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DODからの礼状通知

2008.8.6

 弊社は永年にわたり、ユーザからの依頼に基づきDODに対してMILスペックに記載される内容の確認や質問、あるいは調査依頼を行なっているがその事例は数百件を越えるまでになっている。しかしながら昨今ではスペックの記述に関する「誤りの指摘」が多発しており、その結果、皮肉にもDODから礼状を受けるケースも少なくない。

 今回は最近某ユーザから提起されたあるスペック(MIL規格)の誤記に関する調査事例を紹介する。

■調査依頼
 MIL-STD-2219Aは2005年7月18日に発行された航空宇宙機器材の溶接に関する基本規格のひとつである。今回某ユーザから調査依頼を受けた内容はその5.3.2項(Qualified weld settings)にQualified weld settingsare required for manual welding of Class B welds.という一文があるが、溶接設定値の認定がより重要なクラスAに要求されていなく、何故クラスBにだけ要求されているのかという問題が起きたのでDOD担当者からの説明を必要とする、というものであった。
 
 そこで弊社は早速DODの当該規格担当者に連絡を取り、案件の調査を依頼した。一定の期間を経た後に次のようなDODからの回答文書が郵送されてきた。
 「担当部署にて再審査を行った結果、貴、クラスA,Bに関する問題提起については同意するところである。そこで同規格の修正作業をおこない、各部門にてチェックされたのち、コメントとともに当該規格の作成部門に渡る予定である。なお本件はその後修正版として公表されることになる。」
   
■修正通知
 7月に入りDODからMIL-STD-2219Aw/Change 1が発行されたとの通知文書とその修正版がCD-ROMに封入されて郵送されてきた。そこで早速ユーザに更新情報を提供するとともに今回の修正方法は旧文書に変更点のみを書き加えした異例の方法であることを伝えた。弊社の比較、確認作業の結果問題の箇所はユーザが指摘したとおり訂正されていることがわかった。
 
 今回の事例結果ではDODは問題箇所を急遽加筆修正した上で変更文書を発行するという異例の文書形態の措置を取ったが、これは当該スペックが航空宇宙機器材の溶接作業に関わる基本規格であり、緊急避難的な措置であったことを裏付けている。 こういったDODの迅速かつ律儀な対応は例え相手が他国のユーザとはいえスペック変更が開発や調達に大きく影響を及ぼすだけに決して疎かにしない。
 
 
■弊社による変更情報抽出プログラム
 一方弊社では新しく送付されてきたMIL-STD-2219A w/Change 1と従来のMIL-STD-2219A とを「テキスト比較プログラム」で抽出することにした。その結果はユーザが指摘したような一文となっていることが実証された。また当比較プログラムによれば他にも加筆修正が加えられた形跡があり、今後引き続き検証を行う予定である。
【MIL-STD-2219A w/Change 1 比較結果(PDF)】
 
 
■MILスペックに対する意識改革
 多くのMILスペックの内容に不明な点がある場合、また誤記あるいは修正を必要とする部位が見つかるたびに弊社ではDODに調査を依頼し、回答を得ている。またこれらの場合多くはDODが迅速に修正し再公表している。またDODはこれらユーザからの指摘に対しては素直に感謝の意を表明している。こういったことは従来には見られなかったことであるがそれだけ日本のユーザのMILスペックに対する意識あるいは知識が変わってきたことを物語っており、MILスペックに対する意識改革を強く推進してきた弊社としてはまさにわが意を得たりと感じる次第である。ただこういった事例はまだ一部のパワー・ユーザに限られているだけで、いまだに多くのユーザはMILスペックを昔からの固定概念で捕らえており、見方を変えていないようだ。国民性の違いもあるがDODは常により良いスペックを作るためには多くのユーザの見解や指摘を求めているのも事実なのである。
 
 
 DODにとっては一字一句も見逃さないこれら日本のパワー・ユーザの存在は「頼もしい」ものなのかもしれない。弊社では今後とも引き続きMILスペックに関するあらゆる問題について調査サービスを通じて明らかにしていくと同時に、これら修正あるいは変更された情報を従来情報と比較するプログラムを進化させ、ユーザが安心して変更情報の利用ができる環境を整えていくことが必要であると考えている。

弊社では今後ともより望ましいMILスペック環境の維持に鋭意努力し、また協力していく所存である。なおこういった事例は他のユーザにおいても決して例外ではなく、常時身近に起きる問題として日頃から切磋琢磨してMILスペックに接してもらいたいものである。