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【F-35装備品にNSNを(続編)】

2015.8.15

■F-35装備品にNSNを(続編)
F-35はわが国を始めとする多くの国が導入を決めている軍用機である。一般に軍用機の維持管理は軍の補給処など国の施設を使いまた要員も官側で賄う。しかしF-35はPBL契約に基づきCLS( コントラクタ・ロジスティクス・サポート )と呼ばれ、すべて民間主導で賄われる。そしてF-35の全ての装備品は民間契約業者がメーカ・パーツ番号で管理しNSN番号の付与は必要ないという立場をとってきた。
ところが一昨年の12月にNATOで米国政府が公表した内容では実は民間主導ですべて任せることに大きな問題があり、政府としてNSNを付与する必要があるということが表明されたのである。
このCLS体制の欠陥はいままでのPBL契約でかなり指摘されてきたが、なかでも最大の問題は装備システムの運用先や配備先が紛争国あるいは関係国の場合、CLSは十分に機能しないことが明らかにされた。CLSでは現地物流・配備・装備・整備が法的に不可能(不可抗力)であることの問題が浮上したのである。
米国議会は紛争当事国に駐在するあらゆる米国民間人や企業の帰国を命じる権限を有しておりいざとなれば強制的に撤退させる。だから民間企業との取引には必ず不可抗力条項というものが存在し、紛争による免責条項が織り込まれる。
そこで米国政府(DLA)はこの様な事態を防ぐためにF-35の装備品には当初からNSNを独自に付加することを決め、いざと言うときは国が物流・配備・装備・整備を可能とすることとした。NSNを付与するということは国が維持管理を想定することに他ならない。
―以上、詳細は以下のURLを参照ください。-
http://www.datacraft-news.com/ontopics/321.html
ところでF-35の装備品にNSNを付与しなければならない理由はほかにもいろいろあることがわかってきた。
例えば、F-35がCLSである限り、装備品はすべてメーカによるパーツ番号で管理されるが、すでに実戦配備されているF-35を運用する部隊ではそれら装備品の使用や保管をしなければならない。そのためF-35の補給基地には使用済みの破損品や摩耗品が大量に参集されている。
そこで米国防総省(DOD)はほとんどの補給基地に廃棄処理機能があり、これら地元の廃棄施設を利用することでF-35装備品の再利用や非軍事化を行うことができるとしている。
そしてこれはCLSにより廃棄等の処理プロセスを確立するよりはるかに安価である。そこで軍施設の利用にはすべての装備品にはパーツ番号ではなくNSNの付与が避けられず、F-35統合計画室(JPO)も認めるところとなっている。
またF-35装備品のNSN化をする別の理由として、軍施設で使用される同一装備品を試し、違う識別番号を防がなければならないとしている。いわゆるまがい品対策である。
一般に装備品にNSNを新しく割り振るには、その装備品を完全に記述する必要があり、十分に原材料や完成品を識別するためにOEMから特定な技術データや図面を取得しなければならない。NSNには寸法情報や機械的、電気的および物理的特性など品目を記述するために必要な各種情報やデータが埋め込まれているのである。
ところで問題がないわけではない。
実はNSN化するためにこれらの必要情報をすべて取得することは非常に難しいのが現実である。その主な理由としてメーカーは独自の所有情報(IPR)であると主張し、NSN化のためにこれらの情報は提供できないということが妨げになっている。
実際、NSN化のための記述データは政府との取得契約において契約業者が提供することとしているが、契約は軍機関の契約事務所によって執り行われるためにNSN化を担当するNCB(国家類別局)では制御ができないのが原因であるともいわれている。
また現在、F-35装備品はCLSの統制により良好な技術データの取得が行われているが、一方では下請業者からの製造品目の取得データは常に品目の完全な情報を構築できていない。そのためにNCBでは技術データを確認し、また契約業者がそのデータを検証することができない場合は新しいNSNを割り振らなければならないとしている。
このようにメーカとの協力合意により優れた技術データを取得すると、完全な装備品目の識別をすることができ、またそれがF-35と他の兵器システムとの相互運用性を助長することにもつながる。それはF-35を含む統合装備システムでは装備品が緊急に必要な場合その部品を互いに共有したり貸し借りすることができるようになっているからである。
 
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