DataCraft

Topics

【試験規格MIL-STD-810】

2017.10.2

環境への応力に対するチャレンジ

MIL-STD-810は防衛装備品のための温度・湿度、高度、振動、衝撃など過酷な環境条件に即した試験室による試験規格であるが、昔から民間製品の高信頼性化のためにも大いに役立ってきた。車載用機器やノートパソコン、最近ではスマホなど、ヘビーデューティ(超堅牢)製品として耐衝撃性や耐振動性強化をうたい、多種多様な民間製品がこぞってMIL準拠品としてMIL-STD-810の研究に余念が無い。しかし、防衛装備品の試験規格であるMIL-STD-810は、その長い歴史の中で環境への応力に対する研究の変遷に他ならない。今回は試験規格MIL-STD-810をテーマに少し考察してみた。(DCメール 2017年10月1日 No.446)

現在MILスペックは約3万件存在する。MILスペックといっても内容は様々でそれこそ人工衛星や航空機などの部品から需品である被服や食料品、建築資材などの一般品に至るまでありとあらゆるものが存在する。そこで当然ながらMIL品にするためにどうしらいいか、自社製品に該当するMILスペックは何か、どうしたらMILスペックに準拠した製品を販売できるかなど調査の目的は様々でまたその研究方法も大きく異なる。
そもそもMILスペック製品を表現すると、認定品、準拠品、装備品などと色々な言葉で使用されている。例えば、一般的な需品(生活用品や材料)などは、まったくの民間品であるが、これらは主にCID(民間品記述票)形式のMILスペック品として装備品便覧に掲載されており、たとえば試験方法などは民間規格が採用されている。
これは米国政府がコスト軽減策の一環として、MIL品特有の基準や試験を採用せず民間における需品の規格やスペックを採用している。それでも装備品の一つとして運用されるために市場で見かける製品とは異なる。建材や被服、食料品や文房具など呼び出される仕様や試験基準はJIS規格ではなく米国における各民間工業規格や国際規格が主体となる。
ところで、MILスペックの試験方法を選択するすることで、MILスペック品と呼ばれる準拠品について紹介する。例えばMIL-STD-810GのXXX試験に準拠したことを製品仕様書や説明書に記載してその製品の信頼性や堅牢をアピールしているような場合である。
もともと準拠品とは防衛装備品あるいは民間製品の環境応力の影響を検討するために用意されたもので具体的には調達契約や工学的な試験方法について成果に基づいた環境調製のプロセスについて言及しているのである。
様々な環境要因は装備品の耐用年数にわたって特定の有害な影響を考慮しなければならず、防衛や民間用に開発された全ての装備品や製品に適用される調達や資材の変更およびユーザとの相互運用性のニーズを満たすため共同開発の機会を与える。
そこで、このMIL-STD-810というMIL規格は防衛装備品のための温度・湿度、高度、振動、衝撃など過酷な環境条件に即した試験室による試験規格であり、昔から民間製品の高信頼性化のためにも大いに役立ってきた。
MIL-STD-810は車載用機器やノートパソコン、スマホやその付属品などを、ヘビーデューティ(超堅牢)製品として耐衝撃性や耐振動性強化の代名詞として謳われている。今日民間製品は益々軽・短・薄への画期的な技術革新も手伝ってさらなる屋外利用( フィールド・ユース )に多様化している。そこで堅牢さを売り物にする多種多様な民間製品がこぞってMIL準拠品としてMIL-STD-810の研究に余念が無い。
例えば、MIL-STD-810準拠品の宣伝文句を紹介すると次のようなものがある。(注)なおここでは単に例として紹介するものであり、その内容や表現について論ずるものではない。
■厳密かつ過酷な仕様として有名なMIL規格に準拠した耐久性・ 防滴性・防塵性を備えており、通常の用途ではまず壊れることがないといっても過言ではない堅牢仕様となっている。
■耐久性に優れ、米国の軍用規格( MIL-STD-810 )のテストでその強度が実証されたボディ、粉体塗装の底部、防水設計キーボ ードなど、全体をスタイリッシュに強化。
■MIL-STD-810G準拠した厳密かつ過酷な仕様として有名なMIL規格に準拠した耐久性・防滴性・防塵性を備えており、通常の用途ではまず壊れることがないといっても過言ではない堅牢仕様となっている。
■クラッシュ・テスト Peak Acceleration 75gで8から13msec80Hzの周期で+75Gと-75Gのショックを13msecかけ9.1Kg以下の製品なら76cmからの落下と7.72m/secのショック保存時は1.22mからの落下。
■当社技術実験室において下記の試験を実施、試験後も正常動作することを確認。( 注 )本試験は記載の条件下における商品の無破損、無故障を保証するものではない。
■【自由落下試験】( 非動作時:合板 ) MIL-STD-810G 各面・辺・角の計26方向に対し、120cm落下、90cm落下を実施。
■【耐振動試験】( 非動作時 ) MIL-STD-810G 前後・左右・上下に1時間かけて振動を与えつづける。持ち運び及び車での移動時の振動を想定20Hz~1000Hz:0.04G2/Hz 1000Hz~2000Hz:-6dB/オクターブ1時間/軸( 前後、左右、上下 )
■アメリカ国防総省が制定するアメリカ軍の物資調達規格MIL―STD-810Gに準拠した専用ケースを限定で発売する。
■アメリカ国防総省が制定したMIL-STD-810G Method 516.6-Shockに準拠した独自規格に
おいて、高さ1.22mから合板( ラワン材 )に製品を閉じた状態で26方向で落下させる試験を実施している。
■これらのテストは参考のために実施しているものである。絶対に壊れないことを保証しているわけではないのでご注意ください。また、ご自身でテストをされる場合は自己責任において実施してください。
■米国の軍用規格( MIL-STD―810G )テスト済なら、極度な温度差、振動、ほこり、および高度な場所での使用からマシンを保護している 。
■アメリカ国防総省が制定した、アメリカ軍が必要とする様々な物資に対する調達規格で、規格MIL-STD-810Gは気圧の低い場所での操作( 4000ft,7000ft )や、燃料が気化した状態での使用、塩水噴射など、様々な耐久テストに合格したものに与えられる規格である。
しかしながら、MIL-STD-810はその長い歴史の中で、MILスペックが歩んできた半強制的な試験方法のあり方から、最新版MIL-STD-810G(1)のように、成果主義としての試験手法を取り入れてきており、試験仕様そのものは取り入れていないことに気づくのである。これは、民間工業規格等に見られる試験手法を取り入れることで、無駄な時間と費用を省き、結果(成果)を求めることに他ならない。
その中で、世界中での様々な気候地域での装備品のライフサイクル全体で使用される開発や試験および評価などを取り上げるようになった。こういった装備品の様々な環境における応力に対する研究は、装備品のライフタイム全体を通じて、各段階で適切な調製を行うように計画され、まさに環境における工学的見地からは、一部の隙も無い考察を展開しているのが、最新版MIL-STD-810G(1)であるといえよう。DODの計画では新たな見直しがあると報告されている。