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【韓国政府とボーイング社がF-15のPBL契約】

2012.3.16

ーサプライチェーンは現代グロビス社が一手に取得ー

このたび韓国政府(DAPA)と米国ボーイング社はF-15戦闘機の運用・持続のために5年間のPBL契約を締結したと発表した。またボーイング社のパートナーである現代グロビス社(韓国現代自動車グループ企業)は韓国空軍に対して統合サプライチェーンによる装備品や代替部品の調達、サプライヤー契約、および顧客メンテナンスデポや韓国防衛産業界と連携して効率的な物流・配備プロセスを提供するとしている。契約高は約3億ドル。 ( DCメール 2012年3月15日 No.313)

■いよいよ始まった韓国PBLとサプライチェーン
この2月に米国ボーイング社は韓国空軍のF-15K(スラムイーグル)戦闘機の運用・維持のために3億ドルのPBL契約を締結したと発表した。5年契約は、韓国空軍が保有する約60機のボーイング社製F-15Kの長期的な存続を保証するもの。ボーイング社は韓国空軍保有の最高任務能力率を達成したF-15艦隊の支援を継続できることを嬉しく思うとしている。このPBL契約は航空機の全ライフサイクルコストを含む任務に応じた数の航空機を維持するための成果に基づいて支払われるという。
PBL契約は伝統的な防衛取得計画における供給と保守サポートを購入するというトランザクショナル・アプローチにとってかわるものである。PBL契約を運用すると顧客は合意した成果を購入、即ちトランザクション単位での任務即応率とスペアパーツ購入をセットとして買うことになる。
またボーイング社は韓国産業界のパートナーである現代グロビス社が韓国国内の物流とサプライチェーンを担当することを発表した。この現代グロービス社は韓国最大の現代自動車グループ企業の一つで、陸海空輸送、物流コンサルティング、倉庫、包装サービスおよびサプライ•チェーン•マネジメントを専門としている。
いよいよ韓国では本格的なPBL契約により装備品や代替パーツのサプライチェーンが展開され、韓国防衛産業界に幅広く還元されていくことが予測される。韓国のロジスティクス・システムは既に米国を中心としたNATOシステムと統合化されており、あらゆる装備品は共有化され運用されているからだ。
ボーイング社では今回のPBLアプローチは今後数年にわたりF-15Kが韓国防空能力の即応性を維持し、全ライフ・サイクル•コストを管理しまた韓国産業界に新たな機会を提供することになるとしている。
注:DAPA(Defense Acquisition Program Administration)は2006年に発足した韓国国防省の装備品取得部局で、主な任務はその他全軍の取得改革ならびに韓国防衛産業の育成にある。
注:ボーイングが製造したF-15Kスラムイーグルは、F-15Eの先進的な機種であり、韓国向けに特別に製造された。韓国政府とボーイング社は2002年に最初の20機を締結し、2010年にはより多くのF-15K戦闘機を発注した。
■米韓ロジスティクス戦略によるわが国環境の変化
1昨年米国防総省( DOD )幹部が韓国国防省部局( DAPA )に対してマテリエル・レディネス( MR )に関するプレゼンテーションを行った。MRとはすべての装備システムの即応性を持続しておく米国政府のスローガンである。このMRを韓国に対して行ったことは米国の東アジア政策上非常に重要なテーマである.DODは国防副次官補レベルにおいてこのMR政策を横断的に実施し、陸海空軍などの指揮下にある武器システムと呼ばれる全ての航空機や艦船などの保守やシステム支援は統合されたロジスティックス・システムのもと即応性の持続管理を行っている。
例えば米軍が作戦域に移動し、展開するのにかかる時間や一度に実行しなければならない任務、そしてこれらを持続するために従事する時間の長さなどを定義し、測定し、評価し、反映し、対処しなければならないという考えに立っている。適切な軍隊の配備、近代化した設備、持続性等ロジスティクス活動の手段と装備品がMRに適うことで人員を訓練したり、動機づけることが可能になるとする米国政府のスローガンである。
そこで米国が韓国にMRのプレゼンテーションを行ったことは非常に注目される点となる。アジアン・ロジスティクスの世界でTier2( ティアツー )国である韓国は既に指導的な立場にある。韓国のロジスティクス・システムは米国を中心としたNATOシステムと統合化されており、あらゆる装備品は共有化され運用されている。その上もっと重要なことは韓国装備品がこの共通システム( NCS ) を通じて自国運用はもちろん、他の国々でも取得されるということである。NATO検索サイトでは既に韓国語による装備品情報が立ち上がっており、登録した者は誰もが情報の取得ができるようになっている。海外のマスコミ報道によれば米国にとっては現在同盟国である日本よりも韓国のほうが実務的であるとさえいっているのである。
 
ところで昨年、米国は嘉手納米空軍基地に配備されたすべてのF-15戦闘機を今後5年間にわたり韓国の大韓航空に補給処整備( デポ・メンテナンス )をおこなう調印がなされたことを公表した。発表された内容によると契約の特長は従来からの米国政府( 米空軍 )管理に基づく装備品契約から契約業者( 大韓航空 )が全面的に装備品管理を請負うパートナーシップ契約に変更された点にある。これは1982年以来F-15整備を経験してきた大韓航空の実績が大きく評価された結果であり、全面的な契約業者の権利と責任が問われるいわばPBLあるいはプロダクト・サポートによるパートナーシップ契約と思われる。
 
沖縄嘉手納基地に配備された54機すべてのF-15戦闘機の整備は全面的に韓国プサンの大韓航空によって持続管理・整備が図られることになる。わが国の嘉手納基地に米空軍が配備するF-15はわが国防空、制空の重要な一翼を担っており、韓国民間企業による維持管理・整備契約はわが国のロジスティクス体勢の立ち遅れを象徴する衝撃的な出来事である。 
そのうえ今回発表されたボーイング社と韓国政府によるF-15KのPBL契約は今後現代グロービス社による装備品や代替パーツのサプライチェーンが展開され、韓国防衛産業界に幅広く還元されていくことが予測される。
米国は常々、米議会報告( CRS )で「日本の脆弱性は脅威を防止する能力が制限されているという事実がある」ことを示唆してきた。これはともすればわが国が見失っているロジスティクスからの弱点を改めて喚起させており十分に説得性がある。これを読み間違えるとここに述べるようにいくつかの潜在化した問題が一気に噴き出されることになる。昨年末にようやくわが国が決定したF-35の将来におけるPBL運用・保守体制やサプライチェーンによる装備品や代替部品などが不測の事態に陥らないように今から準備しておくことは自明の理である。
 
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