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【公知規格管理について】

2017.8.2

■最適な公知規格管理とは
日本の防衛・航空宇宙産業にとって、米国国防総省(DOD)が提供するMILスペックは、無償による公的ダウンロード・サイト“ASSIST”の出現により、以前にもましてコスト低減と最新化が促進された。一方、SAEやASTMなど大手の米国民間規格団体(SDO)も自らのインターネット・サービスを屈指して、便利にまたすばやく最新版情報の提供を始めるようになった。このように、ユーザの利便性が向上する一方、逆に公知規格の管理コストが増大することに頭を悩ましていることも事実である。
ご存知の通り、MILスペックは1994年以降、DODの取得改革により、その姿を大きく変容させた。それまではDOD主体の半強制的な概念によるスペックが、古色蒼然とした、時代錯誤的な概念にも係わらず横行していた。DODの取得改革により、時代に即応したSDOらに切り替えをするもの、また
性能重視に切り替えるものなどの代替政策が幅広く打ち出されたのである。
 
それまでのMILスペックは「靴下など生活用品からミサイル部品などの戦闘用品まで」なんでもそろっている時代が長く続いていた。MILスペックは4万件以上もあり、そのそれぞれが時代の要請に基づき改版される様は、まるで世の中そのものが「有事体制」の感があった。
 
しかし、時代が大きく変容し、モノの尺度も地球規模(グローバル)の様相を深めるにつれて、物事の価値観も「重厚長大」から「軽薄短小」重視の傾向となり、また合わせてアナログからデジタル技術への急速な進歩は、MILスペックを維持する環境にも大きな転機をもたらした。また折からのDOD予算
縮小も、MILスペック改革の要因となった。
 
このように、従来からのMILスペック主体の管理体制から、MILスペック以外の民間規格へ代替される他、MILスペック自体もその仕様概念を大幅に変更することが打ち出されたわけだが、これによりこれらスペックの管理体制も大きく切り替える必要が出てきた。MILスペックや民間規格を総称して公知規格と呼ばれるが、これら公知規格の最新版管理、履歴管理は次のような観点から今後益々重要視され必要の度合いを深めていくものと思われる。
 
公知規格の最新版と旧版の区別管理、各ユーザー間の情報の共有化、およびその運用ルールの策定は、ISO品質管理規準に認められるまでもなく、関連業務の効率化に貢献し、公知規格管理の基幹となることは自明の理である。このように最新版情報の一元管理は、現場の規格ユーザのみならず、資材調達に至る関連部署に対しても有効な情報源となる。
公知規格を運用するためには、過去からの規格との履歴の推移、比較、検証が重要な課題で、その履歴情報は代替品や代替先の再検討に不可欠な管理情報となる。
 
また、最近のSDOは、急激に増加する規格需要やPDF等電子媒体への移行のなか、規格保護の強化が急務となっており、規格ユーザーに求められるこれら民間規格の一元管理は、公知規格の著作権保護をサポートする結果ともなっている。
しかし一方では、規格を管理する部門では限りある予算の低減化が必至であり、今まで以上に規格運用の効率化が求められている。そしてそのためには必要規格の洗い出しをしたうえで、段階的な取り組みが必要となる。段階的とは、必要な規格の使用頻度に合わせた取り組みをすることで予算の効率化と低減化を共に達成することに他ならない。
例えば、最新版管理が必要な規格が100件あるとしよう。この100件の規格を常にウォッチして最新版を常時維持することは、大変な作業である。特に複数のSDOによる異なる規格を少なくとも毎月、あるいは数ヶ月に一度チェックしなければならないからだ。異なる規格の最新版情報の取得は、一元的にはできない。特に欧州系、米国系にまたがる場合は不可能に近い。そのうえ迅速性が求められる場合は、管理・運用する人件費だけでも予算をオーバーしてしまう。
SDOが提供する各団体別のWEBサービスは一考するに価する。社内ユーザ全員が同時に使用可能となり、また新たな管理コストも不要であるからである。しかし、問題もある。年間にかかる費用に対価した使用頻度があるのだろうか。頻度の少ない規格はどうしたらよいのだろうか。全てを見回した上で、最適な規格管理を施すためにどうしたらいいのだろうか。
① まずは、必要規格の洗い出しをおこなうこと。
どの製造メーカにも必要規格が存在している。弊社による調査ではその数は数10から数100に上るといわれている。そしてその周りに存在するのが関連規格、いわゆる呼び出し規格である。それは必要規格は必ず複数の関連規格を呼び出しているからである。そうなるとこれだけで少なくとも、100から1000近い規格が身の回りに存在することになる。
② 次に、主要規格と従属規格の区分けをすること。
必要規格と呼び出し規格を洗い出したあとで、それを主要規格と従属規格に区分けをする。それにより、主要規格はSDOで提供する有料のWEB版を利用することが望ましい。例えば、SAEの有料版WEBサービスであるSAE MOBILUSを利用することで、SAE AMSやAS、GV規格をMILスペックサイトの“ASSIST”と同様に使用できるからだ。また、最近では欧州規格も同様にWEB版が用意されてきた。これらは有料版であるだけに、使用頻度との兼ね合いが重要であることは言うまでも無い。
③ 最後に個別規格の管理方法を定めること。
主要規格ではなく、しかし個別に管理しなければならない規格はどうしたらよいのだろうか。実はこれこそが、大変重要であり、また解決できない問題として取り残されている。必要規格であり、主要規格であるが、単独規格であるために、最新版管理が出来にくいというユーザがいる。また、呼び出し規格であるが、適度にチェックしておかなければならないというユーザもいる。そのうえ、時間的に“ASSIST”にあるMILスペックを常時ウォッチすることができないというユーザもいるのだ。
そこで例えば、弊社の推奨する「最新版管理とアラートサービス」では、こういった1件からの受託サービスをおこなっている。弊社では欧米の海外規格はもちろん、国内規格なども含めた公知規格を1件から数千件に至るまでをユーザの代わりに管理して、定期的に報告し、また個別規格の取り寄せを代行している。(詳しくは別途お問い合わせください)
最後に、企業にとって公知規格の最適管理は、まずは必要規格が改訂された、あるいはキャンセルされたという最新情報をいち早く知ることにある。ある企業によると、改訂されたことすらも知らなかったことで、取引先から注意を受け、以後検査が厳しくなったと聞く。誠にプロとして恥ずかしいことであるが、このようなことがないように日頃から十分に注意しておかなければならない。また、取得した原文情報には常に発行元による“運用約款”が付いている。そのためには日頃から運用基準を定め、社内ルールを取り決めておくことが重要であろう。結局は、「必要な規格は日頃から準備をしておく」ことが、最適な公知規格管理につながることを銘記しておく必要があるのではないかと思う。
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