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【韓国、優等生ぶりを遺憾なく発揮!】

2013.11.3

―NATOワールドフォーラムでの報告―

韓国DAPA(防衛事業庁)によるとこの4月に韓国は国際規格ISO-22745(eOTD)に基づき次世代型電子データ交換を可能にしたKCS(韓国装備品システム)を構築したことを表明した。このKCSはNATOのNCS(グローバル装備品システム)に準拠している。これは一昨年韓国がベルギーのブリュッセルで開催されたNATO・NCSワールド・フォーラムにおいて「非NATO国によるNCSの現状」と題するプレゼンテーションで発表したものである。そして韓国は非NATO国としての役割を十分に果たしていることを世界にアピールした。自らがその優等生ぶりを遺憾なく表明したものだ。そこでここではこのフォーラムで報告された韓国DAPAによるKCSの現状について分析して紹介する。(DCメール 2013年11月1日 No.352)

■韓国KCSの現状について
NATOワールド・フォーラムで、まず韓国は如何にNCSに貢献しているかを報告した。韓国はNCSに準拠した韓国装備品システム(KCS)を紹介し、KCSのシステム構築を一手に引き受ける韓国防衛事業庁(DAPA)による防衛装備品の一元管理体制を説明したのである。以下はその主な内容である。
■韓国国家類別局(NCB)はDAPAの一機関としてSMD(標準管理部)のもとにおかれ、その傘下のSPT(標準計画チーム)とLIMT(ロジスティクス情報管理チーム)が類別業務ほかNCBとしての役割をこなしている。
■DAPAによれば韓国NCBの歴史は1982年に始まった。その後紆余曲折があるなかで1997年にTier1として非NATO国として加盟、その後2005年にTier2となり,そしてその翌年の2006年にDAPAが創設されたのである。
■韓国の登録装備品は13ケタのNSNにより一元管理されており、そのうち国産品が47万件、輸入品は65万件、合計112万件となっている。(2011年10月現在)また国別輸入装備品の内訳は米国が58万件、ドイツが2.5万、イギリスが2万、フランスが1.6万件、その他が1万件余となっている。これが示すように韓国装備品は輸入品が国産品を上回っており、中でも米国品が図抜けて多く韓国国産品を上回っていることがわかる。
■このフォーラムで韓国が最も強く主張しているのがBA(2国間協定)である。現在韓国は共通装備品に関するBAを15カ国と結んでいる。各国との2国間協定は以下のとおりである。(数字は締結年)
ドイツ  1987
スペイン 1992
シンガポール 2002
カナダ 2008
ベルギー 2008
オランダ 2008
マレーシア 2008
インドネシア 2008
米国 2008
英国 2008
フランス 2009
イタリー 2009
デンマーク 2009
ロシア 2010
ブラジル 2011
これにより韓国は各締結国との装備品の輸出入を積極的に行い、現在の韓国装備品の輸出拡大に大きく貢献していることは間違いのないところである。またこれら2国間協定のほとんどが2008年以降であることから韓国が2005年にTier 2となり、2006年にDAPAを創設したうえでこれら2国間協定を大きく前進させたことが明らかになった。
■韓国がこのフォーラムにおいて非NATO国としてNATOシステムに大きく貢献していることを自らアピールしたが、特にNATOが開催するAC/135委員会に毎回のように積極的に参加をすること、そして常にNATOのルールと手順に準拠することなどを具体的な事例を持って掲げ、国を挙げてNATOに準じているというまさに韓国の優等生ぶりを遺憾なくNATO諸国の面前で披露したのである。なかでもNCSを統括するAC/135委員会に出席することはNCSコミュニティへの貢献の第一歩であり、その理由としてほとんどのルールはこれら会合の中から生まれるものであるという主張は当時傍観していたわが国ににとっては誠に耳が痛い話である。これは例えて言えばPACSというNATOのアジア分科会での参加履歴をみるにつけ当時からの韓国の意気込みというか戦略が透けて見えてくる。当時わが国はPACSには参加をするもののあくまでオブザーバー(傍観者)の立場を堅持しておりこのように当時から態度を鮮明にしていた韓国とは国情の違いこそあれまったく異なっていたことが鮮明に投影されている。
■グローバル・ロジスティクス(GL)を標榜する韓国にとってここ数年自国のKCSを米英などNATO主要国並みに次世代化することが大きなテーマであった。この時期米英ではSSC(スマート・ステップ・コディフィケーション)を合言葉にNCSをグローバル・ロジスティクス体制に同化させるためにIT化、自動化、効率化およびコスト削減を促進させてきた。そこで韓国も米英を追随するために2011年からKCSを従来のC/S(クライアント・サーバー)方式からグローバルを対象とするウェブ方式に全システムを転換させてきたがようやく今年の4月に完成させた。
■SSCプロジェクトのなかでも目玉ともいえるeOTDの採用を実現したことは国際規格ISO 22745として装備品データの登録や識別を自動化させることができ、今後KCSはNCS同様すべての装備品データを共通辞書化された登録システムを採用していくと思われる。これは例えばインターネットで郵便番号を入力することで全住所登録が完成するようなもので極力無駄を省き、時間を節約しかつ正確でなければならないとしている。また同じくISO 8000(データ品質管理)の採用により登録データの品質を大幅に改善するなど新しい国際標準を先取りした戦略は今後のグローバル・ロジスティクス戦略と相まって世界の装備品システムに大きな足跡を残すことになろう。なお余談であるが昨年Tier2国となったロシアはAPEC議長国として、ISO 22745の採択を提唱し将来民生品にも共通辞書化を促進することで国際電子取引システムを世界で共有することに強い意識をもっているとされている。
■なおeOTDを搭載したSSCの実装試験は前号で紹介したように英国は試験装備品を完全に自動識別化することができ、全体の72.5%の技術データの構築が高信頼性に基づき大幅な時間短縮によって達成されたとしている。これらの新しいIT技術はウェブ上で草案・登録・審査過程を行うことができ従来のNCBによる登録・審査作業の負担軽減とシステムの即応性を達成するものとされている。今後各国のNCBでは類別や識別業務を大幅に短縮し改善することが求められ、強いてはグローバルロジスティクスにおける装備品の欠落時間(LRT)を大幅に短縮することに寄与することになる。
■韓国のプレゼンテーションは最後に現在ウェブを通じたeラーニングを推進中でDAPA中心にNATO共通化システム、グローバル・ロジスティクスへの理解を推進させるための韓国防衛産業界への積極的な参加と知識の習得、運用の拡大を呼び掛けているとしている。
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