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【PBLとメトリクス】

2011.2.14

-PBLを成功させる因子ー
今年1月に防衛省から発表された新中期防衛力整備計画(新中期防)で正式に取り上げられたPBL(パフォーマンスベースド・ロジスティクス)はDODが10年以上も前から主に航空機システムの即応性を「最適化」するために、運用持続コスト(O&S)を大幅に低減させ産業界の協力と自主努力を要請した新しい取得形態である。その運用実績はPBL最大のプロジェクトといわれるF-35を含め200を超える。しかしPBL成功の要因はパフォーマンスを定義したメトリクス(因子)の選択にある。コスト削減は重要なテーマであるがそれのみがPBLの成果ではない。パフォーマンスを持続させ装備システムの即応性を如何に最適化させるかが大きな問題である。そこで弊社ではPBLを成功に導くメトリクス(因子)についてできる限りやさしく解説した。ロジスティクスにおける世界各国の協調体制が急速に進むなか、わが国は今このPBLについてしっかりとした研究が望まれている。(DCメール 2011年2月15日 No.287)

■PBLについて
従来からのレガシーシステムを「近代化」させるような伝統的なアプローチと異なって、PBLは全体論的に装備システム、アセンブリ、部品、およびコンポーネントのサポートを管理し、レディネス(即応性)を達成するために例えばシステムに組み込まれる部品の「枯渇」を緩和させるものとして大変有効であるとされている。民間企業との
長期契約を通していわゆる部品や製品の取得というよりはむしろ成果を取得するという新しい概念に立っている。
確かに従来からのシステムを近代化させるだけでは年率10%以上増加するといわれる運用持続(O&S)コストやいわゆるDODが悲
願として掲げる即応性、即ちシステム作動を可能にする状態の低下を招くことは避けられない。ライフサイクル・コスト(LCC)の概念では初期コストの2倍はかかるというO&Sコストを如何に低減化させるかがPBLによる取得改革の原点である。
例えばF-35の初期構想ではともに開発・製造コストとO&Sコストを1:1の比率までに落とすと考えられ、信頼性の向上はもちろんのこと年々上昇するO&Sコストを一定にし,また一方では運用持続において収益の鈍化を余儀なくされてきた民間企業をシステムの寿命が終了するまで安定した収益を確保できる機会を与えるというのがPBLの概念である。
しかし当然ながら安定した収益に応じた責任というものが求められ、システムサポートを確実におこなうことの「履行保証」を求めるところがPBL契約(PBC)の特徴でもある。このPBCは理想的には5―15年の長期にわたり,契約企業は先を見越して例えば装備品枯渇低減策(DMSMS)のような枯渇が原因とならないような対策を施し必要なパフォーマンスを維持しなければならない。このようにしてシステム・リスクを低減させるためにライフタイム調達や契約業者との長期契約や再設計のための投資利益率などの緩和策の努力が求められているのである。
よく言われる言葉にPBLは結果を取得するもので資源を取得するものではない。またPBL契約は全てを契約業者の責任とするものであり、要求元ではないということである。そこではコスト削減を図ることは結果において契約業者の興味を失わせ、あるいはパフォーマンスを持続できず、強いては目標とする即応性の最適化が図れない原因となる場合があることを知る必要がある。
■パフォーマンスとは何か
ところでPBCにおけるパフォーマンスとは何かという議論がある。契約上パフォーマンスは定義され、識別され、誰の目にも明確に表現されなければならない。、そこでPBCに適用されるPRF(パフォーマンス)スペックを例に挙げて説明しよう。なお、PBCではPRFスペックが用いられ、レガシーなMILスペックやDTLスペック等、デザインスペックは用いられない。このPRFスペックは新しいMILスペックの形態として1994年のDOD取得改革以降に誕生したパフォーマンス形式によるスペックである。
PRFスペックは従来のMILスペックと異なり、①要求は質的というよりは、むしろ量的でなければならない。スペックは提案や入札を行う人々およびそれを評価する人々に要求が何であるかを正確にわからせなければならない。量的なデータに基づかない要求は解釈に誤解を与えることになるからである。もしパラメタが明確に説明されていなければ提案を評価し、契約後に性能を実施することは困難であるからである。
また、②要求事項は検証可能でなければならない。ユーザは製品が作動するかを分析や試験で決定しなければならない。また検証可能な要求はメーカをも助ける。ユーザが装置の凹凸について確かめる場合それが何を意味しどうしたら製品の要求を満たすかがわかるからである。
それから、③共通性を許容する記述でなければならない。スペックは適切なレベルで持続させるために共通性の要求を挙げなければならないが過度な要求の解決法を課してはならないからである。
そして、最後に④要求は特定材料や特定過程から独立していなければならない。従来のMILスペックと違ってPRFスペックに記載される要求はスペックを変えないで材料や過程を変えることが可能でなければならないとしている。
このようにパフォーマンス・スペックとは従来型のスペック形態とはまったく違った要求の記述形式となっている。PBCにおいてはパフォーマンスを測定可能にしたいくつかのメトリクス(因子)の策定をすることで最適なパフォーマンスの達成を具体化することができるとしているが具体的な要求はこれらのPRFスペックが用いられるのでる。 
■メトリクス(因子)に対する考え方
上記の通りPBCにおいて重要なことはパフォーマンスを表現するメトリクス(因子)の策定にある。このメトリクスの選択はそれによりPBCの成否が判断されるだけに大変重要であるが、いずれにせよPBCを「簡単且つ測定可能」な要素にしなければならない。つまり要求元は装備システムの信頼性や充足性、あるいは納期短縮や在庫縮小など要求元にとって重要な要因を契約業者の成果によって簡単に測定できる因子として予め策定しておかなければならない。そもそもPBLの主目的は事前に計画した装備システム即応性の確保とTOC(トータル・オーナーシップ・コスト)削減の実現にある限り、メトリクスはこのように設定された目標を簡単且つ測定可能なそして識別されたものでなければならない。例えば一例として策定されるメトリクスは次の通りである。
■Reliability/Maintainability/Availability
・On time Delivery
・ Mean time Between Failures
・ Mean time Between Removal
・ Mean time Between Critical Failure
・ Time On Wing
・ Repair Turn Around Time (RTAT)
・ Production Lead Time (PLT)
・ Training times and availability
・ Technical data updates
・ Asset availability
・ Transportation times
■Readiness
・ Mission Capable
・ Partially Mission Capable
・ Non Mission Capable
・ Asset visibility
■Requisition
・ Backorder Age
・ Backorder Rates
・ Requisition Response Time
・ Fill Rate
■Inventory Turnover Rate
またF-35において適用されるメトリクスは次の通りとなっている。
■Aircraft Availability (AA) Rate
■Full Mission Capable (FMC) Rate
■Mission Capable (MC) Rate
■Mission Effectiveness (ME)
■Days Ready to Deploy (DRD)
■Percent Sorties Flown (PSF)
■Percent Flying Hours Flown (PFHF)
■Logistics Footprint Delta (LFD)
■Maintenance man hours per flying hours (MMH/FH)
なおPBL策定における重要な点のひとつとして目標を達成できるかどうかを事前にリスク評価する必要があるということである。そこで各メトリクスではこれらのリスク・レートを設定し、ハイリスクやミドルリスク、ローリスクを定義し、識別している。PBLではリスク管理を徹底させ、例えば契約業者のシステムや活動を通して調査・分析をするなどリスク・ベース・アプローチの策定もまた重要な側面となっている。
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