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【INACTIVEスペックに対する考察】

2017.4.1

―MILスペック基礎講座―

使用するMILスペックが何らかの理由で停止する場合、INACTIVE NOTICEが発行され公知される。この場合INACTIVEとは使用が無効とされる意味で、またNOTICEとはスペックが批准、廃止、復帰また再度有効やこのように使用を無効とするために発行される通知のことを言う。今回は調査依頼を通してINACTIVEスペックに対する考察をしてみた。(DCメール 2017年4月1日 No.434)

■INACTIVEスペックに対する考察
MIL-T-6053C is inactive for new design and is no longer used, except for replacement purposes.
ある航空機部品の試験に関するMILスペックにINACTIVE NOTICEが発行された時のことである。そこには上記英文が記載されていた。そこで当該スペックの担当である米国防総省(DOD)に意見を求めたところ下記のような回答があった。
Inactive For New Design、即ち新しい設計に対して使用無効、という意味は、現行の航空機装備品に対しては使用できるということである。また、現在開発中あるいは非公認の航空機装備品には使用できないということである。
 
例えば当スペックでは、ランディング・ギアが、既に製造され在庫されている場合、その代替品であろうとアップグレード品であろうと、このスペックは使用可能であるということを意味している。そこで、もし航空機のランディング・ギアを全面的に再設計するときは、新たに使用可能な民間技術を探すか、新しいMILスペックを制定しなければならない。即ちこのスペックは使用できない。また代替となる民間スペックがあるかどうかは不明であり、改めて技術調査をしなければならないとのことである。
 
このようにINACTIVE通知はある装備品やそのプロセスが新しい設計への使用には禁止されるが、既存の装備品や部品には用いるられることを意味しているものである。
そこで改めてINACTIVE FOR NEW DESIGNという言葉の概念に就いてすこし考察したい。上記で明らかなように、INACTIVE FOR NEW DESIGN という意味は、新しく開発される装備品の取得や調達には使えないという意味であるが、言い返せば、現存する装備品の再取得や再調達には使えるということである。
 
この事例の場合、MIL-T-6053は航空機用ランディング・ギアの着陸時における衝撃試験について述べたもので、INACTIVE NOTICEが発行されたために、その試験の適用範囲に就いてDODの見解を必要としたが、この場合、取得や調達において使用できないとしている点の調査が必要とされたためであった。
調査の結果、以下のことが明らかになった。
・このスペックは現存する航空機装備品には使用できること
・このスペックは開発中か未公認の航空機装備品には使用できないこと
・製造されたランディング・ギアは、代替品であれアップグレード品であれ使うことが出来ること
・現在当ランディング・ギアを再設計し直す場合は、使用可能な新たな民間技術を調査するか、新しくMILスペックを制定する必要があること
・このMILスペックの代替となる民間規格が存在するかどうかは不明であり、技術調査をしなければならないことなどであり、このMILスペックの置かれた立場が明確に理解でき、スペックユーザにとっては常時、適用MILスペックの状況変化に対応しなければならないとした。
このようにINACTIVE NOTICEに記載された一字一句についても、見逃すわけにはいかない場合があり、こういった調査をする必要があるのである。
 
MILスペックはDODによる取得・調達仕様書である。全ての装備品取得や調達はこのMILスペックのような調達文書によって実施される。DODはより安く、より早く、そしてより良い装備品の取得や調達を目指して、出来る限り民間技術の導入を推進している。MILスペック・ユーザにとっては、こういったMILスペックの改廃の動きや、またNOTICEなどに記載される方向付けについては今後とも注意を払わなければならない。また内容についての疑義に就いては、例えどんなことでも明確にしておく必要があるのである。
  
なお、MILスペックについての決め事を掲載したMIL-STD-961は、その5.10.3および 5.2.4.1でINACTIVE NOTICEについて次のように説明しているので紹介する。
INACTIVE(新しい設計には使用が無効)の通知はある装備品やそのプロセスが新しい設計の使用に禁止され、既存品の組み立てや装置にのみに用いるられることを指示するものである。この場合の装備品やプロセスは、既存の設計や、また将来の契約で既存の装置やシステム用の組み立てには使用可能となる。新しい設計用の文書が代替された場合、その適用が可能になると通知され、従来とは異なるスペック番号を持つ。その場合、適用される場合は次のような通知が周知される。
 
ー 通知: この廃止情報は通知の日付をもって有効となし、代替文書は順次改訂版によって代替されるものとする」
 
認定品目表(QPL)が「新しい設計には無効」なスペックに付随している場合は、次のような通知文書が適用される:
 
この新しい設計用には使用が無効」なスペックに付随した認定製品表(QPL)はそのスペックや品目表が廃止となり、その装備品の取得がもはや不要になるまでは維持管理されるものとする。
  
スペックが「新しい設計の使用に無効」とされる場合, その改訂版には注意事項として最初のページのタイトルの下、序文の上に線で囲まれて強調される。新しい設計用の代替文書は、その適用が可能になると線で囲まれた枠中に記載される。
 
― 新しい設計用に関しては当該日付以後は無効となり、新しい設計には(新しく)MIL-PRF-XXXXを利用することー
(注)本文中に掲載されたMILスペックは最新版とは限らない。最新版の適用はDOD発行の公式文書を参照ください。
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