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アメリカ国防標準化政策の現状と問題点ー最終回

2007.2.7

前回に引き続きまして、日本防衛装備協会による会員誌「JADI」の2006年12月号と2007年1月号に本稿が掲載されましたので、その内容を紹介させていただきます。今回が最終回です。なお当メールマガジンの性格上、掲載される表や図につきましては省略いたしますが、ご希望の方は別途ご要望ください。

        
パネル・ディスカッションー3.標準化システムの強化
現在DODは国内外に対して標準化政策の統合を図り、標準化システムの共同運用を推し進めている。たとえば3万件にもおよぶMILスペック等標準化情報の最新版は、現在3箇所のインターネット・サイトから自由にダウンロードできるようにシステムの構築を図っている。これら複数のサイトでは特色のある機能が備わっていて各々ユーザの便を引き出している。
ASSIST-ONLINE
DODは1990年代後半にインターネットの普及に乗じてASSISTを立ち上げたが、直接関連する各機関や民間調達企業のユーザが大挙して利用したために大量の負荷が発生し、これにより多くの問題が発生した。そこで「ダウンロード主体のユーザ」を別サイトに移す計画を立てることでASSIST本来の機能を維持し、向上させることにしたのである。
現在ASSIST-ONLINEと呼ばれるこのサイトはユーザ登録とパスワードによるログインが求められており、これら標準化統合ユーザ向けに新しい機能が強化された。なかでも今回構築された認定品データベース(QPD:Qualified Products Database)は今後の国際的な後方支援活動を維持・強化する上でも大変重要なデータベース・サービスとなろう。
ASSIST-QUICK
MILスペックをダウンロードしたい一般ユーザ向けのサイトで、ログインについてはIDやパスワードは不要である。ただし検索機能は単純でMILスペックを扱うパワー・ユーザにとっては物足りない内
容となっている。
ASSISTDOCS.COM
MILスペックを発行するDSPOが自ら運営するMILスペック・ダウンロード・サイトであり、パワー・ユーザ向けのスペック・サイトとして検索機能が充実した、豊富で使いやすいサービスとなっている。DSPOはMILスペックのダウンロード奨励サイトとして強化している。
注:なお弊社ではDSPOの意向を取り入れ、assitdocs.comサイトを日本のMILスペック・ユーザ向けに推奨している。
認定品目データベース(QPD)の構築
認定品目表(QPL:Qualified Products List)と認定業者表(QML:Qualified Manufacturers List)は、MILスペック・ユーザにとっては欠かすことのできないMILスペック情報であるが、このたび時代の要請に合わなくなったために廃止され、新たに認定品目データベース(QPD:Qualified Product DataBase)が迅速で包括的なデータベース情報として誕生した。これまでDODは取得改革(Acquisition Reform)の一環として取得業務の迅速化、効率化を推進してきたが、従来のQPLやQMLの改訂プロセスではもはやスピード的に現代の取得計画を支援することが困難になってきた。
即ちQPLやQMLは認定品や認定業者が変更されるたび逐次的に(シーケンシャル)に改訂版が発行されてきたが、発行プロセスに手間隙がかかるなど、実際の物品情報や業者情報とのギャップが常時問題化していた。改訂版が発行される頃にはすでに認定品や業者が変更されているという現実があったわけである。そのうえQPLやQMLを更新するためのコストも度重なる改訂で増加していたことも大きな要因であった。
DODによれば現在のQPLは749件、QMLは5件、合わせて754件が存在している。DODは各部門別に認定品や認定業者の審査を行いデータの公開を行ってきたが、これらQPL・QMLにおける「認定業務」の定義とは次の通りである。
1.メーカなど調達業者の物品やプロセス、部材などを検証し、試験を行うこと。
2.MILスペックの要求に合致しているかを決定すること。
3.取得品として先進性、独立性が保たれているかを検証すること。
DSPOの認定業務ワーキング・グループ(QWG)では人員の削減や同時認定データの生成を目標に、21世紀における自動化されたDOD認定プロセスの創生を提唱してきた。DSPOはこれら認定作業のオンライン・データベース化を目標に、ユーザ・ニーズに合致した各種認定作業の調査、設計、構築を行い、認定品目データベースQPD:Qualified Products Database)として2006年4月3日から正式稼動した。
         
この結果QPLやQMLは徐々にQPDに移管され、認定データセット(QDS)と呼ばれるデジタル・データに変換されてQPDとして使用可能となる。またその際にQPLやQMLを入手していたダウンロード・サイトでは変換通知(Transformation Notice)が掲載され、QPDデータベースの利用が指示されることになる。
総会に出席して
今回のDSP総会はDODの各機関や海外諸国との統合化(CONSOLIDATION)や連携強化(JOINT EFFORT)といった政策を相次いで打ち出し、また新しい標準化ツールなどを構築して積極的に業務の効率化と統合化を推進していることをアピールした。アメリカはこういった連携強化や統合化が今後とも世界各地における紛争解決あるいはテロの撲滅のために、もっとも効果的な後方支援策(ロジスティック・サポート)になることを信じて疑わないからである。
なかでもDODの標準化文書であるMILスペックを中核として関係各国の標準化文書との連携や統合化は、世界の国防標準の担い手として自負する「パックス・アメリカーナ」にとって最優先課題である。
しかしながら一方では標準化統合計画を遂行するための十分な時間や人手および予算が削減されており、その結果具体的な業務計画が遅れていることが問題視されている。また地味な活動であるがゆえにDOD自体や政府高官の意識の低さや認識不足がDSP責任者らの不満の種となっている。こうしたジレンマを抱えてのパネラーによる報告は、逆に多発する国際紛争やテロ活動へのアメリカの使命感といった意識の高揚や熱情といったものを強く感じさせた。
またアメリカは標準化統合活動を通して各国との意識の違いを感じている。例えばアメリカは「規格とその利用」について各国を例に挙げて「文化の違いにより解釈が異なる」ことに苦慮している。それは例えば、規格においてアメリカは禁止されている以外は許可されると解釈するが、ドイツは許可される以外は禁止されると解釈する。ロシアは許可されても禁止されるとしている。またフランスは禁止されていても許可される」と解釈するとしている。
アメリカの国防標準化政策(DSP)はNATOやABCAおよびEUにまたがる2重3重の対外諸国統合計画でもある。しかしアメリカのいう「国防標準の国際化」とは英語圏諸国やヨーロッパ諸国を意味しており、少なくとも現在までのDSPでは日本を含むアジア諸国については言及をしていない。
標準化とは共通化、一元化である。防衛に関する他国との共通化は文化的にも、政治的にも非常に困難であり、アメリカはそれを超越して「侵攻」している事実はアメリカ以外の各国の共通した問題意識があるからである。アメリカは二国間あるいは多国間として日本を含む東アジア地域に同様な標準化統合政策を展開するはずである。それがアメリカにとって真の標準化統合政策(JS)となるからである。
注:2006 DOD STANDARDIZATION CONFERENCE MAY 23-25,
2006 THE WESTIN ARLINGTON GATEWAY ARLINGTON, VA
ー完ー