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MILスペックと上手に付き合う方法

2010.1.3

新春MILスペック講座 

MILスペックに不明点が多々あり、解決しないまま次工程に進んでしまうことが多く担当として不安が残るという話を以前に紹介したことがある。この話は結局のところどうしたらMILスペックと上手に付き合うことができるかということに尽きる。そこでDCメールの新春第一弾はこのことについていろいろな視点から見つめてみた。初心者も含めてMILスペッ クを学ぶユーザは是非参考にしていただきたい。【DCメール】 2010年1月1日号 NO.260

■MILスペックと上手に付き合う方法
 MILスペックに不明点が多々あり、解決しないまま次工程に進んでしまうことが多く担当として不安が残る。このような声が弊社に届いた。弊社のスペック調査サービスでは毎日のようにこのような疑問や不明点の調査依頼がぶつけられてくる。そこで弊社ではこれら問題は日頃からユーザがどのようにMILスペックに対して付き合っているのかということに尽きるのではないかと思う。
 
 
■MILスペックは装備品取得に関わる契約文書のひとつである。
 たとえばある装備品の取得をする場合、かならず複数のスペックあるいは その同等スペックが引用される。それはMILスペックが別のスペックを引用する形式を取っているからである。スペックは契約時点の最新版を使用することが義務付けられているから引用スペックも契約時点に合わせてあるいは契約の相手先の意向に合わせて適用する版を統一して臨まなくてはならない。また契約当事者同志にとって望ましいことであればどんどん新しい版を適用できるから絶えず最新版を追いかけていくことが大切とされている。
 
 
■内容の変化に疑問をもつことが大切である。 
 ユーザは必ずスペックが何故最新化され改訂されまたあるときは代替され廃止されるのかという疑問にぶつかる。最新版はその時代を反映しまたその時々の流れを組み込んで大きく変遷していく。また「するものとする」から「することができる」というようにスペックの解釈の度合いも変化している。一般的にスペックには必須条項と参考条項が織り込まれており、その2つを区別しなければならない。また民間スペックに代替されると、スペックを形作る文化も大きく変りまるでまったく別のスペックになってしまう。そのうえスペックの記述には一定の約束やルールがあるので当然ながら記述される単語や節の定義づけは必須となる。また改廃文書の種類や形式も知っておく必要がある。
 
 
■自分の考えが容認されているかを求めることは何よりも重要である。
 ふつうユーザが求めるものとは、自分が考えていることが容認されているか否かを知ることにある。しかしながら現実問題としてスペックには謳ってはいない。そこでどうしても自分が正しいのか否かの確認をしなければならない。巻頭で述べた不明点がありながら次工程に進んでしまい担当として不安が残るとはまさにこの点を指している。この場合自分の見解と制定元の見解を一致させることが何よりも重要である。悔いが残る解釈は場合によっては取り返しがつかない問題を抱えることになりかねない。
 
 
■スペックの記述は決して完ぺきではない。
 しかしそのうえで誤記の問題はこういった問題を越えて存在する。悠に3万件を超える膨大なMILスペック分野には大勢のDODスタッフが専門分野に配置されてスペックを作成し改訂する作業を行っている。しかし一方では彼らはまたユーザからの疑問や質問に対して助言や回答を与えている。これらの助言や回答、解説などは公式見解としてユーザの取引契約条項に深く絡んでくるので大変重要な業務となっている。中でも誤字脱字などの初歩的な問題で苦しむユーザも数多くあり、早期に解決をしてあげる工夫が必要となろう。
 
 
■新旧比較はユーザにとって必須である。
 ユーザが頻繁に直面する問題として改訂された文書が旧版と比較した 場合に起こる様々な違いである。スペックが改訂された場合その仕様 内容や数値がどのように変化したかを知ることはもっとも重要である。そこでユーザはその問題発見プロセスにおいて多くの疑問や質問が生じるが多くの場合解決しないまま次工程に進んでしまうケースが圧倒的に多い。この習性はできる限り改め、とことん追求してみることが理解をするうえで大切である。弊社が知る限りこれらの問題を着実に撲滅しているユーザは総じて効果的なスペック運用につなげているからである。
 
 
■MILスペックは無くならない。しかし変化している。
 MILスペック改革によってMILスペックが無くなるというウワサ が立った。しかし実際は無用なスペックは廃止し、必要なスペックはあたらしい形式で存続させるというものである。確かに一時的にその数が減った時期があったが現在では定着しその中でどんどん新しいスペックに切り替えられている。これらの新しいスペックは従来のスペックと比べると大きく異なる。いわゆる性能重視型スペック(PRF)である。この新旧の比較を詳細に行うことがスペックの理解に大きく貢献する。
 
 
■MILスペックが民間スペックに代替された時問題が起こる。
 一般にMILスペックがキャンセルされて民間スペックに代替される と文化が変わると考えるべきである。そのためにMILスペックは一定期間無効(インアクティブ)とされ、また代替されたあともしばらくは形は民間スペックでも中身はMILスペックのままである。これはまったく新しい民間スペックの誕生の準備期間とも受け取れるが、二つの異文化の違いを正確に捕捉することがまずは求められる。DODが言うようにMILスペックの責任は国が取るが民間スペックの場合はメーカ責任が問われる。そのような異文化が双方には存在することを知っておかなければならない。
 
 
■スペックの変化は部品番号体系にも影響する。 
 ところでスペックが改訂されると部品番号も変更される場合がある。特にMILスペックから民間スペックに移行される場合は全面的に新しい部品番号体系になる。これら部品番号のつけ方は形状や大きさ、材質などにより定義づけされるが、MILスペックと民間スペックでは体系が異なる場合が多い。スペック更新がスピードアップした現在では部品の更新情報もスピード化が求められており、発注業務にも支障をきたすことになる。
 
 
■海外メーカとの受発注トラブル
 部品発注に関しては旧版とは知らないで部品発注して最新版部品が納品されたケースが後を絶たない。特に海外メーカとのトラブルでは検査部門が受け入れできない。その結果生産ラインに影響しかねない問題となるが海外メーカにクレームをつけても対応してくれない。こういう場合、DODのスペック制定元からの公的資料を入手することで問題解決をすることができる。しかし多大な時間とコストは引き合わない結果を招くことにもなり新旧部品番号の管理、スペックの改廃には十分目を光らせておかなければならない。
 
 
■リアルタイム化するMIL認定品
 MIL認定品のタイムラグ撲滅のためにQPLやQMLが徐々に減り、QPDが急激に増えた。このことはDODの求めるリアルタイムな認定品取得が実現しつつある。ただし折角のQPD運用においても証明信号(青黄赤ランプ)の誤認や更新の遅れがある。ユーザにとって認定品取得は必要不可欠である。認定品の受発注業務にQPDの運用と再確認を徹底する努力は不可欠となろう。
 
 
■とにかく気になることは全て解決すること。
 最新版スペックを適用する場合、問題点をいくつかに体系付けすることが「読みこなす」上で大切である。ふつうユーザが求めるものとは、自分が考えていることが容認されているか否かを知ることにある。しかしながら現実問題としてスペックにはそこまで好意的に謳ってはいない。それどころか、誤字や脱字あるいは間違った数値、言い回し、表現など論理的におかしい条項も見受けられる。そこでユーザは一字一句丹念に理解をしながら、改版や移行の理由、旧版との内容の違い、そしてその結果どのような問題があるのかを提起しなければならない。MILスペックも民間スペックも制定元では自分たちが制定したスペックに関する問題を解決をする義務と責任がある。制定元で作ったスペックは制定元に聞くのが一番である。とにかくユーザは疑問に想ったことは何でも聞くことを勧める。弊社ではこれらユーザが上手にMILスペックと付き合うための各種支援サービスを展開している。詳細は別途資料をご依頼ください。