DataCraft

Topics

【NADCAP監査マニュアルにおける90日ルール】

2011.2.1

ー公共スペックの最新版管理基準ー
NADCAP(国際特殊工程認証システム)は国内外の航空宇宙産業界向け部品・材料メーカに対して厳しい認証条件をつけている。なかでもその認証監査マニュアルには公共スペックの最新版管理は90日以内とするような条件を付加している。ところで米国には数多くの90日ルールの事例があるが、このように時間を制限することで目的意識をより高める狙いがある。ここではいくつかの事例を紹介しよう。(DCメール 2011年2月1日 No.286)

■NADCAP監査マニュアルと90日ルール
NADCAPは航空宇宙産業界における国際特殊工程認証制度で、容易にまた経済的に検査できないような例えば溶接や化学処理,被膜処理,熱処理,非破壊検査などの特殊工程に対する認証制度となっている。欧米では、ボーイング,エアバス,ロールスロイスやGEといった航空機メーカーが採用しその部品や材料メーカにもNADCAP取得を義務づけている。その検査に使用される監査(Audit)マニュアルのなかに、検査を受ける企業は公共スペックの最新版を90日以内に入手するものとする(熱処理担当部門)と記載していることに注目した。国内のNADCAP認証部品・材料メーカは大手の航空機メーカをはじめ全てがこの90日ルールをクリアしていると思われるが、これらメーカにとどまらず、これら部品や材料を使用する装置メーカやまた航空会社においても調達品として採用するためにはNADCAPは重要課題であり、これら部品材料の供給メーカと同等の公共スペック管理能力を維持することが要求されよう。
■その他の90日ルール
米国には多くの90日ルールなるものが存在するが、なかでもDODやFAA等の各省庁では規則や基準、規格に90日を目処とした取り決めが数多く存在している。90日は四半期を意味し、特に会計上、法律上において一つの重要な節目であることは間違いない。あらゆる局面で顔を覗かせるこの90日について、ここではその一部の事例を紹介しよう。
■FAAの安全指令(Safety Order:以下SOという)
2010年7月のアメリカン航空定期検査において2機の767型航空機のパイロン部分に亀裂が発見された問題で、米国連邦航空局(FAA)は従来より厳しい検査基準を発令した。それによると従来からのSOでは1500飛行回数ごとに亀裂検査をおこなうとしてきたが、今回の改訂では400飛行回数毎かあるいは90日毎のどちらか遅いほうを検査間隔として採用する方針に変更した。
■TSA(米国輸送安全局)に航空機修理工場安全性強化方針
2010年3月米国TSAはFAA Part.145に準拠した国内外のすべての航空機修理工場(Repair Station)の警備環境の強化方針を打ち出し
た。これによれば、TSAはFAAとすべての航空機修理工場に対して90日を以って全ての欠陥修理をおこなうものとする旨の通達を出した。また90日以内に修理が完了しない場合はTSAはFAAに対して欠陥が修復されたと決定するまでの間、修理工場の認可を保留扱いとする旨の勧告をだした。
■FAA検査権限申請書(Application of Inspection Authorization*IA)
現在使用されているFAA検査権限申請書(IA)には過去90日以内に検査権限申請を却下されたことがあるか、というような質問項目がある。航空機検査官はFAAによる検査権限の取得を必要としており、そのために申請書を提出し認定されなければならない。具体的には一定期間の検査経験やここに紹介したように直近90日以内に却下された場合は詳細な別途報告や関連情報の提供を要求されるのもとされている。
■AD(耐航空性改善命令)における90日ルール
FAAは航空機に重要な欠陥があるると判断した場合は修理・点検をして改善を命令する権利を持ち合わせているがこれをAD(Airworthiness Directives :耐航空性改善命令)というが、例えば90日以内あるいは200飛行時間のどちらか早いほうにおいて、機体の特定接合部分の検査ならびに注油を関連規定にもとづいて行わなければならないとしている。
■米連邦政府省庁間における90日ルール
米国政府の各省庁間における合意がなされない場合、修正通知を受理した日から90日以内に双方の長官は合意文書の終了をすることができるとした規則が適用されるとしている。
■国防総省における不正防止ホットライン(DOD Instruction)
米国防総省令のひとつであるDOD InstructionにDODホットライン・プログラムという不正防止条項がある。これは省内で発生した不正行為や管理ミスに対してホットラインを通じて報告された日から起算して90日以内に担当部局は調査完了し正式に関係各位に報告することが義務付けられている。
【お願い】
本誌の性質上、出来る限り日本語にしてお伝えしておりますが、適訳であるとは限りません。また、紙面の都合上全ての原文を引用できない場合があります。なお、本誌は参照情報源としてだけ使用されるものであり、完全性や正確さを保証したり主張したりするものではありません。また本誌に記載された内容を無断で引用または転載することは禁じられています。