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NCB設立に向けてーを読んで。

2009.5.17

 NATO AC/135委員会による「NCB設立に向けて」(How to establish a NCB)を改めて読んだ。わが国は兵站分野における専門家が不在である。そのために世界のロジスティックス(兵站)システムの現状について官民の意思決定機関に対する圧倒的な説明不足が現在のこの国の現状を容認している。ここではその動機付けのために世界の主要56カ国がすでに採用、運営しているNCBについてその設立のためのステップを紹介する。

 わが国がNATOが主催する国際標準の兵站情報システム(NCS)に加盟するためには、たとえそのエントリー・レベルであるTIER1であれ、少なくとも自国にNCB(National Codification Bureau)設立のステップが必要である。ちなみにNCBとはNATO加盟国はもちろん、賛助国が自国内に設立し、あらゆる防衛装備品をNCS手順で整備統括する機関である。NCSとはあらゆる無駄(経済的、時間的、地域的)を排除した効率的な兵站装備品システムとして、すでに世界の主要56カ国が採用している国際標準の装備品データベースである。
 注: コディフィケーション(Codification)とは、あらゆる装備品を13桁の数値(NSN)で表現することで、装備品のすべての要素(目的、用途、材質、仕様、管理、など)をコード化して、類別、識別できるように統制した兵站情報の国際標準とされるもので、米国ではカタロギング(Cataloging)と呼ばれ、1952年にFAR(Federal Acquisition Regulation)として法制化されている。
 また、米国では自国向け兵站情報システムとしてFLISが存在するが、米国はNATO加盟の主要国でもあり、またNCSの生みの親でもあるためにDLIS(Defense Logistics Information System)にNBC機能を設立している。なおDLISはDODの兵站機関であるDLA(Defense Logistics Agency)の主要兵站情報機関であり、FLIS(Federal Logistics Information System)も管理運用している。
 さて、NCB設立には次の8ステップが必要であるとされている。
1.NCBの必要性に精通し、その手順や利益についてはっきりと意志決定者に説明すること。
 そのためにはコア・チームを結成し、また広く見聞を広めることが必要である。
2.NCB設立のために意思決定者(Senior Decision Maker)の承認が重要である。
 また関連機関の支援や協力は欠かせぬものなる。
3.NCSの概念、技術要求、実施に対する深い理解が重要である。
 そのためにはNATO諸国のNCBへの視察や訓練に参画することが望まれる。
4.現実的なカタロギング手法やライフサイクルにおける装備品データの運用等の分析が必要となる。
 ワーキンググループの結成や識別手法の文書化が望まれる。
5.具体的かつ詳細な実施方法の具申と承認。
 装備品の必要度合いや在庫などの観点から具体的なNSNの割り当て作業が必要となる。
6.法的責任機関としての設立準備
 法的責任を明示したNCB組織の設立がなされなければならない。
7.変更手順の識別と確立
 カタロギングの役割や要求を明示するための文書や機能ダイアグラムの設定や変更
8.NCBインフラと目標設定
 NCS利用開始に先立ち、効果的な運用のためのBASELOGプログラムの活用
 このようにNCSに加盟するということは、例えTIER1(TIER1とはNCSシステムの運用のみが認められるレベルで、自国データのNCSへの登録、相互運用、共有はTIER2レベルとなる)として加入するためには大変重要なステップを数多く踏まなければならない。
 しかし、そこまでしてわが国はなぜ今必要なのかと問われれば、まさに米国主導で始まった兵站改革は瞬く間に世界を席巻し、大小多くの国々が同調あるいは賛同する「世界の防衛装備品の一元化とその共有」にあるからである。小さい国々は自国で装備品生産が叶わず、すべてをNCSデータベースに委ねることになる。また主要国になれば自国品をNCSに登録することで自国はもとより世界の国々で使用されるメリットをもつ。その結果装備品取得に纏わる不正取引や不良品、過剰在庫がなくなり、適正な兵站政策が可能となるためである。
 
 
 最近、国内装備品市場では韓国製部品が目立つようになってきた。近年、中国はNCS加盟に消極的であったが、ここにきて積極的に加盟意思を表明した。その中国を韓国は教育支援しているという。あのトンガという小国でさえTIER1国として立派に防衛装備品の標準化を達成している現状をみると、わが国は兵站分野や防衛標準化政策においては大きな隔たりができて、孤立化してしまった。その理由は明らかである。
 冒頭でも書いたようにわが国は兵站分野における専門家が不在である。そのために世界の兵站システムの現状について官民の意思決定機関に対する圧倒的な説明不足が現在のこの国の現状を容認していることに他ならない。