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【防衛部品海外事情】

2013.3.31

ーIT化戦略に邁進するNATO装備品データベースー

わが国を含め世界の65カ国が加盟する装備品データベース(NCS)を運営するNATOのAC/135委員会からの最新情報を紹介する。NATOは米英を中心とした主要諸国やT2(ティアツー)加盟国の協力でリアルタイムなNCSの維持管理を目指している。グローバル・ロジスティクスは即応性に準拠するために装備品データを如何に迅速且つ効率的にデータベース化するかにかかっているからだ。わが国は2年前にNCSに加盟したが今後米韓豪を含むNATO諸国との連携には装備品識別(II)の国際標準化や自動識別化、維持管理コストの低廉化など加盟各国と共通したITロジスティクス戦略が不可欠になっている。 (DCメール 2013年4月1日 No.338)

■NATO装備品データベース最新事情
IT化の波は凄まじい勢いで装備品識別(II)の世界を席巻している。NATOオープン・テクニカル・ディクショナリー(NOTD)は米英が主体となって新しく国際規格ISO22745を立ち上げてNCS迅速化、効率化に寄与していることは既に紹介した。
これは近年インターネットの隆盛により電子商取引が拡大され、電子部品を筆頭にあらゆる工業製品の電子データ化が推進されてきたが、国同士におけるデータ交換作業は多くの場合その自動化が困難であり、多くの労苦とコスト要因が付きまとってきた。
米国の装備品DBであるFLISやNATO装備品DBのNCSの場合は1700万件以上のNSNのひとつひとつの装備品データを組み込む作業は膨大なコストが見込まれてきた。そこでNATOは主に米国が中心となって古くからこの問題を論議し研究を重ねてきたが、ECCMAとの協力によりデータの識別・類別作業における共通技術辞書であるeOTDの開発に成功した。今から10年以上も前の話である。
 
このeOTDは米国防総省(DOD)の傘下にあるDLAと電子商取引を推進する米国ECCMAの間で誕生したいわゆる異なった工業技術データ・フォーマット同士の交換や転換を可能にするアーキテクトをもち、膨大なFLISやNCSを維持管理するためのコストを大幅に削減する初めての官民が一体化した電子データ変換を可能にするプロジェクトであった。
このECCMAとの共同歩調により米国やNATOではeOTDの国際標準化を目論み推進することで、2008年にISO22745( 産業オートメーション・システム及びその統合-オープンテクニカルディクショナリ及びそのマスタデータへの適用 ー所謂eOTD)として誕生させることに成功した。
また同時に従来からの品質管理規準であるISO9000に習い、データの品質管理基準としてISO8000( マスタデータ:特性データの交換:構文,意味符号化及びデータ仕様への適合 )を誕生させることに成功した。
 
これら新国際標準策定の活動はECCMAを筆頭にDODあるいはAC/135が中心となって各国メンバーと審議を重ねまたあるいは説得を重ねることで積極的に賛成を取り付けた。そこにはNSNを核とした世界の装備品DBの構築だけではなく国際連合( UN )との協調による国連物資コードの取り込みをはじめあらゆる世界の商品、製品、装備品DBの構築を視野に入れた戦略構想が見え隠れしている。
また最近のNATOからの報告ではサプライヤ・ソースド・コディフィケーションと称するプロジェクトを立ち上げた。これは従来からのDB更新作業を一気に短縮させ、装備品の登録や更新作業をメーカから直接データ登録させて自動化をさらに促進させる維持管理システムを指している。この英国を主体とした実装実験では素晴らしいコスト低減化が実現され、かつ登録結果として十分に使用可能なデータ収集と構築が可能になった。(注)コディフィケーションとは装備品データベース化の意味。
この装備品識別(II)の世界は日進月歩でIT化が進んでいる。NATOは多種多様な装備品データを統一し、共通化することが余儀なくされているが、中でも処理スピードやコスト削減を可能にするSSC(次世代自動化システム)はフェーズ1( 第一段階 )でSTEPファイルを利用して再構築を図り、フェーズ2では新たに国際規格化されたISO22745とISO8000を組み込んでSSC概念を創起した。そしてフェーズ3で本格的な実装試験に入ったとされてきた。現在フェーズ4において具体的なデータ構築作業によるが実用化が達成された。最近では実装実験も具体的な成果が出始めており英国では初めてISO8000とISO 22745に準拠したプラットフォームにおいて例えばテリヤ―型戦車の装備品を完全に識別化することができ、全体の72.5%の技術データの構築が高信頼性に基づき達成された。
そもそもNATOのスマート防衛構想なるものが近年顕著になったがこれはCFI(コネクテッド・フォース・イニシアティブ)すなわち同盟軍構想ともいうべき新しい方針の下にわが国などパートナー諸国をも含めた次世代防衛構想(これをスマート防衛と呼ぶ)を立ち上げている。これは昨年の5月に開催されたNATOシカゴ・サミットで同盟国はもとよりパートナー諸国ともより緊密な関係をもち共同作業(ワーク・ストランド)のための具体的なアクションプランに入るとされるものである。
こういったNATO構想を受けてそのロジスティクス部門を受け持つAC/135委員会はワン・システム、ワン・グローバル・スタンダードそしてワン•ワールドである。NCSはもともと6カ国のグループで始まったが今や世界最大の装備品データベースとなり、すでにわが国を含めた世界の65カ国が参加している。NCSは現在新たな課題を持ってすべての装備品のデータ品質基準、データ交換技術、マスターデータ管理などの資産継承を行っている。
ベルギーのブルージュで開催された第11回NCS世界フォーラムではNCSの挑戦と機会というテーマで世界の約50カ国から約170名の防衛と産業界代表者が出席して行われた。今後の課題として益々減少するリソースと共有するタスクと識別化の利点を促進し、防衛産業界や他の組織団体と係合することが協議された。このイベントを通し産業界のパートナーとの総会やワークショップでの共通の関心事や目標についての合意があった。NCSのトランスフォーメーション運営グループ(TSG)は新しい手法とプロセスを更新し、NCSの効率と品質の向上を目的としたシステムとして各国共通の相互運用性の強化を推進しているのである。
【解説】
わが国ではこの新しいISO22745とISO8000の国際標準化への動向は経産省が早くからウォッチをしてきたが装備品に特化した規格という見方を変えておらず、ISO8000への研究対策は始まったばかりでありISO22745に至ってはなんら対応がとられていない。わが国産業界ではISO13584( PLIB )を基本とした電子商取引形態を推進してきた。製品の電子データ化は主に企業内向けであり企業同士の取引形態は共通性や一貫性にかけることから経産省が中心となってPLIBの推進を手がけてきたからである。
そこでこの装備品に特化したと言われNATOが推奨するISO22745とわが国が推進してきたISO13584との共有モデル構想が課題となろうがわが国が今後T2に底上げする手順を踏むか踏まないかは別にしてNATOはわが国にスマート防衛構想、なかでもロジスティクス分野においては相互運用性のある電子商取引を求めてくることが予想される。
近年日米、日豪、日韓によるACSA協定の調印が国民の知るところとなったが、この米韓豪はともにロジスティクス先進国で既に電子商取引に向けての共同研究が実施されている。また米国やNATOではNSNを核とした世界の装備品DBの構築だけではなく国際連合との協調による国連物資コードの取り込みをはじめあらゆる世界の商品、製品、装備品DBの構築を視野に入れたグローバル・ロジスティクス戦略構想が見え隠れして好むと好まざるにかかわらずわが国を巻き込んでいくことになろう。
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