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【APECとeOTD】

2012.4.15

ー議長国ロシアが多言語オープン辞書の必要性を表明ー
2012年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)議長国であるロシアは、加盟各国の技術的障壁問題を削減するための基準として、国際規格であるISO 22745(eOTD)に基づいた多言語オープン辞書を編纂する必要があることを表明し、加盟各国にその検討を依頼した。ロシアは昨年NATOのT2(ティアツー)国として認証され、NATO装備品DB(NSC)を通じて自国防衛装備品を世界市場に送り出す準備をしている。なおNATOはISO 8000(データ品質管理)とISO22745(eOTD)に基づく次世代装備品DBの実装実験を行っており、装備品データ登録作業の簡略化、迅速化並びに共通化を図る計画である。(DCメール 2012年4月15日 No.315号)

■APECとeOTD
2012年のAPEC議長国として、ロシアは地域経済統合を強化し、個人のセキュリティを確保し、ビジネスを促進する貿易及び投資の自由化を含め、フォーラムの目的を達成するために重要な貢献をしようと提言した。ロシアはまた参加各国(エコノミー)に、食料安全保障を強化し、輸送と物流システムを改善し、近代化の利益のために協力するなど、実用的な問題に焦点を当てることに意欲的である。APECによるとロシアの提言は次の通り。
物品は低コストによる製造と消費者への物流チェーンに沿ったうえで信頼性を強化することが国際貿易の重要な要素である。これは経済的に実行可能で安全な物品のサプライチェーンを形成する物流機関の様々な種類を調整し、最先端の情報技術や衛星ナビゲーションシステムと輸送のハブとコリドー(廊下)を提供し、輸送セキュリティ基準の調和が含まれる。近代化に関する協力はすべてのAPECメンバーの利益になる。このために革新的な開発のための有利な制度的環境を形成する方法に高度なノウハウを融合し科学技術やイノベーションにおける地域協力のメカニズムを作成する必要がある。
なかでもAPECの規格と適合性(SCSC)に関する小委員会では、議長国ロシアとして会議を開催し20カ国の代表が出席した。そこでロシアはAPECメンバー(エコノミー)間の協力の透明性を高めることの重要性を指摘し、昨年11月ホノルルに発表された規制協力の行動計画を実装する必要性を強調した。ロシアは技術革新と関連する貿易の技術的障壁を削減するために情報交換の役割を強調し、国際規格ISO 22745(eOD)(注1参照)に基づいた多言語オープン辞書を編纂し、XML形式でのAPECメンバーの技術規準や規格変換をするためのパイロット•プロジェクトを草案する必要があることを表明した。そして小委員会のすべてのメンバーがこの作業に積極的に参加することを招致した。なお他方ロシアは昨年NATOのT2(ティアツー)国として認証され、NATO装備品DB(NSC)を通じて自国防衛装備品を世界市場に送り出す準備をしている。(注2参照)
【注1】eOTD
近年インターネットの隆盛により電子商取引が拡大され、電子部品を筆頭にあらゆる工業製品の電子データ化が推進されてきたが、これら電子化されたデータは企業単位で行われてきたものであり、また国単位のものである。そしてそこには企業同士はもちろん国同士におけるデータ交換作業は多くの場合その自動化が困難であり、多くの労苦とコスト要因が付きまとってきたのである。ことさら米国装備品DBであるFLISやNATO装備品DBのNCSの場合は1600万件以上のNSNのひとつひとつの装備品データを組み込む作業は膨大なコストが見込まれてきた。そこでNATOでは主にDODが中心となって古くからこの問題を論議し研究を重ねてきたが、ECCMAとの協力によりデータの識別・類別作業における共通技術辞書であるeOTDの開発に成功した。
 
このeOTDはDODの傘下にある DLA Logistics Information Service( 旧DLIS )とECCMAの間で誕生したいわゆる異なった工業技術データ・フォーマット同士の交換や転換を可能にするアーキテクトをもち、膨大なFLISやNCSを維持管理するためのコストを大幅に削減する初めての官民が一体化した電子データ変換を可能にするプロジェクトである。このECCMAとの共同歩調により米国やNATOではeOTDの国際標準化を目論み推進することで、2008年にISO22745( 産業オートメーション・システム及びその統合-オープンテクニカルディクショナリ及びそのマスタデータへの適用 ー所謂eOTD)として誕生させることに成功した。また同時に従来からの品質管理規準であるISO9000に習い、データの品質管理基準としてISO8000( マスタデータ:特性データの交換:構文,意味符号化及びデータ仕様への適合 )を誕生させることに成功した。
 
ISOの技術委員会( TC )における新標準策定の活動はECCMAを筆頭にDODあるいはAC/135が中心となって各国メンバーと審議を重ねまたあるいは説得を重ねることで賛成を取り付けたとされている。そしてそこにはNSNを核とした世界の装備品DBの構築だけではなく、国際連合( UN )との協調による国連物資コードの取り込みをはじめあらゆる世界の商品、製品、装備品DBの構築を視野に入れた戦略構想が見え隠れする。今回のAPECへのeOTD運用の働きかけは、単にロシアによるものだけではなく、その背後にはセキュリティ・コアリションとしてのNATOの思惑といったものが感じ取れる。
【注2】新T2(ティアツー)国としてのロシア      
NATOのAC/135は装備品識別システムを運営するのための委員会組織である。AC/135のビジョンはワン・システム、ワン・グローバル・スタンダード、そしてワン・ワールドである。AC/135の記念すべき第100回総会は2011年11月8日ブリュッセルのNATO本部で開催され、40以上の国が参加した。 NATO装備品識別システム( NCS )は、もともと6カ国のグループで始まったが、今や世界最大の装備品データベースとなり、すでに世界の64カ国が参加している。NCSは現在新たな課題を持ってすべての装備品のデータ品質基準、データ交換技術、マスターデータ管理などの資産継承を行っている。そして今回の第100回総会ではロシアがT2( ティアツー )加盟を正式に認証され、ロシアは今や完全な装備品識別能力を身に付けたとされている。
なおここでT1(ティアワン)とT2(ティアツー)の違いについて紹介する。T1 はエントリ・レベルとしてNCSシステムへの理解と運用が認められるレベル。いわゆるNATO参加資格者にはすべて与えられるレベルである。現在T1国の多くは自前で装備品製造が伴わない国か、また今後T2を目指す国である。T2 はNATOが審査して他の諸国と同様にNCSシステムの共有と自国装備品の登録が認められる。例えば今回のロシアのようにT2レベルになるとNCSを通じて他国から代替品調達の機会が訪れる。現在T2国は米国や英国、フランス、ドイツといったNATO主要国と韓国やオーストラリア、シンガポールなど共通した防衛装備品の生産と物流を相互に行っている。なお、わが国は昨年ようやくT1に加盟した。しかしわが国が生産する装備品をNCSシステムに登録するためにはT2になるための審査に合格しなければならない。
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