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【SAEテクニカル・ペーパー】

2014.10.13

ー10万件に及ぶ世界の航空機や自動車などの論文・文献サービスー

世界中の航空宇宙や自動車業界において研究者や学生に絶大なる人気と信頼性を誇るSAEテクニカル・ペーパー。その理由は昔からの誤った考え方を質し、実験を通して常に科学的に解き明かしていることにある。たとえば人間と自動車の関係についても車両損傷と搭乗者負傷の間には相関関係はあるのだろうかと疑問を呈し、負傷の因果関係と許容限界についての提言や後方衝突と腰椎の負荷についても深く言及してデータと照合しながら結論を導いているのである。こういった世界中の専門家によるさまざまな努力や知見により航空機や自動車そして自転車と言った現代のあらゆる”乗り物”は日々改善され進化しているのである。 ( DCメール 2014年10月15日 No.375)
【追記】SEAデジタルライブラリーのホームページが完成しました。https://www.data-craft.co.jp/sae/

■10万件に及ぶ世界の航空機や自動車などの論文・文献サービス
SAEのテクニカル・ペーパーは1900年初頭以降に発表された10万件にも及ぶ世界の自動車や航空機などの学会発表論文や文献を技術者や研究者、学生などが利用しやすいように提供するインターネットサービスである。ここではそのなかから興味ある内容をいくつか紹介する。
いままで車両の後方からの衝突に関する調査はほとんどが頸部に重点を置いていたが、最近では腰椎に関する懸念が増大しているという。急激な脊髄の圧迫によって併発する脊髄の屈曲は急性ヘルニアを発症させるメカニズムと考えられるようになりまれなケースではあるが椎間板ヘルニアに関連する腰痛が報告されている。自動車の後方衝突時、車両の加速度が前方にかかり背もたれが後方に振れる。床面に固定されたシートベルトを装備した車両のシートでは背もたれとシートベルトによって骨盤が拘束され後方への動作時に胴体が上後方に傾斜して腰椎に張力がかかるというのだ。ただしすべてのベルトとシートの配置によって圧迫されたすべての屈曲負荷が腰椎にかかる可能性がある。どちらかのシートベルトの配置によって脊椎が一時的に何らかの屈曲と圧迫を受けそれにより急性椎間板ヘルニアの提案されたメカニズムに一致する可能性がある。
このペーパーではHybrid IIIおよびBioRID II擬人化テスト装置(ATD)を使用し速度(ΔV)を2.2、3.6、5.4、6.7m/s(5、8、12、15mph)に切り替えて後方衝突時の脊椎の屈曲と負荷を探求している。両方のタイプの50パーセンタイル成人男性ダミーに3点ベルトを装着して隣り合わせに気密テスト・スレッドに座らせた。各速度で床面に固定されたシートベルトを使用して1回のテストが行われ(フォードトーラス2002年および2003年)、2.2m/sおよび5.4m/sΔVのそれぞれですべてのベルトとシートの構成を使用してテストが行われた。ATDの動作パターンを全体的に評価するために高速ビデオを使用した。ATDテストで、低速度から中速度での後方衝突時に腰椎が急性椎間板ヘルニアや隆起の発症に相当する負荷を体験したかどうかを判定するために結果全体が文献と比較された。(文献タイトル:低速度から中速度での後方衝突における腰椎の負荷 No. 2010-01-0141  2010年4⽉12⽇発行)
また低速での追突の衝撃を受けた搭乗者の運動学的反応が調査された。人間の志願者と人間の形をしたダミーによって公称16kph(10mph)での車対車衝突が実施された。志願者はテスト時点で頸部および腰椎にさまざまな程度の変性がある27才と58才の男女である。志願者の反応は加速度計と高速フィルムを使ってモニタされ解析された。衝突によって志願者の誰も負傷することなく頸部または腰椎の状態に客観的変化は見られなかった。この結果は脊髄にさまざまな程度の変性がある男女の低速での追突による負傷の最小許容限界を示している。頭部、下あご、上部胴体および膝関節の運動学的反応は負傷の因果関係と許容限界に関する既存の理論を踏まえて説明されている。(文献タイトル:低速での追突の衝撃を受けた搭乗者の運動学的反応 No.940532 1994年3月1日発行)
衝突による車両損傷の大きさと乗員負傷の程度に直接的な相関関係があるという誤解がよくある。このペーパーではこのような論法について調べそれがなぜ誤った考え方であるかを説明している。データの裏付けのある説明によって小さな車両損傷が乗員負傷の大きな要因に関連したり要因となる可能性があることが示されている。これらの結果は数学的方程式とモデルによっても裏付けられている。(文献タイトル:車両損傷と乗員負傷の関係性の欠如 No.970494 1997年2月24日発行)
制御された環境において自転車のピッチオーバーのダイナミクスを解析するために自転車の衝突テストを実施しさまざまなテスト条件によってライダーの挙動に及ぼされる影響や頭頸部に重傷を負う可能性について調査した。このペーパーで評価されるテストは、速度が19.3~22.5kph(12.0~14.0mph)の間で制御され、一定の体格のライダーと自転車に重点を置いている。テスト条件の変数を使用して自転車のピッチオーバーの始動と構造の方式を示した。ピッチオーバーは、フロント・ブレーキの踏み込み、堅い障壁との衝突、前輪のスポークへの目釘の挿入によって始動する。自転車の構造はフレーム、フロント・フォーク、フロント・ホイール、ステムを変更することによって変った。実行されたすべてのテストに対してその様子が高速ビデオに記録された。テストの進行につれて垂直負荷を計測するために歩行板が追加され、水平衝突負荷を計測するために衝突板が追加された。この一連のテストから得られたデータから自転車のピッチオーバーのダイナミクス、傷害メカニズム、自転車の部品の不具合に関する洞察が得られる。(文献タイトル:制御された環境での自転車のピッチオーバーの解析 No.2010-01-0064 2010年4月12日発行)
【追記】SEAデジタルライブラリーのホームページが完成しました。https://www.data-craft.co.jp/sae/
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