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【MILスペック・コンプライアンス】

2014.10.1

-貴社はMILスペックに準拠しているかー

MILスペック・ユーザはスペックが改訂されるたびに内容を精査し部品や材料の取得( 調達 )を決定するが果たして現実はどうだろか。受入れ検査時に版が違うことで納品問題が発生したり使用できない旧版部品や材料が倉庫に大量に眠っているようなことはないだろうか。また海外取引先からスペック管理の遅れを指摘されたり認定品が中止されたことを知らずに発注したり代替品の納期遅延を招くなどMILスペックにかかわる問題が後を絶たない。( DCメール 2014年10月1日 No.374)

■貴社はMILスペックに準拠しているか
わが国の防衛・航空宇宙分野における標準化活動はMILスペックや海外航空機メーカのスペックに依存してきたために自ら整備する意識が不足しており今後ともデファクト標準としてのMILスペックを常時把握できるようにモニター態勢の整備を検討する必要がある。これは10年前にわが国の公的機関が提言したものである。ここでいうデファクト標準とは事実上の標準を指しているが確かにその意味においてMILスペックはわが国防衛・航空宇宙分野における技術標準なのである。
MILスペックに記述された言葉のひとつひとつを理解し正確に把握することが求められる現場ユーザにとって改訂により生じる見解の違いや表現の違いに十分に対応する暇( いとま )が無いのが現状である。またMILスペック特有の内容や構成に慣れていなく外国語に不慣れなスペック・ ユーザがいることも現実の問題である。これらスペックの内容や改訂にまつわる技術的な解釈問題は潜在的な問題として業界全体のテーマでもあり、結果的にユーザ企業の潜在的なコスト要因となっていることも事実である。
 
ユーザにとって自らの製品に関連する文書が改訂されたり移行したりすることで対応を誤ると死活問題となる場合がある。現在では自らが進んで取り組まなければならない数多くの変更情報をどのように見極めることができるのだろうか。
業界全体を覆うコスト削減や人員縮小もあいまって専門家を十分に配置できない環境もある。しかも契約遵守や納期管理の中で最新版スペックに原語で記載された新しい試験や検査方法を習得しなければならず、わが国ユーザに突きつけられた課題は山積している。
 
ユーザがこれらの問題を解消するためにはユーザの環境を整備してスペックに関する情報収集能力や理解力、問題解決能力を高めることはもちろん関連部門や取引先に対しても知識レベルの向上、問題解決能力のスキル・アップなど、横断的な意識改革を徹底する必要がある。そして何より大切なことは発行元であるDOD各部局とのコミュニケーションを図ることが何より大事であることは多くの事例が証明するところである。
 
近年米国は自国だけではなく多数の同盟諸国との間で国際標準化推進活動を強化してきており、NATO諸国やカナダ、オーストラリアといった文化的にも米国に近い同盟諸国は米国主導による新しい標準化活動や取得改革を通じて相互運用性を高めており、着実に防衛標準化体制の強化を図っている。
このような流れは今後益々国際化し文化的にも異なるアジア・アフリカ諸国を幅広く覆うものと考えられる。事実、韓国やシンガポール、フィリピン、マレーシアなどでは米国からの後方支援情報の恩恵を受けているが、標準化政策においても同様な環境下に置かれつつある。
なかでも近年のDOD標準化情報の開示能力が格段に上がったにも拘らず民間企業はともかく監督官庁もその情報活用がままならず、折角の恩恵を受けられないことは誠に残念でならない。国防あるいは防衛という観点においての技術標準化政策は地味でありながら取得や調達を支える重要政策である。日米同盟というからにはこういった分野が共有化されることによって初めて機能するものである。このような指摘が10年以上も前にされておりながら、一向に改善されていないのは相変わらず米国依存体質からの脱却がなされていないと言われてもしかたがない。
 
DODの装備品システムには電子・機械部品はもとよりあらゆる装備品が満載されており適正な装備システム性能を維持するために正常な機能が発揮されることが求められている。DODの装備品要求は米国防標準化計画( DSP )の管理下におかれ調整済みのMILスペックや関連する製品の認定作業が行われている。そして1980年代まではこれらの装備品はほとんど米国内で生産されていたが取得改革や世界経済の変動により急速に海外諸点での生産に移行している。
 
MILスペックには各種制定部門( PA )があり軍や製造メーカが求める「性能要求」を策定し各部門との調整作業を行っている。MILスペックが制定され発行されると認定部門( QA )は部品を供給するメーカの選定を行い装備品の認定を行う。この認定作業にはQAのアセスメントすなわ
製造メーカへの認定検査や生産能力、試験方法などといったMILスペックに準拠した性能を発揮する装備品を保証するための評価を行っている。この評価には細部にいたるドキュメントや製造プロセスの調査や現地での監査などが含まれる。そしてこの認定プロセスが終了すると製造メーカの品質システムや生産設備、テストラボといったものが生産能力ありとしていわゆる認定証が交付されるのである。
即ちメーカは認定された装備品製造プロセスを用いてテストラボでMILスペックに要求される認定試験を行いその試験結果はQAに報告され合格審査を取り付けることになる。QAはその装備品がスペック要求に適っていることが確認されるその装備品およびメーカはQPD( Qualified Product Dataset)に登録されることになる。
 
MILスペック最新版に適合した認定品の取得は防衛産業界にとって必要不可欠なものとなっているが認定品を定め認定品目表として公表するDODではQPDの最新版公表の維持が非常に厳しい現状にあるためにユーザにとって認定品の「正式」取得をどうするかという問題が浮上している。
DODはQPDには記載されていない認定品についてはDOD認定機関による認定証( Letter Of Authorization )の確認を行うべきだとしている。メーカがスペック品を生産することを承認される場合当該メーカはDOD機関からの正式認定書を持っているからだ。したがってメーカが認定資格を与えられたことがリストされていなければユーザはその認定書の提示をメーカに要求することができるのである。
 
一般に認定品の調査精度を高めることは企業の信頼性を高めることになると言われている。そこでデータクラフトの認定品調査に関する回答がユーザにとって非常に重要度が高く慎重に扱われているのはユーザの製品が正規認定品を使用しているか否かが取引先との間で重大に関与しゆえにユーザの調達業務に多大な影響を与えるからである。
 
例えばこのような事例がある。FED-STD-595 は色指定の規格である。そこでユーザはそのなかのある指定色を必要としたが当該色はQPDに記載されていない。そこで当該色を既存の調達ルートで調査したところあるメーカの製品が認定品として該当し認定番号が付与されているという情報を得た。しかしながら既存の調達ルートからの当情報は調達を決定するユーザ現場としては情報精度が低くそれだけで調達を決定することはできないとした。
 
データクラフトはDODに対して当該製品が認定品として未登録であるが認定品として運用可能か否かを確認した。その結果当メーカから当該製品がDODから認定を受けているエビデンスが提出された。またDODもその事実を肯定した。これによりユーザは安心して未登録であっても当製品を認定品として新たに調達することができたのである。
 
 
認定品に関して重要なことは常にユーザの立場から必要に応じて問題を解決する必要があると言うことである。ひとつのスペックが改版されたり廃止されその結果認定品や認定業務自体が大きく変化する裏側にはスペック制定者側如いてはそのスペックや規格に絡んだ多くの関連団体や企業等の事情というものが反映されておりユーザはこういった複雑な事情を理解したうえで取引先に対する安心した回答を用意することが求められているからである。
DODの協力のもと弊社ではMILスペック・コンサルティング業務として調査依頼を受け付けている。DODやSAE、ASTMなどのスペックや規格などの調査依頼数はすでに500件を越えており中には技術的な質問点や不明点あるいは認定品や枯渇した装備品の調査なども含まれる。なお弊社ではユーザの了解の元これらの事案の中から一般に周知すべき調査内容については率先して公開している。
弊社では2万件以上も存在するMILスペックに関わる技術的な案件や変更・廃止あるいは代替問題を解決するために米国防総省(DOD)や米陸海空軍にある多数のMILスペック策定部門を通じてわが国のユーザ向けにコンサルティング業務を行っている。
データクラフトはこういった問題に真剣に取り組んできたがその結果、スペックの技術調査に踏み込んで現場の設計ユーザから感嘆と賞賛の声をいただいている。またDODやSAEなどの民間規格団体からはスペック問題解決に感謝状をもらうことが少なくない。
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