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【HA/DRとNATOカタログ・システム(NCS)】

2016.5.1

-災害救助物資のデータベース化-

先月起きた熊本地震は未だに余震が続く状態である。世界的な悲劇である津波や破壊的な大雨、そして地震や火山の噴火などわが国は多くの悲劇を体験してきた。それは人災であれ自然災害であれ、これらの緊急事態を経験することにより安全性やセキュリティおよび平和に対する必然性といったものをより深く考えることとなった。米国ではいち早く11年前に災害救助と緊急物資品目データベース( DB )システムを構築した。 地震や津波、台風や大雨災害など、今の日本にこそこのようなシステム構築の必然性があるのではないか。今回のブログは以前に(2011年)掲載した記事を改め、書き加えたものである。(DCメール 2016年5月1日 No.412)

災害救助物資のデータベース化
2011年、猛暑が続くなか、突然の集中豪雨は新潟県の信濃川を中心に多くの地域に水による大災害をもたらした。その一週間前には台風による大雨が全国に被害をもたらしたばかりである。そして世界を震撼させた東日本大地震の勃発とこの度の熊本地震など、わが国は地震や台風に曝され続け、それでも被災者はじっと我慢をしている。そのことは世界の国々にとっては驚嘆すべきニューとして取り上げられたようだが、災害救助の実態となると別の驚きがあったようだ。
国の救助や支援策は迅速かつ効果的でなければならない。先の東日本大震災のときに多くの国から被災者救援チームが派遣されたのはまだ記憶に新しい。主に彼らはその国の軍隊であり、瓦礫( がれき )に埋まった被災者を救出するために生体感知器を筆頭に多くの装備品やシステムを携行したが、わが国の、それもある地方の市町村の被災地では長い警棒のようなもので探っているのを見て驚いたという。中央と地方における格差があまりにも激しい現実がある。
筆者は米国政府がいち早く制定した災害救助と緊急物資品目データベースの構築は、わが国こそが官民が一体化して構築することが被災者を迅速に救援する最良のツールとなるのではないかと改めて考えるのである。ここで少し米国の話をする。
米国政府によれば近年の歴史はアメリカに災害の準備を、それも強力な対応策をもつことを教えてくれたという。災害救済と緊急時の備えという特別のカテゴリーを導入させた理由はここにある。これは緊急時における包括的で、完全な資源を必要とする全政府諸機関向けの物資DBである。この新しいカテゴリーは緊急時に対処するためのあらゆる資源を抱合している。
あの911の大悲劇のあと、2004年にアメリカが震撼した津波や破壊的なハリケーンの影響まで、アメリカ国民は多くの悲劇、それは人災であれ自然災害であれを目撃してきた。これらすべての緊急事態は、アメリカ人のもつ安全性、セキュリティおよび平和に対する必要性といったものを改めて強化することになったのである。
 
GSAアドバンテージ( http://www.GSAadvantage.gov/ )と呼ばれるこの災害救助と緊急物資品目DBはアメリカがリーダーシップをとる必要のあるときに効力を発揮する世界的な資源に対する物資DBである。その要求が準備や介入、反活動に対する解決策であれ、また緊急事態後の後方支援策であれ、賢く対応することで、国民の代わりとなって処置を講ずるのである。これにより平時はもとより生死を伴う緊急事態の際においても、全米の各政府機関のニーズを満たすことを今まで以上に束することになったのである。
 
確かにこのデータベースを検索してみると災害時や緊急時に必要とされるあらゆるものが識別類別されており、メーカー名や品名、そしてユーザ取得価格さえも表記されており常時データが更新されている。これにより被災の大小にかかわらず中央の行政機関や末端の地方自治体に至るまでがこの統一データベースの検索により必需品を選択し取得できるように準備されている。また物流については陸海空軍の輸送手段により、一刻も早い被災地への救援活動につながっている。
こういった装備品と一般物資が連邦政府の掌握の元、一元化されたデータベースで常時管理され、それが全米のすべての中央・地方政府機関で取得できるように整備されていることこそ、備えあれば憂いなし。過去の教訓を生かした行政となっている。
 
上で述べたように近年の歴史はアメリカに災害の準備を、それも強力な対応策をもつことを教えてくれたという。大震災があり、不順な天候がつづく今の日本がまさにそのときではないか。こういったDBを構築し、最新技術を屈指した救援装備品や便利で堅牢な生活必需品など多数の災害救助品をすべて識別類別して、メーカ情報や価格情報、納期情報、物品仕様といったものを常時更新しておく。これにより日頃から、あるいは緊急時において必要に応じてWEB検索から緊急物資や救援物資を迅速調達することができるのだ。メーカや物流業者情報との密接な関係は常時備蓄品や在庫の調整を可能にして、節税対策にも繋がる災害救助ロジスティクス・ツールにもなるのである。
 
ここで米国政府が管掌するGSAアドバンテージとMILスペックのつながりについて紹介しよう。MILスペック・データベースに収録されているCID( 民間品目記述表 )はすべて共通役務庁( GSA )で作成・維持管理されている。このCIDとは連邦スペックや民間規格に準拠した製品や装備品の特性を簡単に記載したもので、MILスペックのように特別な要求に基づいた設計や試験、品質検査、梱包、マーキングなどを不要にした、いわゆるカタログ品取得にかかわっているのである。
たとえば政府機関で使用する事務用品や衣料、食料品、車など特殊性の無いものはすべてGSAが管理している。特注品であるMILスペック品から一般のカタログ品まで米国政府の取得する物品は多種多様でありこれらの仕様書や規格はすべてDODの管理するMILスペックDBに収録されている。こういった装備品と一般品が一体化された物品DBはまさに国内外の危機管理や災害支援の事態にぴったりである。
ところで日本の外務省によれば、海外における危機管理や災害救援に関し日本とNATO(北大西洋条約機構)との間でHA/DR(人道支援・災害救援)に関する共同研究と称して発足している。日本とNATOの双方が人道支援・災害救援分野における経験と教訓を共有するとともに,同分野での将来の協力の可能性を検討するとしているのである。そこで将来的にはこういったHA/DR活動を通して、日本が世界の平和維持に貢献し、積極的に参加することが求められているが、先の米国におけるGSAアドバンテージのように海外事案にとどまらずに国内外を問わずして、被災したひとびとを救済するための共通した災害救助&緊急物資DBの構築をNATOカタログ制度(NCS)を利用することで発展させてほしいものだと改めて念願するものである。
 
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