DataCraft

Topics

アメリカ国防標準化政策の現状と問題点ー第2回

2007.2.7

前回に引き続きまして、日本防衛装備協会による会員誌「JADI」の2006年12月号と2007年1月号に本稿が掲載されましたので、その内容を紹介させていただきます。なお当メールマガジンの性格上、掲載される表や図につきましては省略いたしますが、ご希望の方は別途ご要望ください。

統合標準化委員会(JSB)の設立について
従来まではDODの各機関に独立した標準化委員会があったが、DSPOが中心となって全軍として統合化することでより効果的な標準化政策の立案と運営がなされ、調達仕様書や規格の統合や連携あるいは取得や調達計画など後方支援の合理化などが推進されている。国防標準化政策(DSP)の目的は「コスト削減と業務効率の改善」であり、パネラーも「我々のビジョンの実現は改善された統合軍や有志連合軍の共同運用性など個々の結果の証拠によって特徴付けられよう。」としている。
              
DSPOの組織は陸海空軍とDLAおよびDOD外部の関連機関を統合する全軍的な組織形態をなしている。そこで従来までは各軍による個別政策により制定されていたMILスペック等標準化文書も現在では統一化されている。

DODは新たに統合標準化委員会(JSB:Joint Standardization Board)を設立し、具体的な政策を実行するDSPOを補佐する立場として各部門の専門家から構成されている。またJSBは統合標準化草案として次のようなワーキング・グループを創設し、具体的な事例を挙げてその成果を掲げている。
■ 統合一貫輸送(Intermodal)ワーキング・グループ
■ 戦術シェルタ(Tactical Shelter)統合委員会
■ 国防バッテリー(Battery)技術ワーキング・グループ
■ 国防半導体部品(Microcircuit)計画グループ
■ 統合移動電力(Electric Power)装置
■ 国防ヒューズ(Fuze)・エンジニアリング標準化WG
■ 国防医療(Medical)標準化委員会

そこで次に、事例としていくつかのワーキング・グループの活動を紹介しよう。
例―戦術シェルタ統合委員会(JCTS)の活動報告
戦術シェルタ統合委員会(JCTS:Joint Committee on Tactical Shelters)はテロの脅威から米国を守るために陸海空やDLAなどが一体化して核などを含めて想定される戦略シェルタ(TS:Tactical Shelter)の構築、運用についての統合標準化政策を推進している。
なかでもTSは識別されるさまざまな「脅威」からグループやシステムを防御・保持するものとして、その必要性が唱えられていることに注目したい。その「識別される脅威」は次の通りである。
■ 環境による脅威
■ 探知による脅威
■ 人的要因による脅威
■ 核・生物・化学(NBC)兵器による脅威
■ 弾道による脅威

またTSの事例として各種シェルタやテントがこれら現代の脅威から兵士やシステムを保護するが、今後は統合されることでより効果的な戦闘を可能にするとしている。現在、日本においてはミサイル防衛システムについての論議が高まっているが、本稿の立場としてはこのような核シェルタや防御テントなど十分な防護システムの構築や配備も視野に入れてもらいたいものである。

事例―コンテナなど一貫輸送の統合委員会(JSBIE)の活動報告
一貫輸送(コンテナ)の統合委員会(JSBIE:Joint Standardization Board on Intermodal )は陸海空軍におよぶ一貫輸送としてコンテナ輸送の統合化についての活動報告があった。現在の統合システムは各種サイズのコンテナが組み合わされ、また個別に利用されているが今後はより自動化されたシステムにより作業の削減が期待されるとしている。

また統合モジュラ・一貫輸送システム(JMIDS)が検討されている。これは統合性能技術表示(JCTD)と呼ばれ、すべてのコンテナやプラットフォームが自動識別技術(AIT)により前線に対してリアル・タイムでシームレスな情報を表示・分析しデポやメーカから前線基地に対しての効率的で連動した一貫輸送体制を可能にするものとしている。

事例―電源(パワー・ソース)システムの統合化(PS2)活動報告
急増する電力やエネルギー需要に対応するための統合的な小型化、軽量化を図るためのパワーソース・システム(PS2:Power Source System)の標準化政策の活動報告である。PS2の要因としてはそのほか、安定かつ対応能力のある供給源の確保や環境にやさしいパワーソースの必要性が挙げられる。PS2の問題点として現在5000品種以上にも上る品目があり、これら多品種、且つ軍事専用の特注品の維持管理はコスト効果に逆行しているとしている。また、PS2では写真を掲げていかに多品種のバッテリーがDODに在庫されているかをアピールした。
事例―軍用超小型電子回路の統合化(DMPG)活動報告の事例
国防超小型電子回路計画グループ(DMPG:Defense Microcircuits Planning Group)では統合化の事例として標準超小型電子回路図面(SMDs:Standard Microcircuit Drawings)やMIL-M-38510からMIL-I-38535やMIL-H-38534への移行、QPLからQMLへの転換や対外問題そしてMIL-PRF-38535やMIL-PRF-38534への取得改革などを問題として取り上げている。またモノリシックICの標準化問題(MIL-PRF-38535)やハイブリッドICの標準化問題(MIL-PRF-38534)、半導体部品の標準化問題(MIL-PRF-19500)、認定業者問題(QML)など多くの重要課題を取り上げている。

以下ー次号へ