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【F-35部品輸出】

2013.2.12

-グローバル・ロジスティクスへの幕開けー

マスコミ各紙によれば政府はこの4日、防衛省が導入するF-35の製造にわが国企業が参加した場合武器輸出三原則の例外として認める方針を固めたという。部品(装備品)輸出は国内防衛産業の維持・育成に不可欠であると判断したからだ。そこで政府はこの機を逸することなく永年の課題である世界の主要60カ国が導入するグローバル・ロジスティクスの参加に正面から取り組んでもらいたい。今や諸外国との装備品識別の一元化や共通性維持はグローバル・スタンダードとなっている。なかでもNSN採用やT2(ティアツー)格上げそして何よりもF-35の維持管理に避けて通れないPBLによる取得など国内防衛産業界の維持育成に欠かすことの出来ない難題が山積するが、世界的な潮流であるこのグローバル・ロジスティクスこそ今取りあげる絶好のタイミングとなるからである。(DCメール 2013年2月15日 No.335)

■F-35装備品輸出とグローバル・ロジスティクス
国境を越えた同盟諸国が共通した装備品システムを運用するというグローバル・ロジスティクスの概念では自国の装備品システムの即応性維持のために可能な限りリアルタイムで保証された装備品情報の運用が求められる。ひとつの不具合品情報が命取りになりかねないからである。欧米、豪、韓などの国々ではひとつのグローバル・ロジスティクス体制の下、すべての装備品の運用管理はグローバル・サプライ・チェーンへと急速に拡大している。
そもそも米国が提唱するグローバル・ロジスティクスとはなにか。米国にはNSN(ナショナル・ストック・ナンバー)はロジスティクスの国際語であるという文言がある。NSNはロジスティクス情報の国際共通語として加盟国ではもちろん米国政府調達(FMS)など輸入装備品に携わる関係者の間では知らない者はいない。このNSNは米国などNATOを中心に現在では世界の60カ国で採用されている装備品識別の最小単位である。このNSNこそはわが国が採用するべき世界共通の装備品番号体系である。
13桁からなるNSNには数多くのデータ・エレメントが組み込まれている。中でも利用頻度の高いものとして代替品パーツ番号や技術特性、企業コード、参考価格などがある。これらNSN装備品は米国のFLISやNATOのNCSデータベースに組み込まれている。そしてNSNの最も重要で最も遠大なメリットは、装備品の取得要求から保守そして廃棄に至るまでのライフ・サイクル管理を提供するということにある。 NSNを集積したFLISやNCSはその装備品検索システムであるWebFLISやNMCRLを通じて世界的に使用され、NSNはもはや国際語となっている。
NSNの数は米国だけで700万件を越すと言われ、NATOやその他の関係国を含めると2000万件にも上る膨大な装備品の数である。そしてこのNSNの最大の特徴はなんと言っても主要国のメーカにより生産される一般装備品、例えば航空機部品から生活必需品に至るまでの互換品や代替品情報が掲載されていることにある。その結果、これらメーカ品の数はNSNの数倍となり、約数千万件にも上るといわれている。
ちなみに韓国は既にT2国として自国装備品を世界市場に輸出している。世界の装備品市場において韓国の実績は目を見張るものがある。韓国によればNCSにより防衛装備品と民間品をリンクさせ、またNCSについて中国を教育しロシアの構築を支援したという。これらは韓国取得改革によって設立したDAPAを中心に韓国NCBがデータ変換を強化し始めていることによるものである。韓国は既にNCSを通じてNATO諸国との装備品情報の一元化により、米国を含むNATO諸国からはロジスティクス分野において最も信頼される国へと変身したのである。
ところでNATOによればわが国メーカの装備品が世界の27カ国のNCB( NSN登録機関 )で約8万2千件も登録されている。自らが登録機関をもたない国でこれほど多くの他国での登録を持つ国はわが国をおいて他にはない。日本企業は自力で他国のNCBを利用して登録しているのだ。わが国メーカはその国のNCBに登録することで新製品にNSNを付与しあるいは既存のNSNに代替品として登録することができるからである。
わが国メーカは米国はもちろんフランスやドイツ、オーストラリアに在するNCB(登録機関)を通じて自らが製造あるいは販売する装備品を大量に登録しビジネス展開をしてきた。それにしてもこのようにわが国装備品メーカが他国で登録している現状はまさに流浪の民のごとしで早期にわが国政府が主導してわが国のNCBの活動を積極的に行う環境を整備する時期に入っている。わが国の秀逸な資材や部品、需品などの装備品の世界市場でのビジネス機会を増加させるためにも早期にT2加盟の準備を始める必要がある。 
また現在自衛隊が保有する170万品目ともいわれるわが国装備品データのNSN化や国際共通化は真の同盟の証ともいうべきもので近年日米、日豪、日韓によるACSA協定の調印が国民の知るところとなったがこの米韓豪はともに共通した装備品体系を維持している。片務的とも揶揄され非対称な双務性のもと集団的自衛権の行使はともかく平和維持軍にも参加をするわが国としては装備品体系の一元化無くして十分な任務を果たすことはできない。わが国独特のロジスティクス・スタイルは今後益々同盟各国との協調体制が進むなかグローバル化の波に洗われることになるが最新のグローバル・サプライチェーン構想や装備品データ品質管理基準など今、世界各国が創生する新しい潮流に積極的に身を乗り出すことが必要なのである。
そもそもロジスティクスの観点からみればF-35の共同開発や共同運用に合意した国々はいわゆるNATO主要国とそのT2諸国であり、F-35の初期構想はPBLなどの次世代型ロジスティクス政策を可能にするロジスティクス先進国による共同プロジェクトである。
F-35のPBLによる運用持続契約は米国ロッキード・マーチン(LM)社による民間型グローバル・サプライチェーンにより履行され全ての装備品にはNSN登録が義務付けられる。そこで米国防総省(DOD)が中心となりFCS(米国装備品システム)やNCS(NATO装備品システム)はALIS(民間型装備品システム)との装備品識別の共通化を図る調整が行われている。
このPBLは理想的には5―15年の長期にわたり,契約企業は先を見越して例えば装備品枯渇低減策( DMSMS )のような枯渇が原因とならないような対策を施し必要なパフォーマンスを維持しなければならない。このようにしてシステム・リスクを低減させるためにライフタイム調達や契約業者との長期契約や再設計のための投資利益率などの緩和策の努力が求められているのである。
このようにわが国がF-35エアシステム導入を決定したことはグローバル・ロジスティクスの視点から見れば海外諸国との装備品共通化であり、NSNの採用、T2加盟に向けた体制づくりをすることにほかならない。また新しい世界標準のデータ品質管理基準に則った装備品データベース構築の研究にも着手しなければならない。そのうえF-35の維持持続体制の強化に向けた多国間PBLの導入に着手しない限り他国の介入というわが国にとっての不測の事態を招く結果となることは火を見るより明らかなのである。
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