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【PSMガイドブック】

2012.8.15

ーPBLガイドブックの改訂版ー

2005年米国防総省(DOD)から発行されたPBL(パフォーマンス・ベースド・ロジスティクス)ガイドブックはわが国のPBL政策に大きく貢献したPBLの実践ガイドであったが昨年の4月に一新されその名もPSM(プロダクト・サポート・マネージャ)ガイドになった。そしてこのPSMガイドからはPBLという文字が消えたのである。PBLはどこへ行ったのか、また新しいPSMとは何か、また何故変更されたのか。今回は多くのPBL実務者からの要望に答えて以前紹介した続編として改めて紹介する。(DCメール 2012年8月15日 No.323)

■PSMガイドブック
米国防総省(DOD)はPSMガイドブックのなかで、改めて即応性の強化と優れたコスト管理の双方に焦点を当て、プロダクトサポート(PS)という新しい概念の元で改善し続ける必要があると力説している。 
2008年DODはロジスティクスや装備品の即応性のためにプロダクトサポート査定チーム(PSAT)と呼ばれる政府高官や産業界、学界からの代表者によるグループを結集し、PSを如何に改善すべきかを論議してきた。そして2009年11月に兵器システム取得改革プロダクトサポート査定報告(WSAR-PSA)においてライフサイクルとしてのPS向上のためのPSビジネスモデル(PSBM)を開発したのである。そしてここに新しく従来からのプロジェクト・マネージャ(PM)の下にプロダクトサポート・マネージャ(PSM)を誕生させたのである。
そこでこのPSMガイドブックではPS戦略を新たに開発し、成果方法をプログラムマネージャ(PM)とPSMへの導入書として位置づけたのである。それは2010年にDODが公表した「より良い取得力」と題した覚書を支援する内容で激化する競争、長期的で余力あるコスト管理の助長そして産業技術革新をテーマに取り組む姿勢を示唆している。
このPSMガイドブックは、当然ながら新しく設定されたPSMのために書かれており、兵器システム(WS)のライフサイクル全体にわたってPSを管理するために必要な要求に対処する実践論を詳しく提供している。このガイドブックは多くのシステムエンジニア、ロジスティシャン、取得専門家、軍機関、会計専門家、政府機関、産業界および学界などの権威あるチームによって新たに書き起こされたものとなっている。
このガイドブックではPSMはPMを補助し、その主なユーザとなる戦闘員や納税者にPSサービスを提供するのを助け、より良い取得とライフサイクルのPSプロセスを配備するために彼らの幅広い知識と経験がこのガイドブックに組み込まれているとしている。その意味でこのPSMガイドブックは、次世代ロジスティクス戦略の実装と取得改革を補助するための運用ガイドとして今後とも機能するものとされている。 
【解説】 
DODは即応性に対する成果の向上とコスト削減という二兎を追う政策として今世紀の初頭からPBLという成果主義による契約手法を研究し1995年にはその手法が確立された。その意味において即応性という観点においては、従来からの問題であった装備品の枯渇、納期遅延などによる前線における充足性の改善が大きく図られたのである。また民間によるサプライチェーン・マネージメント(SCM)などのロジスティクス管理技術手法を利用するメリットとして大きな成果が得られたとしてきた。
しかしながらコスト面での改善がなかなか図られず、また改善を立証する手立てに苦労するなどPBL手法の問題点が要求元に蔓延し始めたのである。近年の調査ではPBL契約は200件以上に増加したとの評価もあるがそのなかには統合システムに組み込まれたサブシステム契約も含まれるため実際のPBLによる取得契約は全契約のたかだか20%程度でしかない現状であるという。
もともとPBLにはポスターチャイルド(広告で使用される子供のことで万人受けを狙うという意味)の側面があり、1990年代の粗悪なロジスティクス支援時代を払しょくする意味もあって、大々的なPRをしてきたが現実は容易ではなかったようだ。陸海空などの要求元(顧客)の意見では、PBL 手法にした場合のコスト削減の分析と立証法が個々の取得事案(ビジネス・ケース)により不明確であり、コスト削減できる見通しのないものはPBL契約を行わなかった。
そこで2010年の次官通達では新しい取得手順「よりよい取得力を!」をスローガンにこのPBL契約手法の全面的な見直しを図り、PSMを新しく取り込むことでコスト削減を創出することを全機関に示したのである。そして2011年4月に発行されたこのPSMガイドでは従来のPBLをバイナリ・レベル(2進法的)として片付け、新しくPSMをその進化版(エボリューション)に例え、従来からの12段階プロセスモデルを再構築しなおしたのである。
また今回のPSMでは新たにBCA(取得事案分析)ガイドを別途発行して取得事案の克明な分析、評価システムの構築を図った点が特徴となっている。この理由として、従来からのPBL手法では多くの場合BCA プロセスにおいて満足に成果が出せず、よって分析・評価ができずに終わってしまったケースがあった。
その結果その手法で良いのか、他の手法を使用するべきなのかという分析ができないまま、結局はコスト削減を立証できないままに終わったケースが多々あったとされている。特に12段階プロセスのうちの計画プロセスにBCAを引き上げ、多くの代案を含めて十分に検討し、ベスト手法の選択と立証手順を確立させるようにした点が注目されている。
DODは自戒を込めてPBLの「幻影」を改めて見つめなおし、PS、すなわち取得品支援という恒久的な方向性を改めて示唆したものとなっている。しかしPBLに息づいていた即応性への成果は充分に評価されており、PCMガイドをPBLガイドの進化版として位置付けている。PBLが契約者に受渡と取得品支援そして即応体制を直接結びつけることで画期的な契約手法を創生したことは事実であり、この新しいPSMの概念はPBLの弱点を補強するために要求目的を精査し取得品支援という恒久的なスローガンを通じて最良の取得方法を導くものとして新たな取り組みが始まった。わが国もコスト抑制策の一環と
してこのPBL契約手法を試行しているが、この米国における見直しと新しい取り組みについては充分な精査を行うことで的確な取得品支援管理のガイドラインとなることを望む次第である。
注:なお弊社ではPSMガイドブック、BCAガイドブックならびにLA(ロジスティクス・アセスメント)の3部作の翻訳版を計画している。
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