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新たな国際活動と標準化戦略 

2010.4.19

ーわが国の防衛標準化とロジスティックスー
 かねてからわが国の航空・宇宙機分野の標準化活動はMILスペックや海外航空機メーカのスペックに依存してきたために自ら整備する意識が不足しており、今後ともデファクト標準としてのMILスペックを常時把握できるようにモニター態勢の整備を検討する必要があると言われてきた。一方、わが国は韓国やオーストラリアなどが既に正式運用しているNATO装備品DB(NCS)を導入検討し、ようやく世界の一翼を担う事態になることが予測されている。このような環境のもと弊社ではわが国の防衛産業の健全な育成と新たな国際活動への積極的な参加を念頭に海外ロジスティックス情報や技術標準情報の運用支援の立場から民間企業として各関係機関との情報共有と数々の提言をおこなっている。

デファクト標準であるMILスペック・モニタリングの強化
日本工業標準調査会編「航空・宇宙機技術分野における標準化戦略」によると、わが国の航空・宇宙機分野の標準化活動は従来からMILスペックや海外航空機メーカのスペックに依存してきたために自ら整備する意識が不足しており、今後ともデファクト標準としてのMILスペックを常時把握できるようにモニター態勢の整備を検討する必要があると提言してきた。
日本の防衛・航空宇宙産業では必要スペックが改訂されるたびに内容を精査し、部品や材料の購入(調達)を決定しているが、現実には受入れ検査時に異なる版による納品問題が発生している。また使用できなくなった旧版スペック部品や材料が倉庫に大量に眠っている実態がある。また取引先から「情報の遅れ」を指摘されたり、認定品が中止されたことを知らずに発注したり代替品の納期遅延を招くなど、スペック管理はもとより部品管理や資材調達にかかわる諸問題の要因となっている。
またMILスペック特有の内容や構成に慣れていなく、外国語に不慣れなスペック・ユーザがいることも現実の問題である。スペックに記述された言葉のひとつひとつを理解し、正確に把握することが求められるユーザにとって改訂により生じる見解の違いや表現の違いに十分に対応する暇(いとま)はない。これらスペックの内容や改訂にまつわる技術的な解釈問題はユーザの潜在的な問題として業界全体のテーマでもあり、結果的にユーザ企業の潜在的なコスト要因となっている。
永年にわたり公共スペック・コンサルティング・サービスを手がけてきたデータクラフトでは、1999年に米国防総省(DOD)がインターネットにMILスペックを開示すると同時に常時MILスペックを監視(モニタリング)しており、その結果生成された各種データやDOD等からの専門情報をタイムリーに防衛省やプライムベンダ、サブコントラクタなどに幅広く提供して高い評価を得ている。今DODは改めてMILスペックの再活用(Revitalization)を指示しており、わが国にとっては恒久的なデファクト標準であるMILスペックをより一層監視し、整備していく必要がある。
次世代ロジスティックス情報システムの新たな展開
一方、わが国は韓国やオーストラリアなどが既に正式運用しているNATO装備品DB(NCS)を導入検討し、ようやく世界の一翼を担う事態になることが予測されている。米国FLISを基軸とするNCSは既に1600万件を超える装備品(Materiel)の技術仕様や特性値を有しており、また近年国連物資をも統合した。世界50余国が採用しているこの装備品DBはわが国にとって取得業務の迅速化やコスト削減を達成するツールとなるだけでなく国連平和維持等海外活動に大きな弾みをつけるものとして期待される。わが国がスポンサー国として加盟した場合、防衛産業のみならず多くの産業がこぞって登録し、わが国の製品がもっと世界の国々に取得される可能性をもつようになる。これは停滞する国内産業にとっては輸出拡大策として大いに喜ばれる可能性がある。
ところでDODやNATOは電子商取引(EDI)での実績を元にFLISやNCSに登録する企業や製品、役務などの電子カタログ・データを誕生させ、新たにISO 8000(データ品質管理)やISO 22745 (OTD)を軸にして登録させる認証ビジネスを展開し始めた。NATOはこれにより次世代ロジスティックス情報システムの構築と運用がより強化(迅速、正確そしてコストダウン)されるものとしてきた。しかしこのDODやNATOが推奨するISO22745とわが国産業界がすでに導入しているISO13584(PLIB)との共通化を出来るだけ早期に解決しておくことが必要となる。これはわが国が将来リードオンリーのTier1レベルはともかく各国とのデータ共有を前提とするTier2国になる場合の優先課題となろう。
現在、弊社ではこれらISO8000やISO22745、ISO13584などの今後における動向調査やわが国の防衛産業とその他国内産業界との情報共有に積極的に参加しており、また将来NATOスポンサーシップ加盟とそれによるNCS運用、NCB設立など多くの可能性ある課題についての研究に取り組んでいる。
当ニュース・ブログはこれらの研究や活動を通じて起こる様々な事象をタイムリーに取り上げて関係者や興味ある方々に情報発信していく。
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