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【防衛装備品の海外移転と知財保護】

2016.2.15

― 世界標準(NCS)への取り組みが喫緊の課題 ―

わが国は防衛装備品の海外移転を積極的に進めているが、それら装備品に纏わる技術情報等流出防止策や知財保護戦略の検討も合わせて行うことがさらに必要であることが弊社の調査研究で明らかになった。そのためには今ある世界標準、例えば弊社が深く標榜するNCS(NATOカタログ制度)への取り組みを強化することが喫緊の課題である。今回は改めてわが国防衛装備品の海外移転と知財保護の立場で解説する。なお本論は昨年9月に行われた弊社講演会「NCS(NATOカタログ制度)」において発表されたものを要約した。

■防衛装備品の海外移転と知財保護
今や装備品制度の世界標準となったNCS(NATOカタログ制度)とは何であろうか。現在、米英仏などNATO28加盟国とそのTier2(T2)と呼ばれる豪韓を含めた非NATO国11か国はNCS (NATOカタログ制度)と呼ばれる防衛装備品データベースを共有している。否、正確には共有しなければならない規定となっている。また、わが国を含めた同Tier1(T1)援助国23カ国はNCSの利用はできるが、共有はできない。いわゆる片務的な関わり方となっている。
現代におけるNCSは自国の装備システムの即応性維持のために可能な限りリアルタイムで保証れた装備品情報の運用が求められている。ひとつでも不良情報があればそれが命取りになりかねからだ。またコアリション体制の下、その配備範囲はグローバル・サプライチェーンへと急速に拡大している。
こういった世界のロジスティクス環境の変化に伴い、かねてから米国を中心として開発が重ねられてきたNCSは加盟国はもとより援助国をも含めたグローバルな装備品情報データベース化が進められてきた。その結果現在では世界62カ国におよぶ1830万件もの膨大で詳細な装備品情報の共通化に成功し、また2700万もの世界各国の政府や民間企業に対してWEBベースの世界の装備品閲覧サービス(NMCRL)を展開している。
わが国は2011年にT1加盟を果たしたが、主に外国からの輸入品(供与品)管理のために利用しており、国産装備品についてはわが国独自の管理体制を敷いている。しかし装備移転という新たな政策課題を展開するためにはいくつかの解決しなければならない問題が明らかになったのである。
次に事例を挙げて説明しよう。
例えば、わが国政府と企業が装備品の国際共同開発を検討する場合、相手国がNATO加盟国またはT2(ティアツー)援助国である場合はすべての装備品は例外なくNSN登録されなければならない。そのためにわが国の民間企業は必要な技術情報(図面、試験データ、仕様書など)をSTANAG(NATO規格)に基づいて提供することが余儀なくされるのである。
これについては深い説明が必要となるが、簡単に言えば現在のわが国は自らNSN登録することができないから移転相手国が代行してすべての登録、維持、管理をする。そのために装備品ごとに決められたいわゆる技術情報の提供が求められる。もちろんそこには双方の合意が前提であるが、知財確保の観点からきちんとした対応が求められなければならない。
次に、問題はNSN登録がわが国主導によるものではないことから、移転相手国に提供した技術情報や資料が転用される可能性があり、ここに情報流失の恐れがあることであろう。
そして、さらなる重要な問題は知財保護をしなければならないわが国メーカがこのことを記したいわゆるSTANAG(CCC条項など)について十分に理解していない点にある。即ち、全く知らないままに公表され、その内容は技術情報の過剰な公開あるいは誤認情報の可能性もあるということがわかってきたのである。
かかる状況において弊社では先の講演会でこれら技術情報等の流出防止策を次のとおり認めた。
(1) わが国は早期にNCSのT2国となり、NATO加盟国と同じ情報発信の権限を持たねければならないこと。
(2) わが国は早期に組織を強化し、わが国装備品のNSN運用を促進させる必要があること。
(3) わが国は移転相手国との2国間協議においてこれら情報流出の防止協定を締結すること、などである。
以上の通りすでに豪州や韓国ではT2国としてNATO加盟国と同等国として自国品の登録、他国情報の入手そしてNATO理事会での発言権などがあるが、わが国のようなT1国は登録された他国の装備品情報を入手することはできるものの、自国装備品の登録はできない。アジア近隣諸国では豪州は1998年、韓国は2005年にT1国からT2国に昇格を果たしている。
なおNCS加盟国ではNSN(NATO補給番号)と呼ばれる13桁からなる世界共通の装備品番号を付しており、非軍需品を含むすべての装備品に付与され現在1,830万件がNCSに登録されている。米国を含むNATOおよびT2国ではNSNが付与されていない装備品は受理できない。そのためT1国の移転装備品は相手国が代わりに登録しており、NSNには膨大な装備品データが登録されている。これらのデータは各国政府の取得業務はもとより移転相手国名、メ―カ情報、代替え品情報、在庫管理などSCMの根源をなしている。
弊社は、従前よりNCSコーディネータとしてNATO事務局とコンタクトを重ねており、 世界標準としてのNCSへの取り組みの強化やそれに伴うわが国防衛装備品の海外移転にまつわる技術情報の流出防止策やその知財戦略についても調査研究を行っており、また防衛省をはじめとする政府機関やその他関係機関に対しても調査研究の発表や情報提供などを行っている。
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