規設計用としては無効(INACTIVEFOR NEW DESIGN)であるが代替スペックが存在しないために調達用スペックとして現在でも必要とされているからである。MIL-A-7021の代替スペックを決定する場合はアスベストが使われるシステムの各種パラメータ(温度や流体など)を分析する必要がある。ある代替材は275°Fのエンジン潤滑システムでは十分可能であるが、700°Fのエンジン排気システムでは十分とはいえない。なお代替スペックとしてMIL-A-7021のClass1用としてSAE-AMS-3275を、またClass 2 用として MIL-G-24696(SH)があるが、用いるシステムに適切であるかはケースバイケースで検証する必要がある。
背景と解説
MIL-A-7021Cは1974年12月16日にASBESTOS SHEET, COMPRESSED, FOR FUEL, LUBRICANT, COOLANT, WATER AND HIGH TEMPERATURE RESISTANT GASKETSというタイトルで発行されたアスベストに関するMILスペックである。その後MIL-A-7021Cは1996年10月10日付けでInactive Notice (無効通知)が発行され現在代替スペックは紹介されていない。
日本においてアスベストは石綿と呼ばれ、防音材、断熱材、耐熱材、絶縁材など安価な上に特性が優れているために奇跡の鉱物と呼ばれて、建設資材、電気製品、自動車、家庭用品等に広く使用されてきたが、空中に飛散した石綿繊維を肺に吸入すると約20年から40年の潜伏期間を経た後に肺がんや中皮腫の病気を引き起こす確率が高いため「静かな時限爆弾」などと世間からおそれられている。2006年9月の労働安全衛生法の改正により全面製造禁止となったが、代替品が確立していない特定分野の部材については政令により代替技術が確立されるまで製造の禁止が猶予されている。
米国ではアスベストは1989年環境保護庁(EPA)がアスベスト法案(Asbestos Ban)を成立させその製造を段階的に禁止してきた。日本においても代替品が確立していない特定分野の部材については政令により代替技術が確立されるまで製造の禁止が猶予されている。猶予されている製品はポジティブリストとして厚生労働省の政令で一覧表となっている。
1.ジョイントシートガスケット
2.うず巻き形ガスケット
3.メタルジャケット形ガスケット
4.グランドパッキン
5.断熱材(ただし国産ミサイルに使用されるもののみ)
6.これらの原材料
以上については用途と条件を限定して製造などの禁止が猶予されている。