【マイ・ベスト・セレクション】
2011.1.1
新年明けましておめでとうございます。本年の初頭を飾り過去の283回のDCメールの中からマイ・ベスト・セレクション10をお送りします。ここに紹介する内容はいずれも現在わが国が抱える防衛標準化とロジスティクスに関する諸問題ですが、今年は大いなる前進が図られるものと期待しています。なお詳しくは当ブログにある各記事をご覧ください。(DCメール 2011年1月1日 No.284)
①■NATOとECCMA(DCメール No.264)
次世代データ品質管理への新・国際標準化戦略世界の56カ国が運用するNATO装備品データベース( NCS )は今や1600万件を超えるNSN( National Stock Number )を有しており、このNSNには3300万件もの民間製品の仕様とその技術特性データが組み込まれている。NCSの運用管理を行うNATO,AC/135委員会ではこれら膨大且つ多国籍で多種多様な装備品データを統一管理している。データの追加・削除・廃棄などの登録業務は複雑多岐を極め、それが結果としてリアルタイムなNATO兵站業務に影響することになりかねない。そこで米国電子商取引コード管理団体であるECCMAと協力することで次世代の装備品データ品質管理の国際標準化を目論み、世界最大の品目データベース構築を推進している。わが国ではこういった動きをその端々で察知しているが、総体的にその動向を伝えるものはない。この国際化の波は緩やかではあるが確実にわが国に押し寄せているのである。
■NATOの国際標準化戦略
FLIS( Federal Logistics Information System )やNCS( National Codification System )のようなロジスティックス・データベースには限りなく多くの民間工業製品( ここでは装備品という )のデータが組み込まれている。ユーザはこれらの装備品の技術特性データ( Technical Characteristics Data )を検索して必要物品を迅速に手配しなければならないからである。それもNATOのように数10カ国にわたるような多国語からなりその内容も構成も異なる言語ということになるととてつもなく膨大な時間とコストがかかる。NCSを統括するNATO,AC/135委員会ではこのような複雑多岐にわたる装備品の技術特性データを統一し標準化することを10年以上もまえから模索してきたが、2001年に米国の電子商取引専門団体であるECCMA( Electronic Commerce Code Management Association )と協力することで大きく前進することになった。その答えがeOTD( ECCMA Open Technical Dictionary )である。
■eOTDとISO標準化推進
NSNには数多くのデータ・エレメントが組み込まれている。その中でもユーザが最も利用する頻度の高い物品番号( Reference Number ) や技術特性や企業名などは全て民間データである。NSNを構成するこういった民間データ、特に技術特性データはFLISやNCSをより効果的に且つ検索性を豊かにさせるためのデータ・エレメントである。近年インターネットの隆盛により電子商取引が拡大され、電子部品を筆頭にあらゆる工業製品の電子データ化が推進されてきた。しかし一方ではこれら電子化されたデータは企業単位で行われてきたものであり、また国単位のものである。そしてそこには企業同士はもちろん国同士におけるデータ交換作業は多くの場合その自動化が困難であり、多くの労苦とコスト要因が付きまとってきたといわれる。ことさらFLISやNCSの場合は1600万件以上のNSNのひとつひとつの装備品データを組み込む作業は膨大なコストが見込まれてきた。そこでNATOでは主にDODが中心となって古くからこの問題を論議し研究を重ねてきたが、ここにECCMAとの協力によりカタロギング作業における共通技術辞書であるeOTDの開発に成功したのある。・・・・・
②■Tier 2 への道(DCメール No.248)
わが国防衛装備品を世界市場へ
わが国とNATOの繋がりはそれほど古くは無い。それまで米国一辺倒であったわが国の外交・防衛政策は、米国の仲立ちもあって2007年にわが国首相として始めて当時の安倍首相がNATOを正式訪問したのが大きな転機であっったといえよう。防衛標準化や兵站の世界では米国は既にNATOとの共有体制を完了させており、わが国も複眼的に政策を見つめる必要がある。特に兵站情報分野においては今後米国のFLISとNATOのNCSが益々重要視されることは間違いない。わが国は現在NATOのTIER1(ティア・ワン)国になるべく研究がなされている。しかし米国もNATOもわが国がTIER1はもちろんのこと、TIER2(ティア・ツー)国になることを望んでいる。TIER2国になるとどうなるのか。本誌では近未来的にTIER2国のあり方とその道のりを紹介する。TIER2の世界といってもわが国ではなじみが薄い。何を言っているのかわからない読者も多いことであろう。そこで、ここではわが国がTIER2国として自国の膨大で高品質な装備品を世界に提供することができる時代になることを想定として話を進めよう。
■急速に拡大するNATO装備品データベース
今NATO装備品システム(NCS)は世界最大の装備品データベースとして、世界38カ国、3300万種類のメーカー装備品が収録されている。NATOによればこれはまちがいなく、世界最大の製品データベースである。しかし残念ながら、わが国の装備品は正式にはエントリーされていない。(ここで正式にと付け加えたのは、わが国の企業が自主努力で海外エントリーしているからである。) そして今後はさらに国連( UN )が加盟し、また未加盟国を巻き込み、また装備品以外の製品分野もを取り込む壮大な計画があるという。そのためには参加国はNATOの定めるTIER1,TIER2の整備能力を構築しなければならない。わが国はこの分野において10年は遅れているといわれる。その最大の理由はわが国の場合装備品をNCSに登録するためには「政治的な判断」が伴うからである。装備品は膨大且つ細かい。まさに鉛筆からミサイルまでを識別化した装備品体系(FSC)である。それを一言で武器輸出に喩えるような時代感覚ではとてもなし得ない。現在、わが国は徐々にであるが、NATOに参加する方向となっているが、それでもTIER2への道は長く、険しい。・・・・
③■NSN、その真の価値(DCメール No.251)
ライフサイクル・コストに根ざした究極の装備品データ素子。本編はメルマガ2008年12月15日号(No.235)「兵站情報の国際共通語となったNSN」の第2弾である。わが国はNSN(ナショナル・ストック・ナンバー)を保持していない。国産装備品はもとより、FMSなどの装備品の輸入において代替品情報や価格情報などの一部のNSN情報を利用しているに過ぎない。しかしNSNには途方も無いTCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)に携わる情報が集積されている。兵站は湯水のごとくお金がかかる。だからこそ最適な装備品行政を行なうためにはライフ・サイクルな取得システムの運用が必要となる。言い換えればNSNが途方も無いTCOの要素データを集積しているからこそ、装備品取得が最適に運用されることへの証となっているのである。今回はNSNが国の防衛予算の削減に大きく寄与するために構築されていることを改めて紹介する。
■NSNとは
FLISやNCSはNSNの集合体である。このNSNは米国やNATOを中心に現在では世界の55カ国で採用されている装備品識別の最小単位である。NSNは必ず13桁の番号が付与され、物品名、識別データ、管理コード、参考価格、性能データなど多数の兵站情報が組み込まれている。NSNの数は米国だけで700万件を越すと言われ、NATOやその他の関係国を含めると2000万件にも上る膨大な数である。このNSNの最大の特徴はなんと言ってもこれら加盟国のメーカにより生産される装備品、例えば航空機部品から生活必需品に至るまでの互換品や代替品情報が掲載されていることである。その結果、これら生産財や消費財情報など民間製品の数はNSNの数倍となり数千万件にも上るといわれている。
■NSNの基本的な考え方
FLIS(やNCS)を形成するNSNの基本は単一装備品の識別にある。そのためにすべてのNSNは13桁の数字をもつ独特な番号制度からなっている。これにより加盟諸国におけるシステム共有社会では同一装備品はすべて統一され、同じNSNの元で集約されている。だからWebFLISやNMCRLを使うユーザはNSNを通じて世界の代替品検索を行えるのである。NSNの前4ケタはFSCコード、後ろ9ケタはNIIN( ニンと呼ぶ )と呼ばれ、またNIINの最初の2桁は国別コードになっている。例えば米国で登録されたNSNであれば00あるいは01が与えられる。・・・・
④■用語解説ーレディネス(即応性)(DCメール No.279)
米国が掲げるスローガンの意味と狙い
米国防総省(DOD)によるとマテリエル・レディネス( 装備システム即応性 )部門によるプレゼンテーションが韓国国防省の部局(DAPA)に行われた模様である。アジアン・ロジスティクスでは今最も米国に近いといわれる韓国がいよいよ米軍ロジスティクスと帯同して即応性の具現化に向けてTLCSMやPBLに参加しはじめた。米国においてこのレディネス( 即応性 )はロジスティクスの根幹であり,最優先事項となっている。DODは1990年代からこの即応性を定義付け、測定し、評価することで安全保障上の不安定要素を取り除くスローガンとして重要視してきた。今後行動を共にするNATO諸国や韓国などのアジア諸国にもこの対応を強く求めてきていくものと思われる。
■レディネス(即応性)とは
今日のTLCSM(トータル・ライフサイクル・システム・マネージメント)やPBL(パフォーマンス・ベースド・ロジスティクス)構想が大きな成果を挙げているのは将に米国が求める即応性に対して最も経済的且つ効果的な手段であることに他ならない。DODによれば現在ほとんどすべての活動に即応性が浸透している。即応性とは単に他のプログラムのように独自に対処できる機能の1つではない。即応性は新たな安全保障に挑戦する不安定な環境で活動する米軍が体験する複雑な範囲でのさまざまの要素を伴っているからである。1990年代の後半に入るとDODは即応性という言葉を定義し、測定し、評価し、反映し、対処しなければならないと考え始めた。そして即応性を実行するために不可欠な政策や予算および運用上の舵取りを特定してきた。現在即応性はDODにとって第一に優先される政策となっている。 DODは米軍が自らの任務を即応性を伴うことで遂行できることを保証するために必要な段階や手段を講じることを心がけなければならないとしている。
■何に即応するのか?
DODの最優先課題は新たな国家安全保障戦略の要素を実行して国家間の戦いに勝つために即応性を伴った米軍を維持することにあるとしている。即応性を伴った米軍を配置し、備え、国家の安全保障に対する危機に対処するよう訓練しなければならないからである。またこれらの危機には大規模な地域紛争への応答や海外派兵活動および他の主要な任務が含まれている。そこでDODはこれらの機能のために米軍は次のような即応性に対する標準を満たさなければならないとしている。・・・・・・・
⑤■米国防衛技術輸出の強化とわが国企業の動向( DCメール No.247)MIL認定試験機関への申請について
最近、わが国企業のMIL規格品への認定試験申請が相次いで起案されている。弊社にも認定機関やテスト・ラボ、あるいはその申請手続きなどの調査依頼が多い。しかし、その一方米国政府は防衛技術の技術移転規制を強める傾向にあり、米国政府が指定する国防物品については事前の承認、許可ならびに申請を必要とするものが多く注意が必要である。わが国企業は従来からの防衛産業にとどまらず、今後多くの民間企業が参入していくものと思われるが、これらの米国法を事前に理解し自らの輸出管理システムを構築、強化することが求められている。911テロを境に、この厳しい貿易管理体制は益々強化されているというのが専門家の見方である。特に米国は近年、防衛品や防技術の中国流出が、大きな懸念として認識されているが、その他北朝鮮、イランといった懸念国が存在し、警戒感を強めている。わが国の民間企業は新たに防衛産業、なかでもわが国では非軍需品と呼ばれる分野に進出しようとしているが、米国政府ではこれらを国防物品としてその解釈を大幅に拡大しているだけに事前の注意が肝心である。たとえばMIL規格品が米国政府のいう国防物品に該当する場合、米国務省が管轄するITAR(国際武器取引規則)が関与する。このITARは米国法であるCFRのTitle22 CFR Part120-130に相当する国防貿易管理法である。一例をあげると、某MIL規格に準拠した試験装置や実績を持つ米国の試験機関では国内外のメーカーからの製品(防衛装備品)の認定試験を依頼されるが、その場合ITARを事前にクリアするかどうかが受理する条件となっている。ここで簡単にITARについて紹介しよう。ITARでは防衛物品(防衛装備品)の定義づけをおこない、ITAR準拠の必要・不必要を判別している。そしてすべての米国企業や機関は外国向けの防衛装備品貿易に対して事前の申請あるいは許可、認定を国務省から受けていなければならない規則となっている。このなかには物品だけではなく、あらゆる役務(サービス)として国防物品の設計、開発、工事、製造、生産、組立、テスト、修理、保守、改造、操作、非武装化、破壊、処理若しくは使用において、外国人に(国内におけるか国外におけるかを問わない)援助(訓練を含む)を提供すること、が含まれている。・・・・・・・・・・・・・・・・
⑥■MILスペック認定品に関する諸問題(DCメール No.227)
近年における米国防総省( DOD )は米国内での認定品の生産に留まらず、海外諸点での生産活動を推進している。またSAE-AMSなどへのスペック移行で認定品や認定行為については双方の見解もあり、難しい問題をかかえる結果となった。というわけで今日のわが国の防衛航空業界にとって、MILスペック認定品のいわゆる「正式」取得をどうするかという問題は常駐化しておりユーザは個別に的確な対処が求められていることを認識しなければならない。DODはこれら認定品についてはDOD認定機関による発行の認定証( Letter Of Authorization )の確認を行うべきだとしており、また認定品の調査精度を高めることは企業の信頼性を高めることになるとして厳正な対応をしているユーザもある。そこで今回は過去のメルマガで扱ったMILスペック認定品に関する諸事情、諸問題を改めて再編集して紹介する。
■DOD認定作業の諸事情
米国防総省( DOD )は近年米国内での認定品の生産に留まらず、取得改革( リフォーム )や世界経済の変動( グローバリゼーション )により海外諸点での生産活動を推進している。そこでDODのMILスペック認定品のプロセス事例として改めて紹介しよう。
■DODの認定活動
DODの武器システムには電子・機械部品が満載されており、適正なシステム性能を維持するために正常な機能が発揮されることが求められている。これらの部品要求については国防標準化計画( DSP )の管理下におかれ、調整済みのMILスペックや関連する製品の認定作業が行われる。1980年代まではこれらの部品はほとんど米国内で生産されていたが、調達改革や世界経済の変動により、急速に海外諸点での生産に移行している。
■DODの認定システムとは
それぞれのMILスペックには制定部門( PA )があり、各軍や製造メーカが求める「性能要求」を策定し、各部門との調整作業を行っている。MILスペックが制定され発行されると認定部門( QA )は部品を供給するメーカの選定を行い部品の認定を行うことになる。この認定作業にはQAのアセスメント、すなわち製造メーカの認定システムや生産能力、試験方法などといったMILスペックに準拠した性能を発揮する製品を保証するための評価を行う。この評価には細部にいたるドキュメントや製造プロセスの調査や現地での監査などが含まれる。この「認定」プロセスが終了すると製造メーカの品質システムや生産設備、テストラボといったものが生産能力ありとして「認定」( Qualified )されるのである。そこでメーカは認定された部品製造プロセスを用いて、テストラボでMILスペックに要求される認定試験を行う。そしてその試験結果はQAに報告され、合格審査を取り付けることになる。QAはその部品がスペック要求に適っていることが確認されると、その製品およびメーカはQPL( Qualified Product List )やQML( Qualified Manufacturer List )に登録されることになる。・・・・・・
⑦■寿命が尽きる前に枯渇が始まる!(DCメール No.275)
欧米装備品データベースのFLISやNCSなどが次世代化を求められる背景には彼らのロジスティックス・システムが抱える「寿命と枯渇」問題がある。一般に民生品は低需要や旧技術品になると生産中止や廃止となるが、防衛装備品にとってはシステムの寿命(ライフタイム)がつきる前に部品が枯渇することは重大な脅威となる。そこでDODでは防衛装備品の生産逓減と部品の枯渇問題をTSCSMやPBLのような次世代ロジスティックス政策によって緩和する動きが急速に広まっている。そこで今回は部品の枯渇対策としてDODが取り組んでいるDMSMSについて紹介する。
■DMSMSとは
装備品が補給不全に陥った場合、DMSMS問題(装備品の製造ソース逓減と部品の枯渇)が浮上する。 このDMSMSは兵器システムや装置等の寿命を危険にさらす可能性があるからである。民生品では低需要や古くなった技術製品は廃止させるが、DODでは逆に兵器システムの寿命を長引かせようとしている。 だから修理部品や材料がシステムの寿命が来るまえに枯渇すると致命的な問題が引き起こされる。 要するにこのDMSMSが顕在化するとシステムサポートの脅威となるからである。そこでDODはDMSMS対策マネージャ(PM)を任命しシステムとしてDMSMSを解決するためにアプローチし始めたわけである。問題が表面化した後にDMSMSを報告するか、先を見越してDMSMS問題を緩和するかであるが、当然ながらDOD政策は先を見越すアプローチを定めている。・・・・
⑧■米国依存からの脱却を標榜して(DCメール No.249)
7月15日現在、MILスペックは31,048件からなっている。この数はここ数年大きな動きは無い。一時はMILスペックが無くなるのではないかという噂が立ったが、それも間違いで2005年の再活性化宣言によって、ここ数年むしろ増加傾向にあるといえる。さて世界の技術標準の分野において、これほど膨大でかつ厳格な標準化文書は類例が無い。また頻繁に改訂や修正あるいは移転が繰り返され、ツリー構造をした参照文書方式であることも大変ユニークである。こういったことがスペックの利用者や管理者にとっても大変わかりにくく、ゆえに誤解されている部分が多い。わが国のユーザは総じて必要なスペックが改訂されるたびに内容を精査し部品や材料を決定するが、現実問題として受入検査時などで多くの問題が生じていることも事実である。その理由の多くは十分にスペックを理解していないことに起因している。ユーザがこれらの問題を解消するためには、環境を整備してスペックに関する情報収集能力や理解力、問題解決能力を高めることはもちろん、関連部門や取引先に対しても知識レベルの向上、問題解決能力のスキル・アップなど、横断的な意識改革を徹底する必要がある。このことは弊社がコンサルティングをしているユーザがこれらの問題を解消しつつあることが何よりもその事実を明らかにしているからである。
■わが国と米国防標準化政策
近年米国防総省(DOD)は自国だけではなく多数の同盟諸国との間で国際標準化推進活動を強化してきており、NATO諸国やカナダ、オーストラリアといった文化的にも米国に近い同盟諸国は米国主導による新しい標準化活動や取得改革を通じて相互運用性を高めてり、着実に防衛標準化体制の強化を図っている。このような流れは今後益々国際化し文化的にも異なるアジア・アフリカ諸国を幅広く覆うものと考えられる。事実、韓国やシンガポール、フィリピン、マレーシアなどでは米国からの後方支援情報の恩恵を受けているが、標準化政策においても同様な環境下に置かれつつある。わが国は現在米国と同盟国でありながらわが国の特殊事情によりこのような枠組みには参加できず、したがってわが国の防衛標準化政策にとって必要不可欠な米国とのシームレスな標準化構想やSTANAGなどの国際標準化情報の供与に対しての恩恵も受けていない。こういった細かい詰めの甘さがわが国の防衛標準化業務を益々遅滞させ孤立化させることになっている。・・・・・・・・・・・・
⑨■漂流する日本メーカの装備品(DCメール No.258) 世界27カ国で日本メーカによるNSN装備品が登録されていることがわかった。NATOが世界の38カ国に登録許可をしている全NSN装備品は1600万件にも及ぶとされているが、弊社が入手したNAMSA(NATO)からの報告によると、そのうちの27カ国の登録品に日本のメーカによるNSN装備品が存在することがわかった。現在日本はNATOには加盟しておらず、またNCS(NATO装備品システム)にも参加していない。したがってこれら日本メーカは海外拠点のある国の機関を通じて登録をしているということになる。今回は改めてこの問題に焦点を当ててみたい。
■海外27カ国でNSN登録。
前出したように、NATOからの報告ではわが国メーカの装備品登録が27カ国のNCB(各国のNSN登録機関)で約8万2千件にもおよぶことがわかった。もっともこの数はNCSに登録された世界のNSN1600万件の0.5%でしかない。しかしこれらの日本企業は他国のNBC(登録機関)を通じて登録している。具体的にいうと米国やフランス、あるいは韓国やオーストラリアに在するわが国装備品メーカが当該国のNCBを通じて自らが製造(あるいは販売)する装備品をNCSに登録していることになる。登録するためには事前に企業コード(NCAGE)の取得をしなければならないが輸出業務や海外進出をしている装備品メーカのほとんどは取得済みである。それよりもこのようにしてわが国で登録できない装備品が他国のみで登録されている現状はまさに「流浪の民のごとし」で、早くわが国で登録できる状況を構築しなければ根幹が保てない。・・・・・・・・・・・・・・・
⑩■いかに旧式部品がもたらす弊害を排除するか(DCメール No.137)
米軍では稼動中のシステムや装置が故障した場合、米軍部品供給センタ(DSCC)に交換部品の請求(Requisition)をする。そこで米軍の後方支援(Logistics)システムがどのように機能しているか例を挙げて説明しよう。請求元はある陸軍(Army)の車両部隊(Vehicle Unit)である。不運にもその交換部品が旧式部品(Obsolete Part)であるために、DSCCのシステムはその請求を品目管理責任者(Item Manager: IM)に委ねた。そこでIMは独自に調査を行い、この部品は旧式技術のためにどのメーカも製造していないことがわかった。IMは至急車両スペシャリスト(Equipment Specialist)に代替品を探すように依頼した。米軍の後方支援システムにとって、戦闘用品は常に最優先事項(Top Priority)であるからである。IMとスペシャリストは品目削減(Item Reduction: IR)データベースを検索した結果、その互換品(Interchangeable)があることがわかった。IMは請求元にその旨を報告し、代替品採用の検討を依頼した。請求元はその代替品が運用上の問題があるかを評価し、採用を決定した。その結果、請求元は改めて代替品の物品請求を起こすことになった。しかしこの事例で残念なことは、代替品を見つけるためにかなりの時間を浪費したことである。戦闘用品の場合、時間的に遅れることの重要性は誰もが知っていることである。IMは、この請求元が代替品採用を決定するとIRチームに連絡をとり、(この代替品が)請求元で採用されたことを正式に通達し、今後同様な問題が生じても短時間で供給できるようにした。・・・・
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