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【NATO装備品システム研修からの報告】

2014.9.4

-NCS College 2014出席と提言ー

このほど筆者はわが国の民間人としては初めてのチェコ共和国で開催されたNATO主催による装備品システム研修会(NCS College 2104)に招聘され晴れてその修了証書を授与されたことをここに報告する。このNCSはNATOが世界に向けて防衛装備品体系の共通化、統合化を推進させるシステムであり現在参加するのは28からなるNATO加盟国と35の非NATO加盟国からなる。わが国政府も形のうえでNCSに参加しているが実際にNCSシステムの導入には至っていない。そこで今回の研修を契機にNATOや参加各国との協力を得て今後わが国がNCS装備品体系の導入と海外各国との共通化実現のためにより一層邁進することを改めて誓ったのである。(DCメール 2014年9月1日 No.372)

■NATO装備品システム(NCS)
北大西洋条約機構(NATO)は米国や英国、フランスなど現在28からなる加盟国で構成されている。なかでもロジスティクス政策を担当するAC135委員会(Allied Committe 135)ではこれらNATO加盟国のみならずアフリカや中東、南米やアジア諸国における35の非NATO加盟国(援助国)からの構成も併せ持っている。
この援助国には現在韓国や豪州などNATO加盟国と同一環境を構築している10か国からなるTier2(ティア2)国と日本やインド、イスラエルなど参加はしているが装備品体系の共通化に至っていない25のTier1(ティア1)国からなっている。なお今回非公式情報ながらインドやスエーデン、イスラエル政府等はティア2国への「昇格」に動いておりまたウクライナとの紛争のためロシアは一時停止国(Suspended)扱いとなっている。
そこでこの世界の装備品体系(NCS)の共通化について話をもどそう。そもそも1990年代に勃発した湾岸戦争において米軍は初めて英、仏、独を中心としたNATO軍と共に戦ったのだがあまりの装備品体系の乱雑さや不統一さにこれでは共に戦えないと判断した。そしてNATO諸国との合意(STANAG)に基づき米国装備品体系(FCS)による統一化を図ったのである。そして現在では28の加盟国全員が統一化され共通化されたシステム構築に成功している。これによりあらゆる面においてNATO加盟国は武器弾薬から部品や材料、被服や薬に至るまが共通した13桁による番号体系(NSN)を運用することで各国は互換品や代替品を自由に調達・運用することができ即応体制の強化が図られるようになった。
一方韓国や豪州、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアなどのアジア各国の間でも米国などの協力により早くからNATOによるティア2国承認を果たしており、その結果韓国政府では新しい取得組織編制(DAPA)により装備品輸出実績が年々倍々ゲームとなる結果を残している。なおNATOを媒介してこれらの国々では2国間協定も盛んにおこなわれておりお互いの装備品体系共通化のための定期協議等により即応性の強化、コスト削減、そして先進技術の導入も余念がない。
そこうえ現在遅ればせながらインドやイスラエル、スエーデンといった装備品運用には独自政策を貫いてきたティア1諸国が次々とティア2国入りを目指しておりわが国は完全に出遅れているといった感が否めない状況であることがよくわかった。
このティア2とティア1の違いであるが、簡単に言えば自国の装備品をこのNATOシステムに登録して他国との共通化を図ったのがティア2であり、そこへ行くとティア1はただそのシステムを参照するためだけにあるといってよい。現在世界において装備品生産をシェアするほとんどの国はティア2である。
ところでNCSの目的は4つある。第1は各国との共通性(Common Supply)の確保である。あらゆる装備品は規則正しい配列番号(13桁)からなり、NATO加盟国とティア2国の装備品はどこの国でも調達・運用が共通化されているのである。この共通性により各国言語の壁が取り払われ取得調達は簡素化されたといってよい。第2としては相互運用性(Inteoperability)と統合性(joint support)の確保である。これにより代替品取得が可能となり国連(UN)の平和活動など各国が共通した任務を負うような場合の統合政策が可能となっている。第3はいわゆる在庫などにおける重複コストの削減である。統合化することで類似品の削減を可能にし、またまがい品の完全排除をすることで可動率向上に寄与することになる。そして第4はシステムIT化などが促進されデータ管理やデータ品質管理を標準化した新しい国際規格(ISO8000やISO22745)のもとより正確な装備品情報の強化策がなされつつある。
さて今回の研修を修了するにあたっては出席したNATOや各国担当者と交流が中心となったが、なんといってもわが国が早期にティア2国に名乗りを上げることが重要課題であることが改めて浮き彫りにされたと言ってよい。わが国は世界の中でも数多くの優秀な装備品を生産できる国としては有名である。しかしながら長きにわたる過去からのわが国独自の政策により海外諸国との共通性や相互運用性が全くできていない状態にあることが浮き彫りにされた。つまりわが国では従来からの輸出品の制約措置ゆえに特段に海外との共通性維持に対する論議がおこなわれてこなかったわけであるが、ここにきて装備品輸出や2国間における装備品開発が活発化する兆候をみせておりいずれ相手国側からの装備品システム共通化要望がでてくるのは時間の問題とされている。
そのうえティア1国である限りわが国が無視できないのがNCS教義におけるファースト・ユーザ(初回ユーザ国)主義である。これはわが国装備品を最初に利用する相手国はティア1国の了解なくして登録することができる制度である。この場合たとえわが国政府がこのことを検知したとしても口を挟めないことになる。即ち装備品の生産国がティア1国の場合、最初のユーザとなったNATOやティ2国がその装備品の登録国として装備品管理をすることができることになっている。そして現在NCSには82000件にのぼるNSNが多数のファースト・ユーザ国においてわが国装備品が登録されている事実がある。この数字はNATO参加国中では圧倒的に多いといわれ、逆に言えばそれだけ多くのニーズと要望が海外諸国にあるということに他ならない。しかし一方そのための登録費用の捻出を相手国側に負わせるだけではなくわが国の装備品輸出の垂れ流しあるいは流浪の民化させるこの無管理状態はわが国の安全保障政策上誠に危険であるといってよい。
わが国ではこのような状況下においてNCSシステム導入を図りティア2になるべく検討を開始しているがそのためにNATOによるティア2テストを受ける準備からまずは取掛からなければならない。またこのテストは少なくとも1年は係るものでその間多くの制度改革やシステム更新や調整が図られていかなけばならない。おりしも今わが国では新しい装備政策のもと航空機等あたらしい装備品システム導入におけるサプライチェーン管理(SCM)が求められているが今や世界の潮流は各国との装備品の共通化、相互運用性無くしてサプライチェーン構想は無しえないとされていのである。
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