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【武器輸出とNATOストックナンバー】

2014.1.4

-わが国はNSN取得の早期実現をー

武器輸出3原則の撤廃や例外措置など見直しの政策が始まった。それを見越したかのように国産機等輸出が急速に展開し始めている。しかしまず装備品輸出の要であるNSNの取得を実現してもらいたい。ちなみにNSNとはNATOストックナンバーのことで各国政府が装備品に付けた世界共通の13桁による番号体系のことをいう。NSNはNATO加盟国である米国や英国、フランス、ドイツはもちろん近年ではロシアも取得し豪州や韓国などNATO以外の国々も加わり既に取得した国は38カ国にのぼる。NATOはわが国政府に対しても永年に渡りNSNの取得を求めているが、わが国が武器輸出3原則を理由にシステム再構築に消極的であったことは事実である。確かにNSNを取得するためにはNATO加盟国の同意を取り付け、また各国共通の登録システム(NCS)を構築する必要がある。これは簡単ではない。しかし今更言うまでも無くこの枠組みを疎かにすると折角の装備品輸出の成果が上がらないばかりか国際競争力さえも弱体化するのである。(DCメール 2014年1月1日 No.356)

■武器輸出とNATOストック・ナンバー
筆者が始めて米国政府によるロジスティクス政策に触れたのは今から8年前に開催された米国防総省(DOD)の標準化総会に出席したときのことである。その後幾度かこの総会に出席したが残念ながらわが国からの出席者は後にも先にもいなかった。その後わが国の某官庁の依頼で通訳としてDODのロジスティクス部門との会議に参加した。そしてこの間に米国は鮮やかな変身を遂げたのである。米国は見事にNATOを巻き込むことに成功したがそれはもはやロジスティクスが一国だけで成し得るものではないことを知ったからである。そして今やNATOが米国の代わりに加盟国はもちろんアジア、アフリカおよび南米諸国に至るまで拡大し艦船や航空機などを構成するすべての装備品の共通化を成し遂げようとしているのである。直近のニュースでも判るとおり米国政府はF-35に搭載するすべての装備品でさえNSNを付与する計画である。
ちなみに現在のNATO装備品システム(これをNCSという)は米英を中枢にロシアを含めた28カ国からなるNATO加盟国とそれを取り巻く豪韓を含む10カ国からなるTier2(ティアツー)と呼ばれるNATO以外の国がお互いの装備品を共通化してその相互運用性を高め如何にコスト削減を図るかに腐心している。現代のロジスティクス概念は即応性に如何に対処できるかにかかっている。それは武器等エンドアイテムのダウンタイムを如何に軽減できるかにある。また平和維持軍やいわゆる海賊退治など他国との共同歩調をとるうえで装備品の共通性や相互運用性を如何に可能にするかが最も重要であると結論付けている。
現在NATOは残る世界の国々に対してNSNをグローバル・スタンダードとして採用することを嘱望しておりわが国に対しても永年にわたりNSNの取得を進言し続けているが未だに実現していない。わが国が武器輸出3原則を理由にシステム再構築に消極的だったことは事実であろう。武器を輸出しないのに装備品の共通化が必要なのか説明がつかないとされてきたのだ。しかしそのためにわが国の装備品体系は未だに国産品と輸入品が区分されまた諸外国とは共通性のない独自のものとなっている。しかし装備品輸出を戦略的に考えるならわが国がNSNの取得を疎かにしていると輸出成果が上がらないばかりか国産装備品の競争力が弱体化することは次の視点において明らかである。
いまやNATOを中心とする主要諸国では武器を構成するあらゆる装備品はNSN化され材料から部品、装置にいたるまで1700万といわれる装備品数と3000万を超える膨大な製品数のほとんどすべてがこれら38カ国で共通化されお互いに代替品登録がされている。不足した装備品はお互いに代替品を利用できる双方向システムになっているのだ。また自国の装備品を登録することで世界中の国々が利用できるようにしている。このシステムはNCS(NATO装備品システム)と呼ばれNATOを中心にして各国登録機関(これをNCBという)を通じて自国の装備品をNSN登録し世界の装備品をお互いにWEB経由で利用できるシステムとなっている。NCSはまた不良品やまがい品対策に有効であることは紛れもない事実である。現在NCSは第4世代と呼ばれ自動品目識別によりソース・データの交換を可能にするISO 8000(データ品質管理)とISO 22745(ECCMAオープン技術辞書)を採用することでデータ品質管理を大幅に改善させスピードと正確性を向上させ且つコスト削減に大きく貢献するものとなっている。
もちろん世界にはわが国のように未だに国産装備品にNSNを採用していない諸国も少なくないがNATOからの参加要請により総じてNSNに一元化されるだろうと見られている。その理由は共通化による恩恵すなわち即応性の維持とコスト削減の必然性にあるといってよい。世界中に拡散するテロ行為や隣国との軍事衝突を限られた予算内で最適に対処するためには同盟諸国との装備品共通化は不可避であるからである。
たとえば最近モロッコがNSNを採用をした。ティアツー加盟を果たした。(ティアツー国とはNATO以外でNSNを採用し登録できる国のことを言う。) しかしティアツー国にグレードアップするためにはNATO各国の同意とNCSシステムによる再構築を全面的に行うことを意味している。モロッコの場合最大の理由は自国で流通している装備品の71%がすでにNSN採用品であることに関係していると言われる。というのはモロッコはわが国同様ティアワン加盟でありNSN採用はできない。しかし航空機や艦船などエンドアイテム(武器)を導入するたびにその装備品にはNSNが採用されているため自国システムを再構築することですべての装備品の共通化を図ったわけである。いや正確には図らざるを得なくなったといってよい。
現実には米英を中心とする28カ国からなるNATO諸国と豪韓、シンガポールなどティアツー10カ国ではNSN以外の装備品は使わない。例えばわが国が米国に装備品を輸出してもNSN登録品でない限り米国政府は採用しない。代わりに米国NCB(NSN登録機関)が米国品として登録することになる。(注:ここで言う米国品はNSN番号に米国籍(コード)がつけられるという意味である。) すなわち国産品なのに米国品として登録されるのである。これを端的に示す事例がある。NCSにはわが国メーカが製造した82000件余の装備品が27カ国の諸外国において登録されその国の籍(コード)が付与されているのだ。(2009年NATO調べ) これらはわが国がNSNを登録できないために相手国側が登録を行ったことを示している。なおNATOによればわが国がティアツー国となりNSN登録をする立場になれば相手国の裁量をもってこれらの装備品をわが国コードに切り替えることができるとされている。
ところで読者は何故今NATOシステムなのかと言う疑問があるのかもしれない。NATOとの協力関係は第一次安倍内閣の2007年にわが国の首相としてはじめて表明して以来のことである。昨年はNATO事務総長が訪日して平和維持軍やいわゆる海賊退治に協力するというわが国の海外協力活動に関する外形的な約束を取り交わした。しかしここで紹介したようにロジスティクスの観点からいえばもはやわが国は米国だけとの関係を強化するのではなく米国自らが託したNATOを通じて世界との協力関係を要請されていることを汲み取る必要ある。
わが国がNSN登録制度に移行するためには現行法の改正やシステムの再構築はもとより、まずは同盟国との装備品の共通化が不可避であるという意識改革が必要である。またわが国にとって装備品のコスト削減は何よりも優先する課題である。このようにNSNを採用する理由は数々あるがそのうえでわが国の装備品輸出の相手先はすでにNATOによるNSN取得の洗礼を受けており相互運用性とコスト削減策は最重要課題となっていることを強く認識しておく必要があると思われる。
なおNATOやNSNおよびグローバルロジスティクスについての参考情報としては下記ブログの参照のこと。
■【日本とNATOの連携に対するアメリカの思惑】
http://www.datacraft-news.com/ontopics/88.html
■ 【グローバル・ロジスティクスとNSN】
http://www.datacraft-news.com/ontopics/314.html
■ 【わが国に押し寄せるグローバル・ロジスティクスの波】
http://www.datacraft-news.com/ontopics/318.html
■ 【F-35装備品の全てにNSNを】
http://www.datacraft-news.com/ontopics/321.html
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