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【MILスペック品の認定】

2017.5.1

ー国際化する米国標準化戦略ー

米国防総省(DOD)が制定・管理するMILスペックが改版され、廃止された場合、そのMILスペックは再調達(Reprocurement)以外には使用できない規則となっている。そこで、そのMILスペック認定業者は、改訂版の認定検査をうけ、合格しなければQPL(認定品目表)から削除されることになる。ゆえにユーザは常にMILスペックの改廃や認定業者の動向に気をつけていなければならない。今回はこのようなMILスペック認定に関わるさまざまな話を紹介する。(DCメール 2017年5月1日 No.436)

■MILスペック品の認定
DODの見解としてMILスペックの適用、認定などについてはその国の問題として多くを論じていないのが実態であるが、米国のISA(International Stand-ardization Agreement)など国際間の標準化協定が推進されるにつれ、その先進性を多くの国々に対して啓蒙する姿勢に変わってきている。とくに近年、NATO諸国やABC諸国に対する國際標準化要請を強く求めるようになってきている。わが国でもわが国政府が自ら改革を推進するように努力をしており、21世紀のMILスペックに関わる国際調達問題はDODの唱える「より良く、より早く、そしてより安く」をモットーに与えられた課題は大きい。
 
DODは国際調達に関しては従来からの調達品目データベース(FLIS)を公開しており、調達の簡素化、合理化および迅速化を推進している。このFLISにはDODを含む米国連邦政府が調達する国内外からの物品の登録業者、仕様、技術情報や算定価格などが公開される。これにより調達側はどのような物品がいくらぐらいするか、どのようなメーカーがあるか、過去の実績はどうかなどの試算が可能となり、また業者側では登録すること入札参加機会を得ることができるようになっており、わが国の企業なども数多く登録されまた調達実績も数少なくない。(現在FLISは特定用途向けになっており、一般ユーザはPubLogの利用を奨励される。)
 
また米国政府の調達制度にはGSA(一般品監督機関)があり、民間企業を登録させ、その製品の調達や購入があるたびに入札(または随意契約)があり、世界中の企業はいながらにして必要とされる入札機会に参加することが出来るようになっている。価格は一般の市場価格より10-20%近く安く、政府は常に民間市場より安く購入することができるように制度化されている。過去には日本のコンピュータメーカーがGSAの大規模な調達で落札させたことが一時ビックニュースとして取り上げられたことがあり、また韓国のあるクリップ・メーカーがこの制度を利用して落札させ巨万の富を稼いだ話も伝説となっている。
ところでDODは海外における認定活動も活発である。MILスペック制定部門では、各軍や製造メーカが求める「性能要求」を策定し、各部門との調整作業を行っている。MILスペックが制定され発行されると認定部門は認定品を供給するメーカの選定を行い部品の認定を行うことになる。この認定作業にはアセスメント、すなわち製造メーカの認定システムや生産能力、試験方法などといったMILスペックに準拠した性能を発揮する製品を保証するための評価を行う。この評価には細部にいたるドキュメントや製造プロセスの調査や現地での監査などが含まれ、この「認定」プロセスが終了すると製造メーカの品質システムや生産設備、テストラボといったものが生産能力ありとして「認定」( Qualified )される。メーカは認定された部品製造プロセスを用いて、テストラボでMILスペックに要求された認定試験を行う。そしてその試験結果はQAに報告され、合格審査を取り付けることになる。QAはその部品がスペック要求に適っていることが確認されると、その製品およびメーカはQPLやQMLに登録されることになるのである。
近年部品生産は大きくグローバル化しており、そのために米国の標準化政策は改正され、MILスペック標準部品生産を海外諸点でおこなうことを認めるところとなった。その結果認定業務はこれらの新しい条項を達成するために変更された。これはNATOや諸外国とのISA(国際標準化条約)に沿って達成され、諸外国との互恵な認定プロセスのルールの取り決めとなっている。海外製造メーカにとって、その監査や認定プロセスは(従来のもの)とは多少違ったものであった。もしISA条約が米国とその他の国に存在するなら認定を遂行しようとするお互いの国はNQA( National Qualifying Activity )を適用することになるのだという。米国の場合、米軍のPA/QAがNQAとして適用され、2カ国間のNQAは共同作業によって監査や認定プロセスの方法を策定し、NQAがどのプロセスに適応するべきかを決定する。このプロセスは2つのNQAが共同して行う製造メーカの監査や、共同試験報告審査、そして双方のNQAがひとつになって要求を理解し、実行されるための訓練状況などが含まれている。このことは外国のNQAが要求や十分な資源ついて学び、業務を遂行する気持ち
の表れである。互換性が確認されると米国NQAはプロセスの海外部分から撤退し始めるとともに海外NQAへの責任を強化し始める。最近のこういった海外行動はDODとのISA条約を締結していない諸外国の工業界に拡大することである。このような場合、米国NQAはすべてのプロセスを運営することになる。すべての監査業務、試験報告、認定などすべては米国NQAの責任となり、米国内のメーカに対してと同様なプロセスとなる。海外出張などの付加コストは認定を希望するメーカが負担することになる。この地球規模の供給体制への移行は同時に膨大な民間分野、特に電子市場において急成長が望まれている。
 
ところで近年の民活により、航空機用燃料タンクの腐食防止コーティングのMIL-C-27725Bが廃止され、SAE AMS-C-27725Aに移行した。これによりQPL-27725も廃止され、PRI-QPL-AMS-C-27725に移行した。このPRIーQPL-AMS-XXXXとは何か、従来のQPLとはどう違うのだろうか。QPL-AMS-XXXXというAMS認定品目表はDODがMILスペックをAMSスペックに移行する際に、軍が維持管理したものである。またMILーQPLというのは、MILスペックを利用する際の認定品目表である。現在米国政府は可能な限り、民間機関による認定品目表の使用に移行つつあることが、PRI-QPLを「創始」する所以である。SAEはASやAMSスペックのQPL認定業務を行っているが、これらのメーカはMIL-QPL認定業者であることの証明として情報を提供してくれ、QPG(品質製品グループ)はまた、現在の試験データも要求している。QPGが承認すると、その製造業者をPRI-QPLに掲載することになる。この場合、このようにPRIは、多くのMILスペック認定品問題を解決するために創設され、SAE自体が任意による業界機関として認定品制度を維持できないために米国政府の外部組織として創設したものとされている。
 
ところで、これらスペック廃止や移行にからむ認定品や代替品の調査は今後ますます増加するだろう。官による認定品が減少し、今後契約当事者が決定することが多くなることが予測されるからである。例えば、封止剤(シーラント)ユーザから次のような問題が提起された。いままでシーラントの国内使用向けとしてMIL-S-8784が認定され使用されてきたが、MIL-S-8784が無効になりそのQPLも廃止された。そこでこれら認定品が生産中止となり購入ができなくなったわけだが、別途認定品として探し出すことが可能であろうか、という質問が投げかけられた。その結果SAE-AMS3284はMIL-QPL認定業者からの認定情報を基にして新しいAMSスペックなどの認定品や認定業者を組織してユーザの便を図っていることがわかった。 これらの認定品目リストはPRI-QPLと呼称されている。
 
また、以前、アルミ陽極被覆に関するスペックとしてMIL-A-8625とAMS-A-8625が共に存在していることがわかり、認定品も含めてどう対応したらいいかについて調査依頼があった。この場合AMS番号はMILスペックと同一番号である。SAE委員会はMILスペックからの変換をしてこのAMSを発行したようであるが、DODとSAEはこの件について調整を取っていなかった。その結果、混乱をまねてしまったようだ。これについてはその後、両機関で調整が図られ、AMS-A-8625は廃止された。しかし、ここで重要なことは利用者の立場から内容の確認をし、必要に応じて問題を提起する必要があると言うことである。ひとつのスペックが改版されたり、廃止され、その結果認定品や認定業務自体が大きく変化する裏側にはスペック制定者側、如いてはそのスペックや規格に絡んだ多くの関連団体や企業等の事情というものが反映されており、ユーザも権利を主張することが認められているということである。本件のように、未調整であった案件がその後DODとSAEの間で調整され現在は明確になったのだが、弊社からの問題提起が直接的に起因したかどうかは不明であるが、動機づけとなったことは事実である。
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