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【韓国装備品輸出が急増】

2012.5.30

ー知られざるハイテク武器輸出大国の現状ー
韓国防衛事業局(DAPA)によると、昨年度の 韓国における防衛装備品輸出額は当初計画の16億ドルを大幅に超える24億ドル(約2000億円)であった。韓国の防衛産業界は今後とも輸出指向型に特化して、例えば米国ロッキード・マーチン社との共同開発によるT-50型ジェット訓練機など、米国との協力でハイテク技術を中心とした防衛装備品輸出の開発に余念がない。2005年にNATOのT2(ティアツー)国となった韓国は、わが国を含むアジアのT1(ティアワン)諸国への装備品情報(NCS)のウェブ・トレーニングをも開始した。6年前に創設されたDAPAは韓国防衛事業を統括する総本山として国内の産業界をまとめるだけではなく、アジア諸国やNATO協力国との重要なパイプ役を担っており意気高々である。( DCメール 2012年6月1日 No.318)

■韓国が装備品輸出大国に。
一昨年、米国は韓国に装備システムの即応性(MR)のプレゼンテーションを行った。このことはT2( ティアツー )国である韓国が既にアジアのロジスティクス分野で指導的な立場にあることを意味している。韓国のロジスティクス・システムは米国を中心としたNATOシステムと統合化されており、あらゆる装備品は共有化され運用されているからである。この意味のもつ重要性は韓国装備品はNATOシステムを通じて自国運用はもちろん、他国にも輸出可能ということである。既にNATO検索サイトでは韓国語による装備品情報が立ち上がっており、登録した者は誰もが情報取得ができるようになっている。また韓国政府のホームページ上では日本を含むアジアのT1(ティアワン)諸国向けにNATO装備品システムのウェブ・トレーニングを開始している。そしてこれらはすべて韓国防衛事業局(DAPA)が統括しているのである。
ところでDAPAによると、昨年度の防衛装備品輸出額は当初計画の16億ドルを大幅に超える24億ドル(約2000億円)であったとしている。そして韓国防衛産業界は今後とも輸出指向型に特化して、例えば米国ロッキード・マーチン(LM)社との共同開発によるT-50型ジェット訓練機など米国との協力でハイテク技術を中心とした防衛装備品輸出の研究に余念がない。6年前に創設されたDAPAは韓国防衛事業を統括する総本山として国内の産業界をまとめるだけではなく、アジア諸国とNATOとの重要なパイプ役を担っており意気高々である。
■韓国は世界の防衛装備品市場で主要プレーヤーとなる
ザ・コリア・タイムス1月16日付(電子版)によれば、世界の国々が軍事費を締め付けようとしているなか、韓国防衛事業庁(DAPA)はむしろ世界市場における自国シェアの拡大の機会として捕らえていると下記のように伝えている。
「2011年、韓国は24億ドルにのぼる防衛装備品の輸出高を記録した。これはT-50型ジェット練習機などのようなハイテク装備品を含めて当初の計画の16億ドルの目標を上回った。高度の技術と品質のうえ魅力的な価格で対処したことがその販路を拡大しているのある。そのうえ今年度は30億ドル(2500億円)の輸出目標を設定している。」
「韓国は将来的にドイツやフランス、イギリスを含むほぼすべての競合国を凌駕して、世界の防衛市場における主要プレーヤーになることを考えている。そして最終的に韓国は100億ドル(8000億円)の年間装備品輸出を賄うことができるとしている。」
「2011年度の世界防衛市場年鑑によれば、2010年において米国のみが輸出において100億ドル以上を締結した。世界の輸出市場では、米国は52.7パーセントを占め、212億ドル相当の装備品を輸出し続くロシアは78億ドル、19.3%であった。」
「2010年、韓国は11.7億ドルだった。が、世界的景気後退過去数年平均で30億ドル相当を輸出したイギリス、フランス、ドイツは、2010年たったの14億、1.3億、1億ドルだった。これをみても韓国の輸出量が大幅に飛躍していることがわかる。」
「民間製品とは異なり、防衛装備品は、少なくとも20〜30年を必要とする保守やサポートが見込まれ、 今後の安定した需要のための基礎を築くとされている。」
■韓国防衛装備品動向
最近、米軍嘉手納基地に配備されたすべてのF-15戦闘機が今後5年間にわたり大韓航空に補給処整備( デポ・メンテナンス )をおこなう調印が米韓でなされた。発表された内容によると契約の特長は従来からの米国政府( 米空軍 )管理に基づく装備品契約から契約業者( 大韓航空 )が全面的に装備品管理を請負うパートナーシップ契約に変更された点にある。これは1982年以来F-15整備を経験してきた大韓航空の実績が大きく評価された結果であり、全面的な契約業者の権利と責任が問われるいわばPBLあるいはプロダクト・サポートによるパートナーシップ契約とされている。
沖縄嘉手納基地に配備された54機すべてのF-15戦闘機の整備は全面的に韓国プサンの大韓航空によって持続管理・整備が図られることになる。わが国の嘉手納基地に米空軍が配備するF-15はわが国防空、制空の重要な一翼を担っており、韓国民間企業による維持管理・整備契約はわが国のロジスティクス体勢の立ち遅れを象徴する衝撃的な出来事であった。 
また、今年になって米国ボーイング社は韓国政府との間でF-15KのPBL契約を締結した。これはボーイング社にとって韓国政府との始めてのPBL契約である。またボーイング社は韓国の現代グロービス社による装備品や代替パーツのサプライチェーンを採用し展開していくとした。この現代グロービス社は韓国最大の現代自動車グループ企業の一つで、陸海空輸送、物流コンサルティング、倉庫、包装サービスおよびサプライ•チェーン•マネジメントを専門としている。これら装備品や代替パーツのサプライチェーンにより韓国防衛産業界は新しい需要の恩恵を受けることになる。
   
   
なお、このPBL契約は従来からのレガシーシステムを「近代化」させるような伝統的なアプローチと異なり全体論的に装備システム、アセンブリ、部品、およびコンポーネントのサポートを管理し、即応性を達成するために例えばシステムに組み込まれる部品の「枯渇」を緩和させるものとして大変有効であるとされている。民間企業との長期契約を通していわゆる部品や製品の取得というよりはむしろ成果を取得するという新しい概念に立っている。このように米韓では新しいPBL契約により装備品や代替パーツのサプライチェーンを展開し、今後は韓国内はもとよりアジア諸国に対して装備品の提供から運用・維持・管理に至るまでのライフサイクルの支援を推し進めていくものと思われる。
昨年11月に米国オバマ大統領は、米国はアジア太平洋地域において今まで以上に大きく、長期にわたる役割を果たしていくと述べたがロジスティクスの分野においては韓国を以ってその役割を果たそうとしていることが十分に窺える。また韓国においては将来的にドイツやフランス、イギリスといった先進競合国を凌駕して、世界の防衛市場における主要プレーヤーになろうとしているのである。
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