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【ニュース&コメンタリー④】 F-22戦闘機の日本輸出に揺れる米国の思惑。

2008.6.22

― 米国議会向け報告(CRS Report)の内容 ―
Potential F-22 Raptor Export to Japanと題したCRS Report for Congress(July 2, 2007)はF-22戦闘機(別名ラプター:猛禽類)の日本への輸出問題を取り上げて包括的に論じている。この報告では日本の次期主力戦闘機の候補としてF-22(制式名称F-22A)を取り巻くさまざまな環境を取り上げているがそこには米国産業界の事情や東アジア戦略をにらむ米国の思惑が滲み出ており大変興味深い。なお米国下院では去る7月25日F-22禁輸措置を継続する決定をしたがそれがここで論じられているすべての解決策とはならない。F-22に限らず次期戦闘機問題は今後とも紆余曲折することは避けられない見通しである。               

注:CRSは米国議会図書館(Library of Congress)のシンクタンク。同報告書は米国会議員向けの公的サービスで一般公開(OpenCRS)されている。なお性質上出来る限り日本語にして伝えているが適訳であるとは限らない。

なおこの記事は弊社のニュース&コメンタリ・シリーズとして2007年9月の月刊誌「JADI」に掲載したものである

要約
日本は米国からF-22の購入への関心を示している。輸出に肯定的な主張は米国の産業への潜在的な利益、日本およびその地域の防衛への貢献、また日本の自衛隊との米国の相互運用の促進などが含まれている。また反対する主張は技術拡散および日本の周辺地域安定に対する懸念がある・・・・・
背景
F-22は米国空軍の主に空対空のソビエト戦闘機を撃破するために開発されたステルス性能を有する世界最先端の戦闘機である。現在の計画では米国政府は2009年までの資金で183機のF22を取得する計画である。F-22の輸出に国防総省は公式には中立であるが幹部らは賛成している。 しかし議会はラプターの輸出に反対している・・・・・・
日本の防衛政策
米国は日本との同盟にアジアにおける軍備即応の基盤を提供している。2001年以降日本はより強力な外交政策を展開しハイレベルによる米日相互のイニシアチブは安全保障に対する拡張した関与を宣言した。現在日本は挑戦的な周辺地域状況に直面し潜在的な軍事的脅威は日本に軍国主義的な過去に戻ることを示している・・・・・・・・・
米国議会の問題
日本へのF-22の輸出問題は米国内の利益と東アジアにおける安全保障環境に関する双方の広い問題を提起している。賛成要因としては米国の産業への潜在的な利益や防衛同盟国への貢献、米国との相互運用の促進が挙げられる。また反対要因としては技術拡散の可能性や周辺地域の安定性を害する可能性が挙げられる・・・・・・・・・・・
米国の産業基盤
F-22を日本へ輸出することは米空軍の調達が終了した後の生産ラインを維持するひとつの方法となる。日本向けの航空機生産ラインを維持することはさらにプライム・ベンダが一機当たりのコストを削減するのを助ける。DoDや米国の納税者は航空機コストが削減されることにより利益を得ることになろう・・・・・・・・・
技術移転
F-22技術による知的財産を保護し敵からのアクセスを拒否することは国家安全保障の最優先事項である。日本は航空機をライセンス生産するか共同生産することを恐らく好むであろう。それは工学や設計知識を得る機会や技術移転をより与えることになる。日本は軍事同盟国であり、また経済ライバルである。多数のF-22技術や工業プロセスは商業利用となりえる・・・・
相互運用と相互依存
最近の双務協定は米国の相互運用を増加させることにより同盟の利点を拡張するねらいがある。日本のF-22の取得は両方の軍が同一の最先端技術を使用することができるので相互運用性を押し上げる。しかしながら、真の相互運用の達成は困難なタスクとなろう・・・・・・・・
地域安全保障
中国と韓国はF-22に関心をもつ日本に対し懸念を表し、F-22の日本への輸出は地域における軍備競争に拍車をかけ、米国の対中韓関係を複雑にする・・・・・・・・・・