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寿命が尽きる前に枯渇が始まる!

2010.8.13

ーDODの補給不全対策マニュアルとはー
欧米装備品データベースのFLISやNCSなどが次世代化を求められる背景には彼らのロジスティックス・システムが抱える「寿命と枯渇」問題がある。一般に民生品は低需要や旧技術品になると生産中止や廃止となるが、防衛装備品にとってはシステムの寿命(ライフタイム)がつきる前に部品が枯渇することは重大な脅威となる。そこでDODでは防衛装備品の生産逓減と部品の枯渇問題をTSCSMやPBLのような次世代ロジスティックス政策によって緩和する動きが急速に広まっている。そこで今回は部品の枯渇対策としてDODが取り組んでいるDMSMSについて紹介する。(DCメール 2010年8月15日 No.275)

DMSMSとは
装備品が補給不全に陥った場合、DMSMS問題(装備品の製造ソース逓減と部品の枯渇)が浮上する。 このDMSMSは兵器システムや装置等の寿命を危険にさらす可能性があるからである。民生品では低需要や古くなった技術製品は廃止させるが、DODでは逆に兵器システムの寿命を長引かせようとしている。 だから修理部品や材料がシステムの寿命が来るまえに枯渇すると致命的な問題が引き起こされる。 要するにこのDMSMSが顕在化するとシステムサポートの脅威となるからである。そこでDODはDMSMS対策マネージャ(PM)を任命しシステムとしてDMSMSを解決するためにアプローチし始めたわけである。問題が表面化した後にDMSMSを報告するか、先を見越してDMSMS問題を緩和するかであるが、当然ながらDOD政策は先を見越すアプローチを定めている。DODが有効とするDMSMS対策は以下のとおりである。
ー 装備システムを形成する部品や材料が利用可能であることを確実にする
ー 総所有コスト(TOC)を削減または制限する
ー 総ライフ・サイクル・システム(TLCSM)を最小にする
ー DMSMSの動作を排除するかまたは最小にする
ー 設計代替手段を定める
ー DMSMSにおけるリスクの緩和に備える
ー DMSMS問題を解決するために1つ以上のアプローチを定める
ー DMSMS監視対策の有効性を強化する
DODはDMSMSの緩和対策として国防取得システム指示書(DoD Directive5000.01)のなかで兵器システム・ライフ・サイクルに対してTLCSMとPBLを明記してDMSMS緩和策として備えている。:このなかで論じられている考え方は次のようになっている。
TLCSM(Total Life Cycle Systems Management)
TLCSMの考え方の基本はシステム・ライフ・サイクルのコスト推進要因のひとつとして部品の枯渇に対処していることである。 TLCSMは統合的なライフ・サイクル、すなわち兵器システムの取得から開発、生産、実装、維持そして廃棄に至るまでに関係するすべての活動をPMが管理することとしている。 それは装備システムの取得に対する完全な責任とライフ・サイクル・マネージャとしての権限を与えることとしている。このTLCSMは結果において装備システムの信頼性、有用性、保守性、生産性のための設計を助長させている。
PBL(Performance Base Logistics)
PBLシステムの考え方は兵器システムの製品サポートに都合のよい維持戦略となっている。 それはシステム準備を最適化するように設計され統合化した性能パッケージとしてのサポート調達をおこなうこととしているためである。このPBLは製品の寿命がある間中、枯渇に対処する効果的な方法を提供する。 従来からの遺産システムを近代化することへの伝統的なアプローチと異なって、PBLは全体論的に兵器システム、アセンブリ、部品、およびコンポーネントのサポートを管理している。PBLは現在の兵器システムにある枯渇部品を緩和して連続した強力なツールを供給している。PMは有機的なサポートソースと共に民間企業との長期契約や協定覚書を通して部品や製品を調達するよりむしろ性能を調達するという点に立っている。契約内容にかかわらず、ポイントが有効なシステムサポートを確実におこなうことの履行保証を契約業者に求めているところがPBLの特徴である
このPBL戦略を生かすためにDODは民間企業に先を見越すDMSMS対策を維持させることを求めている。 PBLの契約は、理想的には5―15年の間の長期であり、ライフサイクルを通して製品サポートの多くの局面を管理することが求められる。民間企業は先を見越してDMSMSを管理し枯渇による誘因を含み必要な性能を達成するのである。 その結果長期のPBL契約については、DODはリスクを低下させ、ライフ・タイム調達や、ソース請負者との長期契約や再設計のための投資利益率などDMSMS緩和策の努力が求められる。
DMSMSにリンクしたツール一覧
DMSMS対策マネージャや民間企業などの担当者には以下のような各種対策用のツールが用意されている。これらの公的なツールを生かすことで的確な部品選択、枯渇部品対策、ならびに装備品システムのライフ・タイム維持戦略を可能なものにしている。これら各種ツールの管理部門では、最新技術を生かした情報提供を試みており、それらが次世代ロジスティックス情報システムの構築につながるものと確信している。

ASSISTーMILスペック&スタンダード
CDMD-OAーシステム形態管理
D200CーLRU & SRU 故障データ
EMALLー補給・取得情報
GIDEPー廃止情報
JEDMICSー工学図面情報
MEDALSー工学図面情報
Microcircuit Queryーメーカ部品番号
PC LinkーDBアクセス
REMISー信頼瀬データ
SDWー廃止データ
Sunset Supply BaseーCOTS部品データ
WebFLISー連邦装備品DB
WebLinkーウェブ版PCLink
しかしながらFLISを管理するDLISによればFLISは今、大きな転換期を迎えているという。それは現在のFLISではデータ構造が古く、次世代ロジスティックス構想の要と言われるPBLの遂行ができないためである。PBLは前述の通りTCOに基づき装備品の初期コスト(調達コスト)とランニング・コスト(運用・保管・廃棄コスト)を含めた総合コストの概念を導入し、装備品の取得を従来のような物品や役務に求めるのではなく、性能や能力を維持する保証を求める概念として登場したもので、つまり契約金額は個々の装備品の対価として支払われるのではなく、エンド・アイテムの性能や能力を維持するための保証(ギャランティ)として請けるというものである。なお次世代FLISやNCSはこういったTLCSMやPBLの政策を取り込んだものとして現在、実装試験(フェーズIII)がおこなわれている。
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