【MIL認定品が検査保留?】
2012.1.15
QPDの青信号・黄信号・赤信号の意味
青信号だと思ったら赤信号に変わっていた。MIL認定品を購入したところQPDは赤信号だった。これでは検査保留となり解決が遅れれば生産ラインの停止にもつながる大問題に発展する。こんな経験を持つQPDユーザも少なくない。そこで今回はQPD-赤信号事例をもとにその理由を解説する。MIL認定品は決して青信号ばかりでない。ユーザは常時このことを注意しておく必要がある。(DCメール 2012年1月15日 No.309)
■QPDの青信号、黄信号、赤信号とは
一般にMIL認定品の有効期間は2年間である。特例として潤滑材のように5年の有効期間の製品分野もある。有効期間が切れる前に、メーカは再認証手続きをしておかなければならない。上記で紹介した赤信号(RED)のようなケースは有効期限切れにより赤信号になったものである。
DODはQPDの特長として認証済は青信号(GREEN)、認証要黄信号(YELLOW)、認証切れは赤信号(RED)を明示することで当事者(認定品メーカ)やユーザにその旨を知らせている。その意味では、以前青でも今になって赤に変わることは往々にしてあり、実はこの信号表示はこのように状況の変化を知らせるのが目的でもある。REDとして認証切れ(overdue)の製品は認定品ではないので検査で合格とはならず、保留扱いとなり認定品扱いとはならない。そのため、ユーザは急遽DODあるいはメーカにその旨を確認しなければならない。(注)弊社では調査代行業務を行っている。詳しくは下記を参照。
DODは2006年からQPD( 認定品データセット )と称し、従来からの紙媒体やそれを電子化したPDFのような媒体のQPLやQMLをやめて、新しく認定データセットと呼ばれるデジタル・データに変換してリアルタイムに認証情報の提供をするようにした。
QPDがQPLやQMLと違う点のひとつとして認定メーカ情報として赤、黄、青の信号機( Signal )をイラスト付きで紹介していることにある。ユーザはこれらの信号機を見て「現在ソースが有効である」か「期限切れである」かを判断することができる。これは認定品として登録されていても保証期限が切れていれば認定品として認められない。認定品を調達する資材部は発注前にしっかりとこの点を見極めておかなければならない。
弊社が扱ったケースはまさに納品時に当該品が「赤信号」であることがわかり検査保留扱いとなった。そこで調査依頼を受けた弊社では本件を調査するために当該QPDを管理するDOD担当ならびに「赤信号」になっている認定品メーカにその真偽を質した。その結果、その認定メーカは即時にDOD担当に説明することで再認証手続きをとることができた。
ところで「認定に値する5つの条件」を満たしていれば認定品としてDODにより再認証(Recertified)される。事故原因の多くは認定品メーカが認証更新を怠ったことが挙げられる。また、DOD側との意思の疎通ができていないケースもある。認証更新は定期的に行われ、メーカは引き続き認定品として登録することを望む限り、再認証のための監査を受け、更新情報の手続きをDODに行わなければならない。DODによれば認証手続きはすべてメーカ責任ということになっている。
DODによる「認定業務」( 認定に値する5つの条件 )とは次のとおりに定義づけられている。これらに該当していれば認定品メーカあるいは認定品として評価される。
1.メーカや代理店など取得業者による物品やプロセス、部材などを検証し、試験を行うこと。
2.MILスペックの要求に合致しているかを決定すること。
3.取得計画に先行しているか、独立しているかを検証すること。
4.認定品とはDODの認定要求に合致した物品( や役務 )である。
5.認定企業とはスペックの要求に合致した物品( や役務 )を製造する認定された製造工程や過程、材料をもつ企業を指す。
なお、DODはこれら認定に関する業務を特定な機関あるいは団体に委託している。これらの機関や団体では特定なMILスペックに基づき、その品質管理機関からの依頼に基づきメーカの認定品認証作業を代行している。
ところでMILスペックに適合した認定品情報は従来はQPLやQMLと言われており、DODによれば800件近く存在したが、徐々にQPDに切り替えられている。切り替える理由は上記のようにQPLやQMLを発行していては認定品情報の変化やスピードに追いつかない事情と発行コストの問題があった。
一方認定品の調査精度を高めることはユーザ企業の信頼性を高める
ことにもなる。ユーザ企業が認定品を取得することは取引先との信頼関係を強化することになり、安定した装備体系すなわちレディネス(即応性)の実現を可能にするからにほかならない。そこでこの認定品の取得に関して弊社の過去の調査事例から参考までにメーカ責任やユーザ責任が問われることを紹介する。
■取得ユーザは認定受領の責任がある。
SAE-AS5272Aは材料認定要求をしている。当該項には潤滑剤はこのスペックの下で適用可能な認定品目表( PRI-QPL-AS5272にて供給されるものとするとあり、さらにこのQPL要求は発行日( 2005年7月 )の2年後に有効であるものとするとある。当該スペックのPRI-QPLは2007年12月31日まで発行されない。AS5272BがPRIによって認定されるまでの間取得ユーザは取得製品の認定受理に責任をもたなければならない。
■当該パーツ番号はQPL承認されていない。
パーツ番号XXXXはMIL-DTL-53039Bの認定品として当該メーカは認定済みと言っているDODは認定書を送付していない。なお認定書が交付された後、当該製品は次回のQPL-53039更新版にリストされる。現行版( QPL-53039-22 )には当該番号XXXXはリストされていない。そこで認定されるまでの間取得ユーザは取得製品の認定受理に責任をもたなければならない。
■取得ユーザはメーカに認定証の提示を求めることができる。
QPL-81706に認定された最新版スペックに対応した認定品を取得したいと考えており認定品情報( 製品名、メーカ名等 )の確認は当該メーカは正式認定書( Letter Of Authorization ) を持っていることに留意すべきである。メーカが認定資格を与えられたことを保証するQPD上でリストされていなければ、ユーザはその認定書の提示をメーカに要求することができる。
■取得ユーザにとってメーカ自身の回答は信頼度が低い
FED-STD-595は色指定の規格であるが、ある指定色を必要としたところ当該色はQPLに記載されていない。そこで当該色を既存の取得ルートで調査したところあるメーカの製品が認定品として該当し、認定番号が付与されているという情報を得たが、それだけで取得を決定することはできない。そこで公的機関(DOD)のエビデンスが欲しいとのことで当メーカから認定を受けているエビデンスが提出され、またDODもその事実を肯定した。これによりユーザは安心して当製品を認定品として新たに取得することができる。
■弊社による認定品調査サービスの利用
弊社の認定品に関する調査は多くのプライム・ユーザにとって非常に重要度が高くまた慎重に扱われている。その理由は認定品調査の場合ユーザ企業にとっては認定品であるか否かが取引に重大に関与し取得業務に多大な影響を与えるからである。未登録でも認定されているというエビデンスが入手できるのならば取得可能であるというケースがあるからである。とくにMILスペック認定品の場合、認定品メーカ自身が自社製品が認定済みと回答してもプライム・ユーザの意思決定機関からすると信用度や精度は低く、DODなどの公的機関による認定認証がないと使用できないとしている。弊社による認定品調査は直接DODなどの公的機関からの回答を引き出してくれる点で精度が高いと評価されるのは、将にこれらユーザが求める回答を提供することによるからである。
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